単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE BACK HORN「リヴスコール」 感想


 待ちに待った新作、THE BACK HORNリヴスコール」。


リヴスコール(初回限定盤)(DVD付)
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 これ、すっごくいいアルバムですよ。
 生にスポットライトを絞り、生きることの喜び、苦しみ、厳しさ、切なさを今ならではの空気感と共に閉じ込めていて、今だからこそ生を祝福するための力強さが溢れている。さらにアサイラムより新境地に踏みこんでいきながら、これまで以上にストレートに心に訴えかけてくる求心力がある。新しい試みの完成度もさることながら、しっかりとマニアックなツボもおさえており、それでいてメッセージ性を持っていると、バランスよく調和しています。一曲一曲の完成度が高くて堂々とした佇まいの作品。


 「パルス」、「アサイラム」ときて、一気にガツンと変化としたといった感じ。
 流れは引き継きつつ大幅に進化したので、今まではとは毛色が違う感覚も。
 

 前作ではバンドの持つポテンシャルを解放したならば、今作は解放したポテンシャルを乗りこなすといった感じで。とことん隙がなく細やかなところにもアレンジが効いています。フックが多くて面白い仕上がりながら、問答無用で良いメロディーを感じさせてくれますね。新しさでいうならば、「星降る夜のビート」は爽やかなダンサンブルな曲になっていますし、「風の詩」では音響系のエッセンスを取り入れており、どちらも新鮮な感覚です。

 これまで以上にリズム隊は凄まじいことになっていて、前作でも鮮烈だったアンサンブルは一段とビルドアップされていて、さらに今作ではアレンジが効いているギターサウンドもまた面白いことになっていて。音の充実っぷりだけでもバンドの順当な成長がうかがえますね。イントロのリフだけでガツンと打ちのめされるカッコよさを持った曲が多いのが特徴。それと、アルバム全編にわたってオルタナ好きのツボを突くようなフレーズが満載です。



 そして、暴力性や凶暴性こそは鳴りを潜めましたが、その代わりに洗練されてきたのが怪しさや不気味さ。とくにどす黒いグルーブ感が炸裂する「グレイゾーン」と、タイトルからぶっ飛んでいる「超常現象」の気味の悪さは半端ないことになっています。さらには、タイトルどおりに攻撃的にナンバーの「反撃の世代」があったりと、THE BACK HORNの尖っている部分は健在です。むしろ毒を含んでいるかのようにじわじわ効いていく感覚もあって。経験を積んだからこその説得力、破壊力がある節を感じられて頼もしいかぎり。

 

 で、今作はなんといってもストレートに素晴らしいのですよね。
 幅広い層に好まれるような、スッと親しみやすい曲が多いかなと。
 
 オープングナンバーの「トロイメライ」は壮大なロッカバラードになっていて、「風の詩」はシューゲイザーのような儚い音像が心地よくて。「いつものドアを」はイントロからすでにたまらないのですが、叙情的なメロディーはどんどん愁いを帯びて盛りあがっていって、ノイズが飛び出すギミックもあり、叫ぶように歌い上げる様はおもわずグッときました。この曲は特に好きですね。詩のフレーズもハッとさせられます。

 そもそもすばらしい出来であったシングル群は、アルバムに配置されることで新たな深みを感じます。どこに置いても存在感のある曲だと思っていましたが、アルバム曲がそれに劣らず個性的な曲ばかりで、アルバムに一つの曲として馴染んでいるのが面白いかと。いやでもやっぱりシングル群の切実なメッセージは随一。


 それにくわえて、「シンフォニア」を筆頭とする激情ナンバーは、ライブで盛り上がること確実の熱さが滾っていて、そのうえでクールな感触さえも秘めています。「シンフォニア」のギターリフは純粋にカッコよく、「ラピスズリ」のメロのベースはかなりツボでした。そして、個人的には「自由」のメロディーが相当にツボっています。何度も噛みしめたくなる詩の良さもあるお気に入りの曲です。


 ラストを飾るのが「ミュージック」。大胆なタイトルの曲は、意外にも素朴に優しい曲でした。このアルバムの締めとしては最高の曲だと感じています。飾ることなくまっすぐ突き刺さる、純粋に良い曲だなとおもいました。アルバムを総括するに相応しい曲。




 「自分らしくあるために変わりつづけてゆくけれど」
 「決断を迫られて俺たちは変わっていく」

 アルバムを重ねるごとに変わりつづけていくTHE BACK HORN。今作は変化の歴史のなかで新たなスタンダードを打ち出した作品だとおもいます。一言でいえば、傑作。なんというか、ひたすらに良い曲が多いんですよね。アルバムのコンセプトとか気にならないくらいに、一曲一曲の出来が良いんですよ。すでにお気に入りの曲ばかりです。いやーずっと待っていた甲斐がありました。問答無用に心に響きました。

 
 ちなみに瓦礫のような物で積みあげられた無機質な黄金の船。これが一体に何を示しているか分かりませんが、アルバムに込められた意思の力強さが伝わってくる素敵なデザイン。


追記

 6月5日のustream配信でジャケットについて語られていました。黄金の船はじっさいに作成したプラモデルで、背景の青色は空をモチーフにしているそうです。そして、なぜ船であるとかいうと、祈りの象徴、瓦礫や津波のイメージ、前に進んでいくという希望の表れを込めたいうことらしいです。趣のあるジャケットですね。


 全曲レビューを書きました→THE BACK HORN「リヴスコール」 全曲レビュー