単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

名曲レビュー  強く儚い者たち/Cocco


 新企画。というほど特別なことをするわけではありませんが、私の独断で名曲だと思っている曲をレビューする企画を考えました。対象にするのは、女性アーティストやJ-POP、アニソン、洋楽などが中心で、これまで取り上げだことがないような楽曲が中心になります。


 「なぜ私が名曲だと思っているのか」をレビューできたらいいな、という目的でやっていこうと思います。自分の感じている魅力を少しでも伝えらればいいな。と。




 第一弾は、Cocco強く儚い者たち。アルバム「クムイウタ」収録。




 この企画を思い付いたときに、まず最初に浮かんできた楽曲がこの「強く儚い者たち」でした。
 

 イントロのディストーションのギターが不穏さをみせるものの、それがフィードアウトして目の前に景色が広がるように聞こえてくるのが、童話的な世界観を感じさせる綺麗で澄んだメロディー。サビの「飛び魚のアーチ」といった言葉が似合うファンシーすらあります。そして、「嵐の中で戦って突風の中生きのびてここへ来たのね」と、人間の強さを慈しむようでもあります。
 


 しかし、歌詞はそういった好ましい様子だけではなく、タイトルにある「儚さ」をテーマにした悲哀な物語を歌っています。聞き流すことができない「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」といった歌詞からは、ハッとさせられる生々しさと、どことない悲しさを感じてしまう。


  
 私はこのギャップこそが強く儚い者たちの何よりの魅力だと思います。そうした歌詞を踏まえると、子守唄のように優しく歌っている歌の印象が変わってきて、綺麗でありながら残酷でもあるイメージを帯びてきます。


 これがcoccoさんの魅力が詰まった曲だと。一筋縄ではいかないってのが良いんですよね。人間の儚さを歌うときに、あえて移り変わりやすい愛情をテーマにする。しかも、メロディーは本当に美しくて何ともいえない気分になります。


 


 coccoさんが出身である、理想とされている沖縄のイメージ、その先にある現実、そんなメッセージすら深読みしてしまうようなこの歌詞です。しかし、何より素晴らしいのは、やはりメロディーとcoccoさんの優しい歌だと思いますね。イントロのギターが何気にいい効果をもたらしているようで、それと対照的である優しく美しいサウンドは圧巻だと思います。



 人間の力強さ、そして弱さを同時に描く。印象がなかなか定めらない名曲。しかし、なんといっても美しい。
 





 さらにコメント欄で気づかされてことを。本当に名曲でした。


 「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」というこの歌詞は、あくまでも誰かが「そうかもしれないよ?」と囁いてるのにすぎません。それが決まった事実というわけではないのです。一人称であることが「推測」の範囲にすぎないことを保証しています。ただ一人の女性が嘘をついて誘惑している、そん

 つまり、ただ一人の女性が嘘を付いて誘惑している。と解釈することだって可能ですし、今ではそう思えてきます。また歌詞をみてみると、「住みつく人もいるのよゆっくり休みなさい」「何も失わずに同じでいられると思う?」と巧妙な誘導がしっかりとあります。


 なんというか、あらためて凄い楽曲だと感じました。coccoさんの穏やかで優しさすら感じてしまう歌唱から、私はまんまとそれが真実であるかのように受け取ってしまいました。これには「騙された」人はきっと多いんじゃないかな、と思います。他人の私ですら「きっと浮気しているのだろう」とこうも騙されてしまったので、詞中の誘惑された男性はきっといちころでしょうね。


 coccoさんという歌い手が誘惑するのには恐ろしいほどに説得力があって、「そうかもしれない」という推測を事実のように受け止めて悲しさを感じてしまった。人間の儚さを「お姫様が腰を振っている」と「この歌詞の男はきっとこの彼女に取り込まれるであろう」という自分の思い込みをもってして理解させられました。


 愛する人を守るために冒険した男性は、例えこのようにそそのかされても、もしかしたら自分の愛しい人をまったく疑うことはなかったのかもしれないのに。一方的に疑っていたのは私でした。


 この曲まじで凄い。聞き手すらも欺いてくるなんて。「人は儚い」の根拠となるのはただの推測でしかないのに、それをcoccoさんがこうやって歌うことによって納得させられてしまう。これが歌の力ですか。


 名曲だと思っていた曲は本当に名曲でした。いわれみないと気付けなかったですね。ああなんていう曲なんだろう。トリックと呼びたいくらいの鮮やかな歌です。騙された。そして、感動した。