Syrup16gの曲レビューその29「もったいない」
長い前置きはエクスキューズなので飛ばしてもらっても構いません。
※書き終わってから内容に納得できなくなったのでそのうち書き直します。Syrup16gの曲って一つの価値観に留まっていることってめったになくて、かりに悲観をテーマにしてもそんな現状に苛立っているとかの含みがあると思っているんですが、このレビューはそんなのガン無視してただ一つの側面でを強調しているだけで、そこらへんの含みを汲み取っていませんでした。そもそも空っぽについて執拗に歌っている時点で、それがそのまま空っぽというわけがなくて、この曲にはそんな状況に対する不快さもあると思うんですよ。そこらへんをいつかレビューに書き足します。全てを汲み取ろうする必要はないですけど、「もったいない」に関してはもったいないと言われる状況、それに対する感情までが大事だと思うのでやっぱり書き直します。つーか、このレビューはなんか良くない。いつもそれなりに内容に後悔はありませんが、今回はかなり後悔しています。正直書いていても全然楽しくありませんでした。いつもはすっごく楽しんで書いています。これは良くないことです。
前置きは以上です。
Syrup16g全曲レビューその29「もったいない」。
一つ言うなら、虚無。
悲しくもない、何もない、反省もしない、後悔はない、感傷もくだらないと、まさしく虚無そのもので、これは空虚と言い換えてもいいけど、どちらにしても価値とか意味とか感情とかその他諸々がごっそりと抜け落ちてしまったからっぽの感覚そのものなんです。
「もったいない」ではからっぽの感覚が生々しく、そして痛々しく伝わってきます。
虚無感は賞味期限が短い生ものの感情(と思っているの)ですが、それを低温で歌い上げてダウナーサウンドに浸して曲としてパッケージング。
Syrup16gの曲の多くが負の感情を取り扱っていると思うんですが、この「もったいない」ではもはや負の感情すら突きぬけてしまって、ひとつの極点に達してしまったような気がします。喪失のその先の先。正確にいうならば、突きぬけているわけではなく抜け落ちてしまって、なんですが。
あまりにからっぽすぎて、もはやホームセンターで紐を買うことも駅のホームに行くこともせずに、そのまま腐って朽ちてしまうんじゃないか、ってイメージが浮かびました。それくらいの切実さを感じます。私が「もったいない」を聞いて感じるのが、何度も書いてますがこの虚無なんですよね。説明が難しい、からっぽの感覚。
何もせずに過ぎていく
からっぽの部屋
からっぽになったMyself
何のために生きている
この曲、なんだかんだでHELL-SEEの中でも相当にキツイ部類だと思っています。虚無というのは、苦痛や憎悪などの負の感情に比べると感情の量的に少なく、言い方によって地味で味気ないものです。でもだからこそ、共感や理解をもって救われることも少なく、この感情を処理するのも難しくてヤバいものだと私は思っています。
さらにいえば、「もったいない」はからっぽであることを表現しつつ、楽曲としてもダウナーな轟音サウンドの心地よさがあるのがたまりません。虚無の切実さと音楽の快楽が共存しています。いつものグッドメロディーに比べるとこの曲はちょっと味気なさを感じますが、この曲に限ってはその味気なさが魅力に感じますね。いつもはそう気に留めない曲なんですが、たまに猛烈にグッとくることがあるんですよ。ほんとこういう曲は好きです。最近ずっと聞いている。
もったいないない
もったいないかい?
もったいないなら 変わって
そして、タイトルでもある「もったいない」という言葉は、ざっというならば素質を活かしきれていないとか、価値あるものが捨てられているとかの意味で、その言葉が人に向けられるときは「もっとちゃんとできるだろうに」とほぼ同義。サビで何度も「もったいない」と繰り返して、その言葉を「もったいないなら 代わって」と皮肉で返して、「もったいないかい? そこに居ないならわかんねえ」と端から拒絶しているのも、そこまで達していると相当にキツい。
HELL-SEEの収録順でいうと、「もったいない」は「正常」の後なのでやや埋もれがちなんですが、たまに「もったいない」がどうしようもなく心を揺さぶられることがあったのでレビューすることにしました。つーか、この曲が「HELL-SEE」の中ではそう目立たないってのが、あのアルバムがいかに濃いかってことですよね。
虚無と繰り返すだけでぼんやりとしてしまった記事ですが、私にとっては大げさではなくてこういう曲なんです。その「こういう」がどうなのかよく分からないって話になんですけどね。逃げるような言葉になってしまいますが、ほんと言葉にするのが難しい曲でした。
もったいないとらんどの国、日本で生まれたダウナー曲の至高の名曲でしょう。 ====
歌詞
悲しくはない