単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE BACK HORN「マニアックヘブンVol.15」 @GORILLA HALL OSAKA 23.2.11 

バクホンマニヘブゴリホライブ。

はじめに

THE BACK HORNマニアックヘブンVol.15」を観てきた。バクホンのマニヘブ、ツアーではないがファイナル inゴリホ。

「情景泥棒」のツアー以来のTHE BACK HORNのライブで、そして人生初のマニアックヘブン。ついに観ることができた。彼らのファンになってからライブは数多く観てきたがマニアックヘブンだけは都合が合わずに観れずしまいだったのだ。今日までは。生きているうちについにようやくやっとこの日を迎えることができた。

 

で、GORILLA HALLというライブハウスは初めて訪れたのだが、そもそも今年の1月21日にオープンした新設の箱らしい。そして今回のTHE BACK HORNのライブが箱にとって初めてのワンマンライブ(イベントや対バンはあった)でもあったらしい。なにやらめでたい。さらにはライブ(マニアックヘブン)での声出しOKが今回から解禁されたらしいとめでたいこと尽くしだった。

 

開演前に「バックホーン大好きな皆さんようこそ。今日は感染ガイドラインのようにマスク着用の上ならば声出しOKです。あとカメラが入り映り込んでしまう可能性があるのでそれは自分でなんとかしかしてください」とのアナウンス。

本編

ミュータントポップのような、時代劇のような入場SEから一曲目の『カウントダウン』へ。

初っ端から『カウントダウン』。初っ端から「感覚を失った無気力なユートピア」。サビ入り前の「クスリで膨れた体」と声を張りあげるところでゾクっとくる。艶やかな声でシビアな世界を歌っている。で、フィードバックノイズを鳴らしながらたてつづけに『運命複雑骨折』へ。世界一かっこいいクソ連呼パートでおなじみ。「クスリ(歌詞は抗うつ剤と書いてそう読む)をくれ不安でしょうがない」だから、二連続で薬が出てくる!おれは薬が出てくる曲が好き!と妙なとこでテンションが上がり、これがマニアックヘブンなのか!ほんと最高じゃん!と笑顔になった。一喜一憂の喜。で、そんで次は『ペルソナ』で、前曲で「気がつけば誰もが立派な商売人」と叫んでから「商業主義の地獄行き」ときた。これがマニアックヘブンなのか!ほんと最高じゃん!と。『ペルソナ』は(ギャンブルの)高揚感をパッケージしたかのような起伏に富んだ曲で、ライブという場と演出によって、メロの確変モードからのサビに突入するとクソほど盛りあがっていた。やはり「金だろ」としか聞こえない。

『白夜』。かつてはライブの定番曲だったのあり、デッデデ、デンデンデンのイントロのベースで歓声があがっていた。もう、なんというか、色気の洪水でしたね。ギターとボーカルがユニゾンするパートで栄純が将司に近付き、声とギターを絡ませ合ってなんというかそれも色気がすごかった。声出しOKということもありみんな「あーあー」とコーラスに加わる。暖房をつけっぱなしのままで寝てしまって喉に激痛を抱えていたおれも「あーあー」と会場の熱狂に当てられて声を出てしまっていた。で、つづいて『シェイク』で演奏のノリノリなビート感に当てられてか『白夜』ではゆらゆらとしていた観客のリズムが『シェイク』では縦ノリになっていた。ような。

ここらへんでMC。「一喜一憂して楽しみましょう」とのこと。

コール&レスポオンスでもっとも楽しかったのが『がんじがらめ』だった。だって「即終了」「がんじがらめがらめ」そして「マジ半端ないっすねえ」ですよ。楽しくないわけがない。ライブでは「即終了」のタイミングがシビアでレスポンスの足並みがグチャってなるのがまたおもしろい。むずい。あと、将司が「勝手に終わらすんじゃねえクソが」と歌いあげるとこ、THE BACK HORNはまったく終わってないのをこの夜に目の前で証明しているから「クソが」に説得力があった。

『雨に打たれて風に吹かれて』は、これまで書いたライブレポで調べると「KYO-MEIワンマンのアナザーサイドエクスプレスツアー」でもやっていたらしい。そのときのMCでマツが「こんなに毛穴が開くのは音楽とセックスくらいものですね」と言っていたらしい。という昔話はさておき、この曲はゴリゴリのメタルをやっていてバンドサウンドの重厚さに圧倒される。のに、中盤でコミカルなギターフレーズが飛びだしてきて、またすぐにベースのスラップ音を前面に押しだした強烈なリズムに戻り、半端なくかっこいい。マジで半端ない。

 

ここらへんのMC。

・今回のツアーグッズのアクリルスタンドはメンバーから反対は特になかったが、光舟の足が見切れているらしく、それに対して栄純が「光舟の股下の長さを舐めんじゃねーよ」。

・将司がエゴサしたときにアクリルスタンドとショートケーキの写真があったらしい。会場の人は「唐揚げと一緒に撮った!」と言っていた。

・栄純は今日よく喋っているようでマイクチェックのときに声が掠れていたらしい。「いつも自分自身としか対話してないから」。そして会場を眺めて「人間っていいな」としんみりしていた。

 

『神の悪戯』『コンクリートに咲いた花』『クリオネ』あたりで、おれはマスク着用しながら声出ししてかつ興奮してすぎていたせいかはわからないが、酸欠になりかけてフラフラして視界がぼんやりしていて記憶が曖昧だったりする。なんか「クリオネ……会場まで使用した四つ橋線には玉手駅があり、関西のスーパー玉手にはクリオネが売っていたな……「たまにおいしいもの食べて」はクリオネのことではないだろうな……あれガソリンの味がするらしいからまずいし……将司がギターを弾いている……」とか意識が薄かった。

が、『ヘッドフォンチルドレン』の将司が弾いたピアニカのイントロで正気にもどった。まさか。まさかの。ライブは数十回はゆうに観てきたが、『ヘッドフォンチルドレン』は初めてだった。死ぬまで一度でいいからライブで聞いてみたい、「声を聴かせて」と様々な人たちのコーラスに包まれたいとおもっていた曲だった。聞けた。この曲はバンドスコアに「楽譜ではシンプルだけど、バンドとしてグルーブ感を生み出すのは初心者には難しい」とアドバイスがあった。ライブで演奏されているのを体験し、まさにいま目の前でTHE BACK HORNTHE BACK HORNをやっているという事実を鮮烈に味わった。「ヘッドフォンチルドレン 俺達の日々はきっと車で轢かれるまで続いてゆく」で、続いていったのでようやくマニアックヘブンを観ることができました。

 

バンドアンサンブルの凄みが詰まっていたのが『フリージア』。変なことをやっている変拍子、二番から三連符のベースラインが際立ち、見せ場のギターソロは荘厳だった。荘厳の意味がいまいち分からないがこの言葉がもっとも適しているとおもう。歌われる言葉のほとんどが「フリージア」だが、歌い分けによって表情が移りかわっていく。凝りに凝ったバンドのテクニカルな魅力が詰まっていた。こんなにマニアックな曲だったとは。一転してバンドサウンドとしてはシンプルな『泣いている人』は優しかった。ただ、ひたすらに優しく、おそらく一喜一憂の憂。

 

『突風』のギターソロで栄純が赤いグレッチを掲げて弾き倒していたのを目にし、おれにとってのギターヒーローはやっぱり菅波栄純なんだよなという思いになった。ギターを顔で弾いていたのかは遠くだったのでよく見えなかったが。そして『一つの光』は、『真冬の光』で「お前なんて死ねばいいとささやく声」と対になっていて『一つの光』では「死ねばいいのになんて言わないで」とあって、THE BACK HORNは生と死/光と影と取り組みつづけてきたバンドで、旧新問わずにアルバム曲やカップリング曲で構成されたマニアックヘブンの楽曲でもまったくブレないんだな、眩しく、いつだってかっこいいとか、Cメロのベースがうねりすぎていて飲み込まれそうになったとか、頭の中いっぱいになりがら手拍子に加わっていた。

『閃光』で訳が分からないくらいに泣いてマスクが水浸しになってしまった。訳が分からないので書きようもない。たてつづけの光が眩しすぎたかもしれない。本編の最後は『カナリア』。「鳴けよ カナリア達」を、カナリア達が声を千切らせながら歌いかえす。最後のドラムの一打がリバーブを効かして反響し、その音が本編のピリオドを打つような感じで、なんかもうこれ以上ないってかんじの締め方だった。

 

アンコール

『天気予報』。噂で聞いていた、将司がドラムコーラス、栄純がベース、光舟がギター、そしてマツがメインボーカルを担当するシャッフルされた構成。「不幸でもいいから側にいてくれ」のシャウトでは大喝采。一喜一憂でいえば喜でしかない。

『上海狂騒曲』はステージの四人の立ち振る舞いが、ステージから届く音の塊がかっこよすぎて打ちのめされた。イントロのうさん臭いギターリフからもうたまらない。イントロ以降はBPMは変化しているわけでないのに、どんどん加速していくような感覚に陥っていって、突如終わりを迎えるから異国の地に取り残されてしまう。

「生きてまた会おう」を何度でも。

『さらば、あの日』。ついに『サイレン』でも『無限の荒野』でもなく『さらば、あの日』がおれのTHE BACK HORNのライブで締めを飾った。こんなに楽しい時間が終わってしまうという悲しさと緩急極まったバンドサウンドと絞りだすように言葉を吐くボーカルの熱さが混ざって情緒がぐちゃぐちゃになり「これがマニアックヘブンか……」と思い知らされた。将司の叫びの余韻のなかであのクソかっちょいいリフでスパっと締められたら「ありがとう」という言葉しか出てこなくなった。

おわり

初のマニアックヘブンはすばらしかった。すばらしかったな。少し時間が経ったいまでは『フリージア』と『一つの光』が印象的で先ほどからずっとリピートして聞いている。あとマスクの替えを持っていってよかった。

GORILLA HALLは初めてだったが気に入った。おれは軽いパニック障害持ちなのでライブハウスは恐怖の対象になりがちだが、ここは空間が広いし、コの字型の二階席からはステージが見渡しやすいし、ソファー席もあるし(誰も使ってなかったけど)、トレイ・ドリンク引き換え箇所が各階にあると、利便性と居心地ともによかった。

こんないいライブハウスの初のワンマンが、THE BACK HORNマニアックヘブンだったというのは、やはりめでたい。くわえて、彼らが二十五周年と活動なのも、おれがついにマニアックヘブンを体験できたのも、いずれもめでたい一日だった。

 

セトリは東京公演と同じらしいのでセトリが載っているリンク。

www.livefans.jp