今回レビューする曲は、アルバム「心臓オーケストラ」のオープニングナンバーである「ワタボウシ」です。
この寒い季節にしみじみ染みてくる曲です。
【ワタボウシ】
冬の厳しい寒さの中に立っていると、つい内省的になってしまう事があります。
この曲はそんな瞬間を切り取った曲のような。
内省的な感情と冬の風景が折り重なって描かれています。
雪国で生まれたわけじゃないけれども、どこか懐かしいような。
その風景が、テレビや小説などを通して形成されてきた、日本人が原風景として心に抱いている風景に近いからでしょうか。
演奏は無駄を削ぎ落としたシンプルなサウンド。
残響するギター音からはじまり、ゆっくりと音数を増やしながら音の空間が広がっていきます。
一方で、リズム隊はガッチリとメロディーを固めています。
そのシンプルさは、この素晴らしいメロディーを聞かせるためにって感じで。
こんな素晴らしいメロディーが軸になっている曲なら、こねくり回すようなアレンジはいらないんですよね。
ただそのメロディーにバンドサウンドをのっけるだけで充分というか、それだけでも歌が伝わるというか。
等身大のTHE BACK HORNって感じで。
この曲はメロディーも文句なしに良いのですが、歌詞の言葉選びのセンスがより光る気がします。
「夜の太陽 孤独の指揮者」
「夜の雪は無音の中で歌うコーラス隊」
メロディーの中から歌詞がしんしんと降ってきて、その一つ一つが輝いているような感じ。
一つのフレーズごとにTHE BACK HORNのセンスが凝縮して込められている感じがします。
歌詞だけでも、存分に風景をイメージできて。それに極上のメロディーでのっかって。
THE BACK HORNの感性が光るすばらしい曲になっています。
この季節には本当によく合うなぁ。