単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

苦い絶望をもっと! 「see you,again」 pegmap


   COME BACK pegmap!! 
 
 


 pegmapは「軟弱なギターロックに終止符を」という大層なフレコミを掲げていながら、主題としているのはやりきれなさだったりどうしようもさだったりと、むしろ終止符を打たれそうな脆さがあるバンドというイメージがあります。わたしは弱々しさがありつつも必死こいてのた打ち回っているpegmapに惹かれました。


 そして、長いスパンを経て、ついに5年振りの待望のアルバム「see you,again」が完成しました。
 どうやら年を取ってものた打ちつづけるというのは難しいようで、数多くのバンドが光が溢れるほうへシフトチェンジしていくなか、pegmapはどうなっていったのかという不安がありました。もしかしたらもう落ち着いたのかと。

 で、いよいよ手に届いた「see you,again」は、やっぱりpegmap以外の何物でもなかった。まだみっともない生き様を歌っている。いまだに悪言を吐いている。「相変わらずだらしないよ」と、「相変わらず変わりたいよ」と嘆いて立ち止まっている。もう、これだけで嬉しかったですね。このどうしようもなさが、なによりの応援歌になるんですよ。あと「足りない脳みそを呪うんだな バイバイ」で始まるアルバムって最高。


 「ラクシヨウ」や「ねーママ」などのインパクトは控えになりましたが、強烈な皮肉が飛び交う「タコ」やレトリックで現実を抉る「デザート」があり、ヒリつかせるような感覚はまったくおとろえていない。というかむしろ、衝動が薄まった分だけ悲哀が色濃くなっていっていたりするし、成長した分だけ言葉の切れ味は増しているし、相当にキッツいことになっています。面白いことに、歌声は澄んで優しくなって、バンドサウンドが軽快に洗練されているけれど、やはりペーソスは充満してパッケージされているんです。その路線では「BORED!」は爽やかなのにちょっとトチ狂っていて素敵です。わりと中毒性を感じられたり。
 
 

 しかもですね、「やや無常」に確かに刻まれているように、進化しない現実に擦りあわせられて一段とやるせなくなっています。夢や希望がくたびれて、もはや初期衝動に頼ることもできなくなって、いよいよもって追い込まれてしまっている。そんな焦燥感だったり、悲壮感だったり、とにかく拭いきれない苦痛が赤裸々に綴られています。自分への遠慮さえもまったくなくてあまりにも赤裸々でゾッとするくらいに、です。
 
 だからといって、悟ったわけでもなく諦めたわけでもなくて、まだかすかな理想を抱いているんです。だからこその苦痛があるってのが今作の肝かと。いわば「途中経過」ということで、その宙吊りの状況こそが苦痛を増幅させるのはいうまでもなく、その真っただ中でpegmapはのた打ち回っているというわけです。その当事者性が生々しくて胸を打ちます。


 アルバムはそういった楽曲だけでなく、弱さゆえに切ない人間模様が描かれた「鏡」や、LOVEとHATEがごちゃまぜになった愛憎たっぷりの「肌色同盟」などもあります。でもやっぱり、わたしは、「タコ」や「デザート」の歯切れよい詞の楽曲とか、「地獄」に代表されるよう現実のやるせなさ、日々のどうしようもさが嘆かれる楽曲がお気に入りです。やっぱりいまだにどうしもないので。


 心から満足がいくアルバムでした。
 今でも諦めないことが大事なんてことは絶対に思わないんですけど、諦めないことによって生み出される苦悩、葛藤は、ときに誰かにとって最高のポジティブメッセージになると感じましたね。確実にこうしてわたしの糧になっていますから。理想を抱いて呪いを生みだす、pegmapはそんな切ないバンドなのかもしれません。

 最後に。すでに書きましたが「足りない脳みそを 呪うんだなバイバイ」って捨て台詞から始めるのが本当にたまらない。