単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE BACK HORNの曲レビューその4 「初めての呼吸で」


 突然ですが、私はツイッターをぼーっと眺めるのが好きです。そこには様々な人間がいて、それぞれの生活を送っているという当たり前のことに気付かされます。


 ツイッターでは、頻繁に目にする方、レアキャラクターのようにごくまれに呟く方、そして大変な苦労の真っただ中にいる方もいまして、その辛そうな様子を目にしたとき「疲れ果てて泣くだけ泣いて 死んでやると飯を炊きながら日々を越える」という「初めての呼吸で」の歌詞が頭の中に浮かんできました。



  そこで久しぶりに聴いて、心を揺さぶられてレビューを書こうとしたら、丁度、去年の今のごろに書いていたんですよね。これです→THE BACK HORN全曲レビュー(感想)その4 「初めての呼吸で」。なんといいますか、一年前は携帯で全曲レビューを書いていたのを思い出して感慨深かったのですが、この文量・出来には納得できません。なので、あらためてこの楽曲のレビューを書くことにします。

「夢を抱いて暮らしを背負って
生まれ消えてゆく洗濯機の銀河の中」



生活が苦しいとき、明日に押し潰されそうなとき、
心細いとき、不安なとき。誰にでも訪れる息苦しさの中で、
そっと寄り添ってくれるように、支えてくれるような曲で。
でも、楽曲そのものは気だるい生活感に溢れているし、
サウンド、歌からは明るさが感じられず、
くたびれている雰囲気すらあるけれど、
それでこそ親しみやすい温度感、雰囲気を持つ楽曲だと思います。
路上の弾き語りで聞こえてきそうな、身近に感じる歌ですね。


装飾をそぎ落として、弾き語りでも良さそうなシンプルなサウンド
素朴なメロディーと切実な歌が混じりあって、
なんともいいがたい温かさを感じます。
ベースラインまでもルート音をなぞるだけでやはりシンプルに。
間奏のギターのトレモロだって難しいことはしていない。
メロディーとボーカルの一本勝負というバックホーン屈指の歌だと思います。


そして、詞のメッセージがこれまた良いんですよね。
やるせないけれども夢を抱く。
嘆きながら日々を越えていく。
前向きだが後ろ向きだかは分かりませんが、
このような感情は私も何度も体験してきました。
辛いときに希望を持てといわれても心には響かない。
ただ生きて、ほんのささいな夢をみることで、
苦しみながらもギリギリの中で生きていくだけ。
「そんなのみすぼらしい」と言われるかもしれないけど、
そうやってどうにか生活を越えていくことできるのです。
いつも綺麗なままで、笑顔のままではいられるわけではないから。
「死んでやる」と泣き言だって言いたくなる。

初めての呼吸で命を名付けたら綺麗だろう
初めての呼吸が未来を呼んでいる何処かで



そんなやるせない日々を、
「初めての呼吸で」と神秘的な誕生の瞬間に思いを馳せるのが素晴らしい。
冴えない生活の源には美しい瞬間があった、と。
それはただ懐かしいという気持ちだけではなく、
生命が有難かったことものだと気付けますから。
生活をする、呼吸をする、今では呪ってしまうようなクソッタレな日々でも、
初めて呼吸したときだけはきっと綺麗だったのだと思います。
だからって今が救われるわけでも肯定されることもないのですが、
でもその「綺麗な瞬間」を無視するのはちょっとダメなんじゃないかと。
あくまで私の解釈ですが、そんな気がしました。


いつ聞いても「初めての呼吸で」は温かく感じられますね。
しかも、終盤のボーカルのシャウトも格好よくて力強さもあって。
歌に「元気が貰える」のではなくて、自分で「元気を取り戻す」のように
そのためのキッカケもらえる曲だと思います。
あと何年後にはもっとお世話になるときが来そうです。