ついにこの時がきた……! HUNTER×HUNTER 第332話 「喝采」 感想とおまけ程度の考察。
レオリオの素晴らしい演説に拍手喝采がわき起こる。レオリオが吐露したのは、他人のために頑張ってきた友人を助けたい、しかしただ声をかけることしかできないという後悔。だからといって無力感に屈することは決してなくて、いまできることをできるだけ本気でやるという覚悟。レオリオの演説に込められた意思の強さ、思いの切実さはハンターたちの心を打つには十分すぎるものだったのです。
そもそもレオリオが自分を責める必要はなくて。自分のために努力するってのは何も悪くないですし。それでも悔やんでしまうその有様は如実にレオリオの人柄の良さを表しているとおもいます。それは信用にも繋がります。それに「あ~~言いたい事だけ言わせてもらうぜ」の結果があの演説というのはカッコいいですね。
今週号を読み終わって本を閉じたあと、じーんとした気持ちになってしまいました。ハンターハンターは面白いだけじゃなかった。少年ジャンプの名に相応しい直球の友情物語じゃないですか。パリストンの無機質さ、イルミの冷酷さと対比されて描かれる、ぬくもりのある思いやりにじーんとさせられます。対比の巧さが際立つ。ったくもうレオリオさんはいいキャラクターしてますね。清々しいほど素直で、惚れ惚れするほど人情味があります。
そして、チードルの予想外の戦略。票を全てレオリオに集めることでパリストンの野望を打ち砕く。目的はハンター選挙で勝つことでなくパリストンの意思を食いとめることへ、と。
個人的にこれはあり得ない選択だと思っていました。それはハンターとしてまで未熟であるレオリオを会長にさせるというデメリットがまず一つ。はたしてレオリオに票が集まるのか、票が分散してしまったむしろパリストンが優位になるのではというハードルがもう一つ。どちらの問題も要は「レオリオが会長に相応しいか」が問われています。
結果、あのチードルが暫定的にもレオリオを会長にすることを受け入れたのです。いやもうこれはレオリオがすごいって話でしょう。これまでのキャラクターにとってパリストンは異質でありましたが、あそこまで直情的で人情味があるレオリオもまた特別の存在で。こんなに頼もしく熱い信念を持ったキャラクターはめずらしいですからね。私は正直レオリオさんを舐めていたようです。てっきり会長となり得ないのだろうと。これは反省しないといけません。今週はレオリオに全部持っていかれました。キャーレオリオさんすてき!
しかし、あくまで「今週は」という注釈が付くのでしょう。なんてたってパリストンがすんなり引き下がるわけがない。おそらくはこの戦略ですらパリストンにとっては予想の範疇にすぎないでしょう。むしろストーリーと照らし合わせるとレオリオがこのまま会長になれるとは考えにくいです。
それにパリストンの目的はいまだ不明瞭なところがあります。繭から生まれた半獣人で遊ぶ、というのはジンの一つの推測で、その背景には想像を絶する企みがあるかもしれない。あえてレオリオの会長の座を譲ってから失脚させる? 暗躍してハンター協専を乗っ取る? そう思わせるほどに彼は危険なキャラクターですからね。一体どんな演説をするのか。はたして策略だけでレオリオの名演説を塗り替えることができるのか。
まだ決定的な局面ではありません。相変わらず引きが上手い……!
一方で、アルカとキルアは傷ついたゴンのもとへたどり着きました。やはりゴンが背負った代償は悲惨なもので、普通なら到底治すことができない痛々しい傷跡が。そこでゴンを治すために普通ではないアルカが登場する。ここに至るまでの道のりはゾルティック家の監視、イルミの妨害など過酷なものでしたが、ついにアルカとゴンが出会いましたね。うーん、良かった。
でもまだ安心できないとつい思ってしまうのは、ハンターハンターという漫画の所以というか。下手すると、レオリオの演説に触発されたパリストンが、この問題に介入してくる展開だってありえます。そこまで疑ったらきりがないと分かっていますが、そこまで疑っても越されますから。というか、イルミがアルカの利用価値に気付いてしまった今、むしろ状況は悪化していて争奪戦の予感が。安心できないどころか暗雲が立ちこもる展開だったのか。
見どころは次週に持ちこしですかね。今週はレオリオの名演説でも読み返して日々をすごそうと思います。「とにかく考えろ!!」「思いついたら動け!!」 これって本当に良い言葉なので、深く胸に刻み込んでおきます。
考察
以前の考察記事へのアクセスが多かったので、ちょっと気合が入って長くなりました。もっと簡潔にユーモアたっぷりに書きたいのですが、まあそれは後々の課題にしていきます。とりあえずは感想として頭に浮かんだことを全て書きつくすことに専念しようかな、と。まああえて本文では書きませんでしたがズリセンって! まったく赤裸々すぎるでしょう。オマケ程度の考察へ。私は今回のハンターたちがレオリオを認める、という展開はすぐには受け止められませんでした。だってレオリオは個人の能力がそこまで優れているわけじゃない。それに会長として責務を全うできるかという点では不安が残る。でも、事実としてレオリオはハンターたちに拍手をもって認められました。
で、私がこの展開に納得した理由が、レオリオを認めたのは「ハンターたち」だったからと思い返したからです。そもそも投票権を持つハンターたちは一般ではなく非凡の存在です。つい忘れがちですが、基本的にハンターの資格を持っている人間は非凡中の非凡であり、ワンピースで例えるならば高額懸賞金をかけられた船長の集まりです。いってみれば、本来なら徒党を組まなくても個人で生き残ることができる、弱肉強食の強に位置づけられる存在なのです。最初のハンター試験に登場してすぐに脱落した、超ネクタイをしたパソコンを持った太った少年の、「俺はクラスでも常に一番で」みたいな発言からもうかがえると思います。
それはつまり、ハンターたちが会長を選ぶときの価値観は政治家を選ぶそれとはまったくの別物ということで、ハンター会長選挙はハンターたちによる人気投票ともいえる、ということです。本来ならばハンターはリーダーを必要としない存在。そのため、会長という存在は「自分たちを統制するリーダー」のではなくて「自分たちが随従するためのリーダー」。 よって自分より弱者でもあっても面白そうな奴ならば、良い奴そうならばオッケーということになる。そんなハンターたちが多いからこそ、レオリオがああした形で受けとめられたのかなと思いました。まあそれにレオリオはジンもチードルも認めるほどに良い奴ですからね!
以上です。レオリオの独壇場の今話でした。以前の考察で「遊びが優先される世界観」って書きました。それが今話でちょっとずつ変わっているような気もします。ゴンがああなってしまったのは遊べなくなったわけで、メルエムとコムギによって遊びというテーマが昇華しきったのかなと。レオリオの存在、ゾルティック家の兄弟愛とか遊びには回収されませんし。まあこれについてはまだ分かりませんね。一応の参考程度に。