単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

Syrup16gの曲レビューその18「パッチワーク」


 こうしてブログを書いていると、誤解を招かないように言葉を選んで、批判を避けるために注釈を付けてしまうことがあります。別に何も悪いことではないのですが、そうする自分に退屈さを感じることがあります。だからって赤裸々に気持ちを書くのは躊躇われてしまう。

 
 こういうのは誰にでもあることだと思います。他人と会話するとき、メールを送るとき、コメントを書くときに、自分の素直さを犠牲にすることで利益を得られるならば、そこは我慢しておこうと思う。そうやって言葉を封じ込めて窮屈になっていく表現。


 今回のSryup16g全曲レビューその17の「パッチワーク」。この曲は公には言いにくいことをズバリと言ってくれた快曲。胸がスカッとします。

 
世界がどうなってようと
明日がどうなってようと
僕は楽したいのです
いつまでもしたいのです


 楽したい。面倒くさい。だからそれ以外はどうなってもいい

  これでは自己中と呼ばれても仕方がないほどに自分本位な考え方。でもですね、やっぱりそう思ってしまうのは事実じゃないですか。っていっても一般的に言えるかは分かりませんが、案外これは誰でも当てはまる気持ちだと思います。行動に移してしまったらアウトですが、思うだけなら自由で、思うだけだからこそ、こうして望んでしまうのです。一見して自堕落の頂点のような歌詞が続くのですが、あんがい健全でヘルシーな楽曲なのです。気の抜けたオルタナサウンドからも詞の雰囲気を味わえる。



 共感できるという点では個人的にナンバーワン。

 グリーンヒルの台詞に「めんどうくさいは人生最大の敵」とあってまさにその通り。

 楽したいというのは欲求としてはどうも強烈なので、普通にみんな涼しい顔でこなしているように思えるけれど、ときには「めんどうくさい」に負けてしまうこともあるでしょう。というかそうであって欲しいのですが。めんどくさいに全戦全勝できるマッチョなひとはそういません。


 そういう意味では誰でも共感できるのではないかと思います。だからって、誰かにこの気持ちを堂々と言うことは難しいと思いますが。その隔たりを越えてくれて、「よくぞ言ってくれた」と私は非常に嬉しくなります。ここまで赤裸々だと信頼できますね。楽したい。ただそれだけをよくぞ歌ってくれた。本当にそうなんだよ。全てを諦めたとしても楽したいとたまに考える。


あとのページは
途切れた記憶
その他の思い出
理想と幻想
切って貼ってな



  ですが、もしこれを思うだけではなくて実行したらどうなるのか。んなもんは決まっていてます。ひたすら堕ちていくだけです。パッチワークの意味はその自堕落の先にこそあるから、初めて聞いたときはやられた感じでした。そりゃあ楽したいだけじゃダメなんだよ。

 楽したい。楽をしよう。いちいち想像を働かせなくてもそこには輝かない未来が待っているのは明らか。そもそも素敵な未来なんてないですが、最悪の未来すら待ってはいない。ただ途切れた世界で横たわるだけ。理想と幻想をパッチワークした世界は胡散臭いだけのはりぼて。

 
 それはさすがに嫌だろう。それを拒否しながら楽したいと願うのは都合が良すぎるだろう。そういった反面教師的な意味合いがあるように思いました。ぬるま湯に浸かっているような曲だけど最後にはちゃんと出ていくのです。

 でも「こうなるからダメだよ」といたように説かれるよ感じがしないのは、あくまで自分の思いを歌っているからでしょうね。分かり切っていることだから押し付けがましくないのがいい。


正論なんて論んないで

  
 サウンドに関していえば、爽やかに自堕落な感じで。ややタイトなバンドアンサンブルが鳴らされる一方で、気の抜けたコーラスが聞こえる。そこらへんの力の抜け加減がお気に入りですね。詞にピッタリと合っている。


 この曲はもう歌になっていること自体が嬉しい曲。楽したいってここまで赤裸々に歌って、楽したらダメだよなと思いとどまっている。私によっては一際大事な曲です。ある種の清涼剤みたいなものですね。