単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

兄妹の絆、不可侵の愛 ハンターハンター No.322 感想


 怖い、可愛いけどやっぱり怖い。目が点になりました。

 アルカの能力は一体どういったものか。それをホラー路線すれすれで描かれていたのが322話。いきなりアルカの目が真っ黒になって凄く怖かったです。ブラクラかと思いました。それにしても展開が面白すぎて目が点になりました。アルカの便利で不条理な「おねだり」は、筒井雪隆や平山夢明へのオマージュを感じさせる不穏なにおいがする設定。他人を犠牲にすれば最強の利器であり、使い方によっては世界を滅ぼすことさえできる能力。そんな禁断の能力を少年誌テイストに仕上げるってのが最高ですね。


 いや待てよ、べつに少年誌テイストでもないのか。なんてたって、無邪気なアルカが、臓器、脳、背骨を突如おねだりするときのおぞましさ、おねだいを断った人間のスプラッターな死に様は、少年たちが笑顔になるようなものではないですからね。これまた怖かったです。あんな綺麗なキメラアント編を描いた後で、こんな禍々しい物語を描こうとする、冨樫義博先生のひたすら攻める姿勢が素敵です。またもグロすぎるときに発動されるジャンプ特有の黒塗りモザイクがくるかもしれません。


 

 今回の物語を読んで考えさせられたのが「強さ」についてでした。
 メルエムによって最強の上限に達してしまったと思ったわけですが、アルカのようにまったく軸の違う「強さ」が登場しました。そもそも、ウェルフィンの能力だって王の喉に達すると描かれていたし、ハンターハンターには絶対の強さというのものが存在しないようです。これが成立するのも、核となる概念である「念」の奥深さがあってのことで、ゲーム大好きの冨樫が提案したこの概念の優秀さを感じましたね。アルカの不可思議な能力だって念が関係しているのは間違いない。縦にも横にも広がりがある能力のようで。



 となると、アルカにゴンの回復を願ったときの代償は一体どうなるのかが気になるところ。67人を犠牲にした金持ちになりたいという願いよりも、叶えることの難易度でいったら過酷な願いになります。その代償で地球崩壊して連載終了です!とかはさすがにありえないけど、相当な規模の代償が必要となるのは必須ですよね。しかも、それはつぎのおねだりを頼まれた人間にしわ寄せが来るのです。やりようにとっては暗殺に利用しようということも可。アルカの能力は読者の想像を掻きたててくれる設定。考えて楽しめる。予想を裏切られて楽しめる。そんな風に一週間を充実させてくれる。もう絶賛しかしていないな……。





 それと、アルカは女の子でした。かってに男と勘違いしていました。アニメの見すぎかな。あんなかわいい子が男のわけがないじゃないですか! それと、アルカの能力が親族には発揮されないのは、自分の愛する者に含まれてしまうからでしょうか。無意識でおねだりをしていないかは分かりませんが、アルカにとっては家族が大好きなので、あの能力さえも不可侵である領域と解釈しています。なんだかんだでゾルティック家はいい家族。ファミリー愛が眩しい一話でした。一週間がながい。あい。