単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

HUNTER×HUNTER クラピカ追憶編  感想


 できれば期限切れの目薬は使用しないほうがいいですよ。
 HUNTER×HUNTERクラピカ追憶編の感想記事。ネタバレ注意。


 今回のクラピカ追憶編は劇場版映画の読み切りということもあってか、わりと無難なストーリーでした。いや無難というよりかは、上手くまとまっているっていったほうが適切でしょうか。といっても、ラストの展開はハンターハンターらしく、けっこうドギツイことになっていましたが。 


 あらすじ。
 閉ざされた村に住んでいたクラピカは、ゴンのように活発で好奇心旺盛で、外からやってきた旅人シーラと冒険活劇の本に触発されて、外の世界に憧れるようになる。と同時に、クラピカには自分のせいで目を悪くした友人を治療したいという動機もあり、何としてでも外の世界に行けるように努力を尽くす。

 それから、外の世界に出るための試練では、長老の策略と不良の余計なひと言によってピンチに陥ったクラピカだが、パイロの機転によって見事に試練をクリアしていよいよ冒険に出かけることになった、と。


 さあ、これからHUNTER×HUNTERの始まりだ!!ってことには残念ながらならないんですよね。
 ラストの一ページで明かされた事実。クルタ族が惨殺される過程は文字による説明でしたけど、それでもキツイと感じざるえない内容でした。まあすでに原作で語られているの予想はできていましたが、あの冒険活劇のスタートみたいなわくわくの物語を見せられた後だとやっぱキツイ。


 なにせ子供たちが見せしめで痛めつけられた挙句に親の前で殺されるなんて壮絶の一言。しかも、それは無残な死骸から推測されている事実だけなので、緋の目を赤くさせるためにはさらに残虐な行為があってもおかしくありません。互いに殺し合いをさせるとか、やり方は他にもまあ色々とあるので。

 
 しかし、犯人は幻影旅団であるとは書いてありませんでしたね。
 流星街のメッセージが残されていましたが、まだこの時代では幻影旅団が流星街出身であると知られていませんし。まあ原作からいって幻影旅団が犯行の一端を担っているのは明らかですが、実際にこの残虐行為に手を下したどうかはまだ不明というわけですか。そこらへんは映画に行けってことでしょう。
 

 個人的な感想をいえば、すべてが幻影旅団の仕業であってほしいです。
 というのも、ハンターハンターは勧善懲悪が希薄なのが面白いんですけど、だからこそ悪についてもっと掘り下げてほしいという期待からです。「目的を果たすために手段を選ばない」というのがときにはどれだけ凶悪になるのか、「血も涙もない極悪集団ではない」からといって残虐でないわけでもない、ってあたりを幻影旅団を通じて語ってほしいですね。
 


 で、話は変わって幼少期のクラピカについて。

 今でこそ違えど、ゴンと幼少期のクラピカはけっこう似ていますね。性格も、素質も。というか、このストーリー自体がゴンがくじら島を出発する最初のストーリーと一致する点があるので、意図的に似せているのでしょう。
 
 閉ざされた地域。外からの訪問者によって外の世界に興味を持つようになる。外の世界に憧れと目的を持って、保護者からの試練をクリアして出発する許可を貰う。と、大体の流れが似ています。
 
 まあしかし、数年後のクラピカがゴンとまるで違うようになってしまったが、なんというか切ないですね。もしハンターハンターを知らない人がクラピカ追憶編だけを読んだらクラピカを主人公と勘違いしそうなくらい、幼少時代のクラピカはゴンっぽいキャラだったんですが、それはもう昔の話。


 それと、ゴンの出発のときもそうでしたが、クラピカが出発するまでのストーリーの描き方は上手いと感心させられました。充実している環境からキャラクターが飛び出すときには、読者が納得できるようなそれなりの理由付けがあってほしいわけで、それが上手い。

 クラピカの好奇心旺盛さ、責任感の強さにくわえて、試練のパートナーとして友だちのパイロを選び、パイロを侮辱されると待ったなしでキレてしまう友達思いの性格が、前篇後篇でしっかりと描かれていました。「外の世界を冒険したい」という憧れと「パイロの目を治したい」という目的のバランスが、幼少時のクラピカの性格とうまく一致しています。



 ちなみに、個人的に気に入ったシーンは、不良Bが「そっから先は覚悟してしゃべれよ 命のやり取とりになんぞ??」と言って、そう言った不良の仲間が言いすぎたせいでクラピカにボコボコにされたのはなんか皮肉で面白かったです。不良Bの台詞は台詞だけだとカッコよかったんですがね。あとクラピカママがかわいかったです。なのに……。


 って感じで、続きの映画が待ち遠しいですね。0巻に収録されているという冨樫義博先生のインタービューにも期待してます。しかしながら、本編のほうがそろそろ読みたいのでマジで半年以内にはお願いします。

  
 ちなみに、ゴンが出発するときのストーリーの上手さについて詳しく解説されている素晴らしい記事を見つけたのでリンクを張っときます。→「『HUNTER X HUNTER』(冨樫義博/ジャンプコミックス)を今更ながら読みはじめる。」この記事のような視点でクラピカ追憶編を見ると、無難ながらも漫画としての上手さを感じましたね。



 オマケ。シーラが持っていた冒険活劇の本はおそらくマンガだったらいいなーと思いました。まさしくハンターハンターのような漫画をみて憧れたってエピソードだったら夢がありますからね。まあ以前に「ハンターというのは漫画家の象徴である」という考察を書いて批判が多かったのでそうだったらいいなーくらいの話ですが。