単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

きのこ帝国 × bloodthirsty butchers  「official bootleg vol.027」 @渋谷O-nest 13.1.20


 きのこ帝国とbloodthirsty butchersの対バンを見にいってきました。
 
 
 この日は急遽予定が空いて、以前からどちらのバンドも「ライブを見たほうがいいよ」と聞いていたのと、それになんといっても、きのこ帝国とbloodthirsty butchersの組み合わせってのは、それぞれシューゲイザー系統の轟音とオルタナ系統の轟音で、この対バンは相当面白そうだということで参加することにしました。

  場所は、渋谷O-nest
 近道をしようとしたら案の定迷ってしまい、ホテル街で迷子になりつつやっとのことで到着。どうにか開演前には到着できたので一安心しました。渋谷O-nestは木目調のフロアでこぢんまりとしたいい雰囲気のライブハウスでした。

きのこ帝国

 最初に登場したのはきのこ帝国。 

 噂では聞いていたけど、ここまでライブで映えるとはと、初っ端から圧倒される。
 シューゲイザー系統の充満していくような轟音の中にどことなく繊細さがあり、それが耽美だったり不穏だったりと印象がガラッと変化していって。それが淡く儚いボーカルと調和していて、なんともいえない心地いい音像になっていました。新曲かつ一曲目の「ユーリカ」からその並々ではないポテンシャルが伝わってきて一気に引き込まれました。


 原曲の再現度が相当はもので、アクセント的なピックスクラッチさえも完璧に再現されているレベルの完成度。それに加えて、揺れ続けるサウンドスケープはライブでは迫力が何倍も増していてダイナミックで、「ライブで聞いてこそ」というのはまったく偽りがなかった。そして、ライブで感じたのは、感情の機微が読み取れるほどに透き通っているボーカルと、精密に渦巻くシューゲイザーサウンドの相性はとてもいいものだと確信。


 ギターのあーちゃんさんが終止ニコニコして弾いていて一方、ボーカルの佐藤さんが厳しい顔つきで歌っていたのはいい雰囲気でしたね。


 個人的に聞けて満足したのが「WHIRLPOOL」。「いつか殺した感情が渦になる」という歌詞のように、狭いライブハウスに轟音が渦巻いていて、それに取り込まれていく感覚はぞくぞくしました。リズム隊のグルーブ感も安定していてときには迫力があるものだったりとまったく隙がありません。

 特に印象に残ったのが「夜が明けたら」。感情の蠢きがダイレクトに伝わってくるほど、歌声に気持ちが込めているように感じられ、終盤の圧巻の轟音サウンドを聞いていたら切なさが込みあげるくらいに響きました。静謐な音像ながらも破壊力は抜群ですね。この曲かは覚えていませんが、途中で佐藤さんがアンプのボリュームを上げて、意表を突く爆音のフィードバックギターノイズを響かせたのはかっこよかったです。
 
 
 きのこ帝国は噂どおりにライブバンドでしたね。新作のアルバムは一発撮りのようですが、それが必然に思えるほどの技量を持っていました。このバンドは新曲が出るたびにライブでどう表現するか聞きたくなるバンドかもしれません。「ユーリカ」がすごくツボだったのでアルバムにも期待してます。

bloodthirsty butchers


 そして、bloodthirsty butchersの登場。

 最初の「Jack Nicolson」からエモーショナルな轟音で、一曲一曲の密度が濃いステージング。きのこ帝国が静謐な轟音とすれば、bloodthirsty butchersは激情の轟音。楽曲が矢継ぎ早に繰りだされて、その度に会場がどんどん熱気に包まれていっていました。


 それにしても、情緒的なギターノイズの洪水は本当に心地いいものですね。
 吉村さんの素朴な歌声と轟音に酔いしれていました。時おりのひさ子さんのギターソロも、よくある表現のようにギターが泣いているようでいいものでした。感傷的な気分にどっぷりと浸れるだけでなく活力を貰えるライブでもありましたね。ちなみに、MCは一切なくて、曲の合間に「これしかできねえんだよ」と呟いていたのが記憶に残っています。


 個人的に聞きたかった「方位」ではドラミングの迫力に引き込まれつつ、屈強なバンドアンサンブルを堪能。否が応にもエネルギーが沸いてくるような、熱くて温かい演奏だったかと。「lucky man」のときは吉村さんが楽しそうに何度も手を上げていたのを覚えています。好きな曲だったことにくわえて演奏も伸び伸びとしていてとても熱かった。


 知らない曲も多かったのですが、どの曲もノイズ指数が高いギターサウンドが炸裂していて圧倒されていましたね。爆音のフィードバックギターに心を奪われつつも、強靭なドラムを始めとする骨太のリズム隊も聞きごたえがありました。演奏前の吉村さんのアドリブ的なギターストロークもこれまた良かった。轟音に浸っているとシンプルなギターの響きさえもいいものだと。


 ちなみに、アンコールの後で、吉村さんにバースデーサプライズとしてケーキが登場しました。その前にはBGMに合わせてセクシーなダンスをするサービスもあったり(笑) アンコール後も、最後の瞬間までストイックに轟音を鳴らし続けるステージングで、見て聞いているだけでもう満足できるものでした。なんというか、いつまでもあのアウトロが鳴りつづけて欲しい気持ちになったくらいのライブでしたね。

 あと、ステージからメンバーが去るときに、きのこ帝国のあーちゃんさんがステージ袖で、感極まった表情でメンバーに挨拶していたのはいい光景でした。
  

感想

 何度も轟音について書きましたが、この日のライブの肝はやっぱり轟音だったかと。
 それぞれの記名性に富んだ色彩豊かな轟音を、これでもかってくらいに浴びることができたので心から満足です。どちらのバンドもこれが初めてのライブだったこともあって、基本的に私は圧倒されつづけていました。そのせいであっという間の楽しい時間になりました。そもそもが吉村さんがきのこ帝国に涙腺が刺激されたようで実現したライブイベントだったようです。


 それと、やっぱりこのバンドの組み合わせは素晴らしかった。
 実は、去年のbloodthirsty butchersの「血に飢えた四半世紀ツアー」でクガツハズカムがオープニングアクトで登場したということを知って、いつかこの両バンドの対バンを見てみたいと思ったこともあったので、そういう意味でも嬉しかった。

 きのこ帝国の精巧なサウンドと、bloodthirsty butchersの無骨なサウンドってのが、それぞれの魅力が浮き彫りになるようなドラマチックなステージで、轟音に酔いしれる素敵な一夜になりました。急でしたがあらためて参加してよかったです。