単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

ロックンロールADV『MUSICUS!』をプレイしはじめた

musicus.over-drive.jp

12月20日に発売されたロックンロールADV『MUSICUS!』をプレイしている。この作品、我らが愛する瀬戸口廉也がシナリオを担当しているのだから、それはもう発売日(正確にはDL解禁日)を楽しみにしていた。

まだ序盤で、彼の本領が発揮されるBADな要素はないが期待どおりに夢中になっている。そういえば、彼はフリークス一歩手前のキャラクターによる他愛ない日常のすばらしい書き手でもあった。すでに愛くるしい変人がいっぱい出てきているから笑顔で読み進めている。

 

唐辺葉介の『電気サーカス』を読んで心を揺さぶられて彼が手がけたノベルゲームもプレイしようとエロゲに手を出したのが今年の7月の出来事。『キラ☆キラ』『SWAN SONG』『CARNIVAL』『暗い部屋』をはじめとして、他にもErogameScapeのレビューを参考に様々な作品をプレイしつづけてきた。

それもあってか僕にとってADVは攻略や感想が出揃っている過去作品、という認識があるのだけれど、そんな僕にも待望の『MUSICUS!』のおかげで新作をプレイする日がやってきたのだった。

そこで、一度はやってみたかったプレイ日記やクリア後の感想、その他諸々について、しばらく書きつづけていこうと思う。と思ったが、よく分からない。とりあえずプレイしつづけたい。

 

すでに書いたように新作そのものをプレイしたことが初めてで、ルート数もプレイ時間も分かっていない作品というのが、僕にとっては新鮮な経験だったりする。根が怠惰ときているので、物語を効率よく読みすすめるために、過去のADVをプレイするときに攻略サイトのお世話になっていて、例えば『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』は完全攻略サイト頼りで『装甲悪鬼村正』のナンプレは悩む前に解答をググっていた。あんまりよくない。

そういう人間なので、いま試行錯誤しながらプレイしていて、選択肢が出てくると熟考したりして、ああ、これが手探りの楽しさなのか、と今さらながら理解しつつある。理想のロックバンド像を主人公に仮託させては喜々としている。これまで効率を優先するうえで見逃していた楽しみを今回はしっかりと味わいたい。 

 

『MUSICUS!』はロックバンドの物語らしい。当の僕は観客が数人しかいないようなライブに何度か行ったことがあるし、自身も学生時代はバンドをやってステージで演奏する機会も少ないながらあったし、それにいまだにこういう(「俺の文章は「日本のすばらしいロックの詞」のサンプリングに過ぎない」)益体もない記事を書くくらいにはロックバンドに思い入れがある。

だからロックバンド好きとして、瀬戸口廉也のテキスト好きとして、その交点になる『MUSICUS!』には期待のハードルが勝手に上がってしまう。なにせ『キラ☆キラ』をもってしてすでに瀬戸口廉也のロックに対する造詣の深さは保証されているし。だからって、期待値を上げすぎると碌なことにならないと分かっているが、自分の感性のウィークポイントを狙い撃ちされているからしょうがない。

 

序盤の主人公がインディーズバンドのツアーに同行したシーンで、バズマザーズの曲の「連日のショーと車中泊で悲鳴を上げて軋む関節 /「果たして意味はあるか味」の飴をずっと舐めてる気分さ」を思いだした。これからどう転がってくれるのか楽しみで仕方ない。


ロックンロールイズレッド / バズマザーズ

 

そういえば、同じくロックバンドを取り上げた瀬戸口廉也の『キラ☆キラ』は、『ロック』といってもAIR JAM世代のパンク/メロコアのイメージが強かった。界隈で人気のインディーズバンドのメンバーがレーベルを立ちあげるのも横山健っぽい。タイトルの『キラ☆キラ』だって彼が所属していたバンドの「Stay Gold」とだいたい似たような意味だから。


Hi-STANDARD - Stay Gold [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

 

一言に「ロックンロール」といえども、その内実には様々なジャンルがあるのは言わずもがな。僕が好きなのは主にはポストロックやシューゲイザーで、そして曖昧な括りではオルタナティブロック。2008年に発売された『キラ☆キラ』はパンクロックをやっていたが、2019年の『MUSICUS!』はさてどのようなロックをやってくれるのか。

エロゲとロックの話をすれば、『素晴らしき日々』では作曲者がNUMBER GIRLが好きなようでポストロック/オルタナティブロックに属する名曲があり、また『みにくいモジカの子』ではシューゲイザーバンドの『cruyff in the bedroom』を起用していたらしい。ちなみに一番好きなED曲は「終末の微笑」で、一番好きなOP曲は「カーニバル」(イントロはまんまthe pillowsのLast Dinosaurだけど)。

 

そういえば、瀬戸口廉也を知るキッカケになったのは、にゃるらさんの記事でサイケデリック作品の文脈で紹介されていた『PSYCHE』だった。僕はもともと精神変容に異常に関心があり、青山正明ウィリアム・バロウズをはじめとしたドラッグに関する本を読み漁っていたからすぐに飛びついた。しかも表紙が冬目景ときていればなおさらのこと。それから立てつづけてKindleを購入して『電気サーカス』を読んでからというもの、ADV・小説・過去のテキストサイトなど彼の綴った文章にどっぷりと浸っていった。 

nyalra.hatenablog.com

 

唐辺葉介名義の作品に関して、同じくにゃるらさんの記事で詳しく紹介されている。ほとんどが絶版でプレミアになっているので持っていない作品もいくつかある。『CARNIVAL』の小説版を読むために東京の国立国会図書館に行きたいと思っているが、いまだ行けずじまい。死ぬまでには絶対に行こう。

note.com

余談だが、上記の記事では現在Amazonで販売される「暗い部屋」には特典の小冊子はついていないとあるが、僕が今年の夏に購入した際にはついていた。運がよかったのか。この小冊子は、狂気と薄暗いユーモアを限界まで圧縮してできた薄い本で読みごたえがある。

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数か月前に知ったが、『ドッペルゲンガーの恋人』は星海社のサイトで無料で全編読める。読んだ。良かった。

sai-zen-sen.jp

 

それでは、「僕の知らない場所ではもう新しいショーが始まっていて、それを楽しむのはまだそれを見たことがない新しい人々、僕らの知らない若々しい人々」のロックンロールサーカスこと、『MUSICUS!』をプレイするのに戻ります。しばらく帰ってきません。