単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE BACK HORN名曲レビュー「白夜」


教会の鐘が響いて幸せな奴が出てきた



THE BACK HORN全曲レビューその19「白夜」  
幸せにはほど遠そうな「俺」が暴走しています。

この曲は「パルス」に収録されており、アルバムでも存在感がすごいです。
ボーカルのねちっこい歌い方から、ベースのテクニカルな六連符などなど、
THE BACK HORNの気持ち悪さがここぞばかりに輝いています。


しかも、楽曲の構成、アレンジではきっちりと洗練されているので、
初期衝動などではなくて、
あえて練り込んでこんなイヤラシイ曲を作ったのは明らか。
その結果として見事に良い味をだしていると思いますね。
惹かれるひと、引かれるひとのズレが一段とありそうな、そんな曲。


君を想い独りきりで何度この手汚しただろう  切なくて
きつくきつく赤い糸で俺の全て縛ってくれ もう一度


もどかしい真夜中、ゆらゆら沸きあがっている欲望。
純粋とは決していえないけど、不純というほどでもない。
「身も蓋もない」で注釈されそうな人間の本能そのもの。
そういった卑近な感情が歌われていますね。

しかも、吸血鬼とか悪魔とか神とか大げさに歌っているのだって、
いかにも自己陶酔と屈折愛によって書かれた感じがして、
部屋や舞台などで両手を掲げて歌っていそうです。
イメージとしては「ある男性が夜中に書いたラブレターもしくはポエム」。
そう捉えると、もういわずもがな気持ち悪いんですよね。

共感できるかと問われるとちょっとこれは私には難しいです。
傍から眺めての傍観者として楽しんでいる感じ。
幸せそうな奴ではないけど、この楽曲の「俺」のような情熱もないです。



さんざん書いた「気持ち悪い」というのは否定しているようですが、
決してそうではなくて、
気持ち悪さの肥しとなる、もどかしさや悲哀や過剰さがが癖になるんですよね。
でも、「気持ち悪い」以外の上手くあらわす言葉がいまいち浮かびません。
それと、同調するような変態チック(?)サウンドもまたいいですよね。
独特のリズムでうねりまくるベースは特にたまらない。
楽曲のせいか、愛撫するようなエロい指使いが連想してしまいます。
山田将司の粘くような、囁くような歌に関してもそれは顕著で、
終盤の白夜、白夜、白夜と唸っているところはもう絶品です。


THE BACK HORNの魅力を語るのは難しいのですが、
こういった楽曲もまたたまらないってのはありますね。
丁度いまの冷え込んだ季節にもちょっと合うような、
でも、秋の夜長にはちょっと過激な曲でした。