単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

他愛もない人間模様    クリープハイプ「待ちくたびれて朝が来る」

待ちくたびれて朝が来る/クリープハイプ

待ちくたびれて朝がくる

 
 東京・下北沢を中心に活動する4ピース、クリープハイプ。“世界観が良いね”と評されることに腹を立ててのネーミングだという尾崎世界観(vo、g)を中心に2001年結成。
 
 「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」 がむしゃらに「嫌い」を連呼する尾崎世界観のボーカルが強く訴えかけてくる。でもそれはただの強がりでそれが無駄であるかのように突き放して歌われる。複雑な心境。未分化な感情。聞こえてくるのはそんな思いだ。




 前作『踊り場から愛を込めて』のときから、不思議な世界観と癖のあるボーカルの存在感で注目を浴びつつあるクリープハイプが、満を持してのフルアルバムを発売した。これまでの特徴を引き継いで、一回りビルドアップした手ごたえを感じる。伝えたいメッセージはより明確になり、サウンドは一段と熟成されており、正当な進化を遂げたようだ。代名詞と呼んでもいい確かな出来。

 今作は、ミニアルバムといってもクリープハイプがどんなバンドを知るかに相応しい充実作だろう。例えばアルバムの核となっている「欠伸」は、気の抜けたチョーキングが印象的なバンドサウンドで、それに尾崎世界観のやるせいないといったボーカルが絡みつく。バンドの存在感を見せつけつつもポップセンスがきらりと光る快曲だ。
 



 クリープハイプの特徴は何といっても癖のあるハイトーンのボーカルにある。耳に絡みつくような囁きを発したり、心を揺さぶるようなエモーショナルな叫びなどの振れ幅を持っている。今作でもそれは幾分なく発揮されていて、例えば「あの嫌いな歌」では嫌い嫌いとひたすらに感情を抜き出しにして叫んでいて、「バブル、弾ける」ではフォークソングのようにしっとりと歌い上げている。尾崎世界観の圧巻の声がバンドの表現の核になっているのは間違いない。それほどに強い響きを持っている声である。

 クリープハイプオルタナティブロックに分類されるが、その音楽の本質はというとまるでフォークソングのようである。生活のなかで生じる葛藤、悩み、公開、自己嫌悪、苛立ち。そんな些細で未分化の感情に焦点を当てている。泥臭さすら感じる身近さである。そんな他愛もない日々の様子が、尾崎世界観の眼を通して描れているようだ。アルバムで紡がれているのはそんなリアリティを持った普遍的である人間の姿だ。




 聴き手を寄せ付ける本作の強い求心力は、そんなところに端を欲しているのかもしれない。素朴に語れる物語。そこに自分自身を投影してしまうのだろう。そういう意味では親しみやすさは抜群のアルバムである。待ちくたびれて朝が来たときにそっと自分を癒してくれる。とっても優しくて愛に溢れたアルバムだ。





 ライターっぽいレビューを書いてみました。これは慣れないと難しいですね。