単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

Syrup16gの曲レビューその11「Sonic Disorder」


  「思考は無化し 言葉は頼りなく 
  うすぼんやり  誰かの声を聞いてる

 
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ゆっくりと静かに堕ちていく途中。
イメージとしてはそんな感じで。


いつどんなテンションで聞いても一発でトリップできる曲です。
落ち込んでいる時に暗い部屋で聞いたらそれはもうヤバい。
まあこれはsyrup16gを代表するようなダウナーな楽曲でして。
何度も鳥肌をたたせてしまったほどに私の心を揺さぶってきます。


この曲はメロディーが素晴らしくサウンドは徹底してダウナー。
鼓動のように躍動するベースラインが何よりも目立っていて
攻撃性を秘めた空間的なギターサウンドが心地よいです。




この底を這うような薄暗いサウンドから淡々とした歌を聞いていると
なんだか「終わった」という言葉が相応しい雰囲気があります。

しかも、その「終わった」には何度も終わりを体験しているかの重みがあって、
終わってからまた終わって、
それを繰り返しながら堕ちていくといった印象。



だから、そのことが悲しいとか苦しいとかの感情はずっと前に通過してしまって、
もう達観していて遠くを眺めるかのように五十嵐隆は歌っていると思いました。
紛れもなく当事者のことを歌っているのにも関わらず。


いつかは花を枯れるように壊れちまったね ここは怖いね


歌詞でも「壊れた」と言及してあってやっぱりもう壊れてしまっている。
意味としては夢とか希望とかそういった輝きをしまって現実を直視して、
そんな風に望んでしまうことからそっと諦めるという意味なのでしょう。

それはきっと一度二度の困難によってではなくて、
ずっとそうであったからそう自然に思うようになっただけ。



でも、怖いんですよね。諦めても恐怖の感情は消えない。
恐怖が大げさならば、不安という言葉でもいいのですが。
これだけ達観しているようでも不安は解消されることがない。


違う。達観しているようはちょっと違いますね。
これは達観しているのではなくて麻痺しているのに近いと思います。
辛いことがあってまた辛いことがあってさらに辛いことがあって
そうした中でひりひりと麻痺して思考も停止していって。
慰めの言葉を持ってきても身体は受け付けなくなって。


そもそも未来になんて期待はしていないから
ぼーと過去をなんとなく思い出して
これからの辛さに対して震えている


人は一人のがれようもなく だから先生クスリをもっとくれよ


で、その治療法はきっとないんでしょう。
ここでのクスリも治療のためではなく一時的な安定剤としてのためで。
だって孤独や不安からのがれられるとは考えていないのだから。



この「人」は一人というのもちょっと引っかかって。
「俺は一人」ではないんですよね。人が一人。
当事者のつぶやきのような歌だけど、そこにはやっぱり普遍性があって。
その普遍性というのが歌い手の救いでもあって、聞き手の私にとっても救いだと思います。

 

そして、心を揺れ動かしてくるのがサビの盛り上がりとその必死さ。
メロで抑え込んでいる分だけ溢れるように音が増えていく。

当然ながらクスリとか欲しいわけないし壊れたいわけでもない。
それはどうしようもないけど望まれている状況というわけでもないのです。


だから叫ぶ、苛立ちを感じる。


人間の生々しいの感情に触れているようです。すんごい響く。
空虚にのた打ち回る、タイトルを私なりに訳しました。


一生、聞きます。