昨日はナンバーガールのライブに行ってきました。
マジで実在しているんだ……集団妄想じゃなかった……様々なカルチャーで時代を超えて語り継がれる虚構の非実在バンドではなかったのだ……とかずっと思っていて、ナンバーガールがライブを演っていること、そしてそれを俺が目撃して事実を確認しては目頭を熱くしていた。
ナンバーガールが俺の感性に直撃したのか、またはナンバーガールが俺の感性を歪めたのか。両方向だったのか。それは分からんが今も昔も惚れこんだ硬質的な音がそこにはあった。
多くの人にとってそうであるように、俺にとってもナンバーガールってのは思春期のど真ん中に鎮座するロックの象徴的な存在で。そのせいではじめは聞こえてくる音よりも聞いている状況そのものが異常事態、その現実だけで感情がいっぱいいっぱいになりかけていたけど、中盤の「 YOUNG GIRL Seventeen SEXUALLY KNOWING 」の轟音に包まれたときにはそういう文脈がいろいろと吹っ飛んでいった。
まじですげえのなんのって。音がでかくてつんざめっていてかつ感傷的で「うるさい音楽」の極みに達していた。
古川日出男が「ボディ・アンド・ソウル」っていう小説で彼らの元ラストライブを「叩きだされるナンバーガールの4名の演奏はその会場内の反応に左右されずに一瞬たりとも硬度をうしなわない。弛まない」って表現していたが誇張ではなかった。「CIBICCOさん」でなんかトチっていた気もするがそれでも弛まない。
硬度がうしなわれることはなく、絶えず限界点の縁で鳴りつづけていた。キンキンと耳の奥までやってくるギターサウンドが音の快楽に直結しつづけていた。そこに哀愁や衝動までが乗っかってきて、さらに自前の感傷と重なり合ってよくわからんことになった。
彼らのアルバムでもっとも聞いたのが、「サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態」のライブ盤で、音源としてライブがいかにヤバイかは分かっていた……が、それはつもりでしかなかった。
って初めてライブというものを見たときのようなこと書いてしまっている。
「鉄風 鋭くなって」や「透明少女」などの代表曲のキャッチャさーと音の凶悪さが共存していて名曲が名曲たる所以を耳で理解した。やっぱいい曲で、ライブでもめちゃくちゃいい曲。
「福岡市博多区から参りました」の口上からはじまり、いっちゃん歓声があがっていた「Omoide In My Head」は掛け値なしでナンバーガールが体現化されていた。ライブ盤でもTheフロア熱狂!って感じの曲で、それを体験できたときの湧きあがってくる熱い思いはしばらく忘れられん。
「「Manga Sick」とは漫画病ってことよ」とか言われてまあそうだろうとは分かっていたけど、「Manga Sick」の渾然一体となったグルーブ感の強さははじめて分からされた。
個人的にベストアウトとおもっているのが、夕焼け小焼けからの「Young Girl 17 Sexually Knowing」じゃないかな。轟音パートに入ったときに目の前の風景が消えて音の壁に包囲されるような感覚のせいで、「うわー……やべえ……これはやべえ……」とただただ茫然自失していた。
ライブならではのアレンジってことでは「U-REI」がインプロ?セッション?が加えられた長篇曲になってカオスになっていた。向井さん、ドラムセット台に立って謎のパントマイムをしながら酒?をぐびぐび飲んでて自由きまま。しかしサビに入るときっちり爆発するもんだから、ポカーンとしたりウオーとなったりして聴衆の心は右往左往してしまう。楽しい。
「OMOIDE IN MY HEAD」の後の、本編最後の「I don't know」はバンドアンサンブルとシャウトがブルータルすぎてもっとも攻撃力を感じた。こんなハードコアな曲だったんだね……。この攻撃力ってのは鼓膜にたいしてでナンバーガールのライブにおいてはダメージが大きいほど感情が高まる仕様になっている。ドラムスアヒトイナザワのドラミング、こんなにフィル入れてドカドカ叩いているんだと目を奪われることも多々あった。つまり、最高だった。
いま、今回のライブのセットリストを組んで聞きながら書いているのだが、ライブを体験してしまうと物足りない。ライブ盤でもぜんぜん物足りないなんて贅沢になってしまった。「I don't know」とか、なんか別の曲のようにすら聞こえてしまう。
また古川日出男を引用するが、「しかし僕はダイブしない。僕はずっと立ち見席の奥のほうにいて、ただ真剣に見据えいて、聴衆する。サウンドにおぼれる」ってまさしく俺の聴衆状況だった。
ナンバーガールに関しては、思春期に聴いていたとか邦楽ロックにハマったきっかけの一つとか、そういう文脈と不可分になっているから冷静ではないけれど、そのうえでいまのナンバーガールのライブはほんとにすばらしかったと感じた。
もとから再結成する前から連綿と聞きつづけていたから思い出の中だけで消費するようなバンドではなかったが、今こうしてナンバーガールのライブを体験した結果、思い出も期待も突きぬけて熱狂に叩き落されてしまったから、やっぱ今の俺にとってもかけがえのないバンドの座は変わらない。
「10連勝を賭けてはたして勝利なるか。ジョーパブ上がりの実力派、Num-Ami-Dabutz」からはじまった「NUM-AMI-DABUTZ」のカオティックなグルーブ感とか、U!S!録!音!のカウントからはじまるお気に入りの「DESTRUCTION BABY」とかめっちゃ気持ちいい。
ほかにも「水色革命」とか「TATOOあり」とか「喂?」とか「日常に生きる少女」とか生で聞くことができた喜びとか。曲名から邦楽ロックバンド名当てクイズで早押しポイントを稼げる曲名の「Cibiccoさん」を聞けたのも。
ギターリフ主体の駆けぬけていく曲は終始楽しめたが、瞬間値でいえばミドルテンポのグルーブ感がある曲のキメや変調の間に感極まることが多かった。
通して、楽しい嬉しいそしてヤバイで感情が溢れかえっていた一夜だった。
この度、昔の自分に「お前はナンバーガールのライブに行ったんだよ」と語りかけたくなる人が大量発生したのも分かる。
俺がいうならば「お前がよく名前を聞いていたからという理由で近所のTSUTAYAで「OMOIDE IN MY HEAD 1 ~BEST&B-SIDES~」を借りて、それから今日にいたるまでうるさい音楽に夢中にさせられたきっかけのナンバーガールのライブに行ってきた」だろうか。そのライブがどんな模様だったかはうまく伝えられそうにないけど。
昨日はナンバーガールのライブに行ってきました。
セットリスト
鉄風 鋭くなって
タッチ
ZEGEN VS UNDERCOVER
EIGHT BEATER
IGGY POP FAN CLUB
桜のダンス
透明少女
YOUNG GIRL Seventeen SEXUALLY KNOWING
NUM-AMI-DABUTZ
SENTIMENTAL GIRL'S VIOLENT JOKE
DESTRUCTION BABY
MANGA SICK
CIBICCOさん
喂?(ウェイ?)
U-REI
TATOOあり
水色革命
日常に生きる少女
TRAMPOLINE GIRL
I don't know
転校生
KU~KI
透明少女
収録されているアルバムによって大文字か小文字かの表記がブレるし、喂?かウェイ?、17なのかSeventeenなのか。どっちの表記もあるから正式な曲名がよく分からない。
ただ「I don't know」はどのアルバムでも「I don't know」で、この曲がライブ後に一番聞きなおしている曲だったりするし、もう忘れられないんじゃないかってくらい鬼気迫っていた。