死んだはずの僕の旅行/無限マイナス 総評 86点
ほんとうは怖いグリム童話。
1.死者列車
2.蠅とイチゴ
3.夏の名残
4.右脳ガム
5.アンダレイ
6.又、夢。
7.太陽の子供達
8.夢遊旅行
アコースティックギターとパーカッションが奏でる独特なオリエンタルサウンド。初めから宗教性すら感じる神々しさがあります。
それらの旋律を手がかりに、幻想的で生々しい歌詞が「死んだはずの僕の物語」の物語を紡いでいくアルバム。
死んだはずの僕の旅行というタイトル通りのコンセプトになっており、曲数は少ないながらも楽曲の背景には確かな物語を感じます。
耳を澄ますと、強烈な映像体験をするときごとく心にイメージがどんどん広がっていき、意識がいつの間にかこの楽曲群に溶け込んでいって、聞き終わった後には目覚めるように現実に戻る感覚を覚えました。
スピリチュアルで静謐な曲や爽やかなサマーソングの「夏の名残」やエレクトロニカ色が強い奇妙な「右脳ガム」、静かに響くエレクトロノイズが綺麗にちらばる「又、夢。」、ノリノリのラテン調である「アンダレイ」だったりと、楽曲は一見まとまりがないようですが、根底を貫く世界観が共通しているのでアルバムとしては通して聞きやすい。これが好印象。
ラスト二曲の「太陽の子供達」「夢遊旅行」はアルバムのハイライトで、内省的で感傷的で幻想的なサウンドです。抽象的にしか表現できない独特の世界観ですね。
パーカッションとアコースティックギターだけでどこまでも深淵な音楽を鳴らしています。
ボーカルのアクが強くて好き嫌いは別れると思いますが、それに慣れると精神奥底へにつながる物語を感じられるでしょう。
個人的には名盤だと思っていますが、いかんせん知名度が低すぎるのが問題です。