Syrup16gの曲レビューその20「ex.人間」。「HELL-SEE」というタイトルのアルバムの中、もっとも不健康そうな雰囲気が漂う曲。
道だって答えます 親切な人間です でも遠くで人が 死んでも気にしないのです
ひたすら不健康。じわじわ効いていく毒のように、派手さはないけれど劇薬で。
卑下していて、達観していて、でもどこか割り切れていない。人間のじめったい嫌な感じが存分に表現されていて、まともに聞いたら気が滅入るかと思います。だからって聞き流せるような軽い曲でもなくて。まあいってみればヘビーな曲ですよね。
サウンドも然り。歯切れの悪いギターサウンドもそうだし、かすかに聞こえる泡が弾けるような効果音はどこか場違いで、何よりバックで流れているコーラスの陰気さがすごい。ため息のようなコーラスなんですが、なんかもう苦しそうに歌っている。そしてサビに達してもまるで盛り上がることはなくて、ズシリと重圧が増して息苦しくなるような感じで。どこを切り取っても重々しいです。
ここまで徹底されていると、自分と切り離せれば面白い曲って捉え方ができそうですが、私にとってはただ重い曲ですね。否が応でも逃れられないというか、楽曲の持つシリアスな雰囲気に飲み込まれます。
愛されたいだけ 汚れた人間です 卑怯モンと呼ばれて 特に差し支えないようです
こういった雰囲気を表現するときに便利な言葉がありまして、それは陰鬱という言葉。この大げさな言葉がピッタシくるかと。それと、他人事のように綴られた詞は、あまりに率直すぎて扱いに困ります。「きてるねえ のってるねえ」と歌っておきながら、まったくもってノッてない。徹夜明けの朝方でももっとテンション高いだろ、と。
んでもって救いがあるようでないような兆しで終わって、気だるさだけが取り残される。
だからこそ、卑屈になっているときや、落ち込んでいるときにはうってつけなんですよね。明るい曲が聴きたくなくて、むしろ暗い曲を聞いてとことん沈みたいってときによく聞いています。昨日の夜中とかまさにそうでした。
実際にこうして必要とするときがあるので、たとえ毒にしかならないような曲でも、私には大事なようです。それに歌われていることに嘘は含まれていないし、ありのままだからこそ気持ちが沈んだり、癒されたりすると思うので。
それにしてもなんてものを作ったんだと言いたくなりますね。美味しいお蕎麦屋さん……。