THE BACK HORN、インディーズ1stアルバム全曲ライブ
ということで、1stアルバム「何処へ行く」の1曲目「ピンクソーダ」のレビュー。
以前のレビューが気に入らなかったのであらためて書き直し。
この「ピンクソーダ」がTHE BACK HORNの記念すべき一曲目になるわけですが、この曲は要は「そんな僕はこの街を愛してる」けれども「こんな世界なんて爆弾で吹きとばしてちまえ」ってわけで。ここ数年のTHE BACK HORNしか知らない人が聞いたら途惑ってしまうほどに初期は暴力的で無秩序なのです。
暴力的なファズのギター、ぐちゃぐちゃになりながら叫ぶ散らすボーカルは、まさしく初期衝動。「ピンクソーダ」というタイトルからすでに怪しげな輝きを放っていて、その世界観は色欲と食欲と金銭欲に溢れた猥雑かつ退廃的。
かわいそうだなんて言わないで
お願いだ 泣かないで
当時の山田将司の荒々しいボーカルは見事なもので、わめくとかがなるとかの言葉が相応しい荒れっぷり。サビの歌詞だけを読めばスウィートな感じですけど、実際は苦しそうに呻いていますからね。さすが怖いものなしのインディーズ時代、喉がイカれるんじゃないかってくらいに無茶苦茶にがなりまくっています。
演奏陣はお世辞にも上手いとは言えませんが、ファズ一辺倒の獰猛なギターサウンドと、不穏なグルーブを不安定に生みだすリズム隊はそれなりに強烈。アクの強いボーカルと混ざり合った禍々しい初期衝動が存分に味わえますね。
「ピンクソーダ」では不安とか苛立ちとか感傷とか肉欲とか、生々しい感情が遠慮なく吐き出されていて、それがどうも禍々しかったり不穏になってしまうのがたまりません。
なりふり構っていられない生きづらさが込められていて、それはのた打ち回っている光景が目に浮かぶほどに切実なもので、「若さ」という言葉では簡単に片づけたくない切実なものです。それに加えて色欲などの欲望が滾っている生々しさはむしろ「若さ」ならではの魅力でしょうね。
現在と方向性こそは大いに違えど、生と死に向き合っているのは相変わらず。
しかし、「ピンクソーダ」は若さゆえにこらえ切れずに潰れそうになっていて、そこらへんのどうしようもなさが個人的にはグッときます。純粋といえば純粋なのだけど、猥雑かつ獰猛ってのがいい。もういっそのこと爆弾で吹きとばしてくれって感情にも共感してしまいます。リヴスコールというアルバムがある今だからこそ、「何処へ行く」と、その一曲目の「ピンクソーダ」は感慨深いと感じました。
ちなみに、私は「ヘッドホンチルドレン」でバックホーンにハマってから「何処へ行く」をさかのぼって聞きましたが、まあ驚きましたね。でも、すぐにハマって今では大好きなアルバムの一つです。ぐちゃぐちゃになりたい気分のときによく聞いています。あと、ピンクソーダで検索したらニューハーフゲイバーが出てきたけどそれは多分関係ない話。ピンクソーダは売り切れた。
歌詞
夜を写す蝶の羽