単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

宇宙さえも包み込んだポップセンス   COALTAR OF THE DEEPERS 「newave」

newave/COALTAR OF THE DEEPERS





10年前の奇跡。



このアルバムははじめて聞いたときの印象を鮮烈に覚えていて、
なにこの音像、なんだこのサウンド、なんだのアルバムは!?と衝撃をうけました。


これまでdeepersはシューゲイザーを軸にすえて、
ボサノヴァ、メタル、アンビエントエレクトロニカなどの要素を
NARASAKIのセンスで昇華し見事に聞かせてくれる楽曲はありました。
しかし、今回のnewaveのジャンルの幅の広さはちょっと衝撃的。
でもそんな風に彼らのマニアックさを存分にいかしつつも、
いたって聞きやすいのが今作の魅力だと思います。



またイメージを想起しやすいサウンドでもありますね。
つまりは幻想的といっていいのかもしれない。
捉えどころのなさがまるで底なし沼のようで
どこまでも落ちていって宇宙に繋がるイメージもある。
聞きやすいから入り口は広いけど、
でもマニアックさによって出口は深い。
初めて聞いたときは「すごいのものを体験をした」って感じでした。


オープニングのdownfall はアフリカンなパーカーッションと合唱。
それで次のhyper velocity はデスメタルエレクトロニカ、ギターロック
のジャンルを横断しながら高速で駆けぬける異色の曲。
そして四曲目のhow smoothはどこまでも陰鬱で、
サビですらまったく盛り上がらずに不協和音が鳴り響く様子。
かとおもえば、重たいトーンのシューゲイザーサウンドをバックに
HIPHOP的ニュアンスのある歌のprophet proved があったり、
タイトル曲でもある「newave」にいたってはアンビエントなインスト、
聞き分けられないほどの多様な音色が使われています。
  

サウンドもコンセプトもまったく統一感がないです。
しかし、アルバムとしてはやはり聞きやすくて。
というのも、さまざまな試みがあり実験的でありながらも
「心地よくきかせる」という点では群を抜いているからでしょうかね。
それはメロディーがポップってのも強いかもしれません。
個人的にはどの楽曲もなんとなくでゆったりと聞けます。



全体の印象としては静的かつアンビエントで、
それに浮遊感が加わって
まるで無機質になってしまった近未来の様相。
それが宇宙の片隅で静かに降下していく、
そんなりイメージが浮かんできますね。
こういうイメージを語りだすときりがないくらいに
豊穣な世界観を内包しているようです。


いずれにせよ、邦楽ロックアルバムとしてはあまりに異質で
それでいて一見様も気軽に聞けるような上質な仕上がり。
この音楽が日本生産でしかもメジャーからのアルバムなんて、
そういう意味でも凄いアルバムだと思いますね。
10年前のアルバムですが、いま聞いても斬新ですから。
これからも古臭いとか色褪せることは決してないでしょう。


coaltatr of the deepersというアーティスト名に納得の一枚。
ディープです。