HUNTER×HUNTERの記事。
コメントであった「チードルもやはりネテロの遺志を継いでいるのではないですか?」という意見をキッカケに思い付いたことがあったので書いてみます。
※最新巻の32巻の内容まで触れています。
まず、32巻を単行本で読んで初めて気づいたこと。
32巻の最終話で、ビヨンド=ネテロによる会長を彷彿とさせる力強い演説に、十二支んのメンバーの心が揺らいでしまうシーンがあります。※この記事の十二支んはジンとパリストンを除いています。
これは十二支んにとって重要なシーンだと思っていて、結論からいえば、このシーンは「そんなんだからお前らはパリストンにおちょくられたんだよ(ジン風に)」という意味があるように解釈しました。
十二支んはハンター会長選挙においてパリストンに完敗しました。このストーリーでは、ネテロ会長なき十二支んがいかに脆弱であるかが、パリストンにおちょくられることによって証明されることになりました。
さらに、ジンの「(今残っている四人のなかで)ネテロの遺志を継いでるのはパリストンだ」という台詞にあるように、十二支んはネテロに心酔しているものの単なる遊び相手に過ぎず、ネテロの遺志を引き継いでいないと言われていました。
要は、十二支んはダメじゃんって話。これが、ハンター選挙時の話。
じゃあハンター選挙後、十二支んがパリストンに惨敗してどうか変わったのかというと、残念なことに、十二支んはビヨンド=ネテロの演説を聞いた様子から察すると、相変わらず腑抜けているようなのです。
本来ならば危険人物として警戒すべき相手に、一部の十二支んは感嘆してしまっています。動揺してしまうのはともかく、号泣をするのはもってのほかですし、そもそも唖然としているようではビヨンド=ネテロと敵対する立場であることを考えると、十二支んの態度はあまりに頼りないように見受けられます。この緊急事態においてそんな様子では、パリストンを引き連れるビヨンド=ネテロの手のひらで踊らされてしまう姿は想像に難くありません。
まさしく、パリストンにおちょくられたハンター会長選挙の二の舞になってしまうでしょう。
しかし、「みんな」と言えども、十二支ん全員というわけでもなさそうです。
少なくとも、パリストンにこっぴどくやられたチードルは冷静に見えます。ビヨンド=ネテロの演説を聞いた直後の反応ではチードルは深刻そうな表情で、その次のページでも映像に釘づけになっておらずに、その後にすぐ自分のやるべきことを毅然として実行しています。心は揺れているでしょうが、心が揺れているだけに留まっていると。
これらのシーンだけで判断するのは強引とは分かっていますが、ハンター選挙でパリストンによって「教育」されたチードルは以前のままではないと私は推測しています。いや、これは推測ではなくて期待になりますね。
なにせ、ネテロ前会長に通じる素質を兼ねそなえたビヨンド=ネテロ、そしてパリストンと対抗するためには、ネテロ前会長の遊び相手に留まる十二支んのままでは明らかに力不足で、ジンやパリストンのような「ネテロ会長の遺志を引き継いだ」存在になるか、もしくはそれを超える必要がありますから。おそらく。
とすると、十二支んのなかで期待できるのはチードルしかいないように思われます。少なくとも、スポットライトを浴びているのは彼女のみですから。
そもそもがハンター選挙編は、最強のパリストンを登場させると同時に、その宿敵としてチードルを成長させ、ネテロの遺志について自覚させるための側面がありました。パリストンがチードルにハンター会長の座を譲り、チードルがジンとパリストンの脱退を承諾したストーリーからも察するに、今後のチードルは生前のネテロ同様に十二支んを引っ張っていく存在になる筈です。つまりは、ネテロの意思を引き継いだ存在になるということです。
というのが「チードルもやはりネテロの遺志を継いでいるのではないですか?」といったコメントから思い付いたことでした。
ちなみにその発端の内容がこちら。
ビヨンドはネテロと同様に、リーダーたる素質を持ったキャラクターと見受けました。ただ、その素質は少しだけ違う点がある。それは、ネテロ会長は「オレに付いてこい」という信念で、ビヨンドは「オレが連れていく」という信念であること。どちらが優れているということではありませんが、ネテロが「オレに付いてこい」といっても、当然ながら付いてこれない人がでてきます。一方で、ビヨンドの「オレが連れていく」は、そういった人を受け入れることになります。基本的には、ハンターたちは能力があるがゆえに個人主義が多いようなので、ハンターたちにはネテロの信念に対しては相性がよく、ビヨンドの信念には対しては抵抗があるように思います。そこで、ジンとパリストンを除いた十二支ん、彼らはネテロの遺志を引き継いでおらず、むしろ「連れていってほしい」と願っているキャラクターと認識しているので、ビヨンドの求心力のある演説には相当に心を動かされたと思いました。
色々と書きましたが、私の推測がハンター選挙時にチードルはネテロの遺志に自覚的ではなかったが、その後は自覚的になったというものなので、コメントの疑問への答えはイエスです。ハンター選挙時はどうかと言えば、これまた微妙ですが、ハンター選挙後は大丈夫そうです。コメントを返答するときに上手く説明できなかったのでその解答として。まとめると、私はチードルに期待していますって内容です。
ネテロ会長の遺志について
さらに補足として、そもそも「ネテロ会長の遺志」とは一体何?という疑問に対して語っていきます。以前に「ハンターハンター パリストンとネテロについての考察」で長々と書きましたが、いい機会なのであらためてまとめます。その内容は、世界観の考察にさかのぼります。
ハンターハンターの世界では、遊びを共有できるのが仲間であり、遊びを提供できるキャラクターが良いやつとなる。その視点だと、人権を奪われて悪意をまき散らす合理的な思考を持つジャイロは、遊びの天才であるゴンの対極にいる存在であるがゆえに、作中では「ゴンとジャイロが運よく出会うことがなかった」という宿敵のような描かれ方をしたということ。その意味ではヒソカ、ゲンスルーなどの相手はゴンにとっては「敵」ではない。
さらに
ハンターハンターの作中では「ゲームを楽しむ」というのが重要なテーマとなっており、その世界観ゆえに、キャラクターたちをは「どこまでゲームとして楽しむかというスタンス」、「どのようにゲームを楽しむかというスタンス」というモノサシによって分類することできます。そして、このモノサシによってパリストンとネテロは似た素質を示すのです。
と、ここまでが世界観の考察になります。
このモノサシでハンター会長選挙を振り返ると、
すでに「どこまでゲームとして楽しむか」という段階で、「チードル」と「パリストンおよびネテロ」は区別されることになります。ジンに指摘されたようにチードルはハンター会長選挙を楽しんでいませんし、そもそもこの選挙を「ゲーム」と見なすことにさえ抵抗を持っています。一方のパリストンはハンター会長選挙をゲームのように遊んでいる姿が見受けられます。
で、「ネテロ会長の意思を継いでいる」ことに関しては、ここから先が重要になります。
パリストンとネテロは「遊びを創作する」という点において一致します。
パリストンはハンター選挙におけるルール作成と、結局は曖昧になった半獣人たちを利用した計画。一方のネテロは娯楽性の高いハンター試験の率先と、遊び相手となる十二支んの結成などが具体的な内容です。
で、ここでやっと結論になるのですが、そうして「遊びを創作するソロプレイヤー」というのがパリストンとネテロの共通点になるのです。ネテロの意思を引き継ぐということは、要するに、「あらゆることをゲームとして楽しむことができて、さらには遊びそのものを作りあげる」ことで、それがハンター会長の資格になるということではないでしょうか。
これに関しては「ネテロ会長の遺志」について理解しているジンもまた二人と同様の分類になります。
ジンといえば、伝説のゲーム「グリードアイランド」の創作者であり、たった一人で奔放に生きているキャラクター。そのジンは二人と同じ立場だからこそ「今残ってる4人で前会長の意思を継いでいるのはパリストンだけだ」という発言ができたのだと推測しました。
これは決して「遊びそのものを作りあげる」からリーダーの素質があるというわけではなくて、「遊びそのものを作りあげる」ほどにみずから率先してゲームに参加する姿勢が素質になっているという話。ただ受け身で、後手に回ってはリーダー失格ということです。
以上。
チードルにはパリストンの宿敵になれるように頑張ってもらいたいですね。
32巻の表紙には、あえて十二支ではない猫が描かれていて、これはパリストンを倒すのが十二支んではない存在を示唆している、という意見を見かけました。確かにそれっぽいんですが、しかしながら、私としては是非ともチードルにこそ活躍してパリストンと善戦して欲しいですね。まあそれがなかったとしても、今後のカギを握るキャラクターであることは間違いないでしょう。
ってことで、連載再開に期待しつつ記事を終わります。