単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

クリープハイプ「秋、零れる程のクリープハイプ」  @Zepp Namba 13.11.24

  
 最初からズルいくらいグッときました。

 照明が暗転し、メンバーが全員ステージに出てきて尾崎世界観さんが「昔大阪でライブをしたときに取り置きをしている人が一人だけしかいなくて、いつもその人の名前を書いていて一人では気まずいから他の人の名前も書いてて。今日はその人からメールをもらって来てくれるそうです。整理番号1142(適当)ってなんやねんってメールに書いてました。ここには2500人ぐらいいるそうです。この日を待っていました。」
 そうぼそっと呟いてからカラフルな照明の中で「愛の標識」のイントロが鳴り響いてライブが幕を開けました。


 この導入は本当にグッときましたね。それはもうズルいくらいに。
 ほとんどのバンドが下積み時代があるでしょうが、10年以上の長い下積み時代とメンバー全員脱退などの紆余曲折を経て今一気にブレイクしつつあるクリープハイプがこのエピソードを語るのは、なんというか卑怯なくらい効果的でしたね。しかも、その後の「愛の標識」のイントロのギターリフがこれまたカッコいいんですよ。

 
 正直な話、クリープハイプのライブは以前に参加したとき痛い目にあったので不安があるなかで今回参加しました。でも、そういう杞憂がすべて吹っ飛んで、心の底から素晴らしかったといえるライブでした。

 こんなに心が揺さぶられて釘づけになるなんて思ってなかったです。思い出深いライブになったので余韻があるうちに感想を書いていきます。MCはうる覚えなのですべて意訳。今さらですがセトリのネタバレに注意。

ライブ

 しつこいですが、MCからの「愛の標識」の導入は半端ではなくグッときました。ここまできたことをステージで証明するようにキラキラしたギターのイントロと色鮮やかな照明演出の時点ですでにクライマックス感があるほどに。いきなり最高潮でしたからね。ちなみに、君の故郷のあの銘菓は串カツでした。

 「愛の標識」のギターを残響させながらつづけて「ウワノソラ」。「大っ嫌いです」と食い気味に歌い上げるのが実にたまりませんね。これをライブで聞くのは二度目だったんですが、この日は照明の効果もあってか格別でした。もうこの時点で来てよかったことを確信。

 そして、「左耳」。この曲では、ミラーボールに乱反射したキラメキが会場一杯に映しだされていて、ちょっとした歓声が上がっていました。次は立て続けに「手と手」と息つく間もなくキラーチューンの連続でした。序盤から演出も演奏も絶好調だったので序盤なのにすでにライブに参加してよかったと感じていました。



 で、個人的に最も盛り上がったのが、「身も蓋もない水槽」と次の「社会の窓」。
 「身も蓋もない水槽」では抑制気味にぼやきつつ、後半になると一転してまくし立てるのが痛快で、そして曲のラスト二小節をぶつ切りにして、立て続けに「社会の窓」のギター・ストロークをじっくりと繰り返してからリズム隊が参入する演出にはやられました。私は「社会の窓」が一番好きな曲で、その曲を最高の演出をもってして聞けたのが大満足でした。カオナシさんのフッフッフーというあのコーラスもナイス。それにどちらの曲も演奏がキレッキレで、特にドラムのフィルの迫力は相当なもんでしたね。
 

 このライブは演出が凝っていました。
 特に中盤の「ウワノソラ」では、曲間に観客が「サントリー」と声をかけていて、それに対して尾崎世界観さんが「サントリーは友達みたいなノリで呼ばれて舐められてるよ。舐められないようにギターを弾いてやれ」とそそのかし、小川さんがジャジーなフレーズを弾いて「グレーマンのせいにする」がスタート。さらに、曲が始まるとステージの暗幕が開いてスクリーンが登場し、絵の具が混ざり合っているような、水の上に浮かんだ油のような映像が映しだされていました。演出のおかげで、雰囲気も文句なし。


 その次の「傷つける」は過去のPVを組み合わせた映像をスクリーンに流していて、アコースティックギターから始まって言葉を噛みしめるように丁寧な弾き語っていたのが印象に残っています。しんみりと聞き浸っていました。最後にささやく様に歌い終わったのもこれまたよかった。この曲、破壊力が相当なんでさっきまで熱狂していた会場が一気に沈静化してましたね。


 なんかMCから曲に繋げるこういう演出ってわりとベタですけどやっぱり盛り上がりますよね。
 「マルコ」でも世界で一番好きな犬の曲をと、「ラブホテル」でも「大阪って暑いねーどうして?」と繋げていました。私はオルタナティブに振り切った曲が好みなんですけど、こういったポップでメロディーがいい曲も悪くありません。


 さらに、カオナシさんがMCで「フィギュアを店着日にアウェーの雰囲気の店で買いましたドヤ(超要約)」って言って、それに対して尾崎さんが「そのドヤって気持ちをベースで表現してよ」と煽ってからの、「HE IS MINE」。これ、カオナシさんが「ぬいぐるみだけがあるオモチャ屋に行って」という言葉に尾崎さんが「大人だけのおもちゃやもあるよ、カップルだけがいくオモチャ屋」とチャチャを入れていた流れもあって、イントロが鳴ったときの歓声は一際大きかったです。何もせずとも盛り上がる曲なのにこの前フリ。

 
 
 演奏に関しては、色気があるギターのチョーキングは聞き応えありました。「かえるの唄」と「週刊誌」のギターのチョーキングは相当かっこよかったです。「かえるの唄」も「週刊誌」もギターソロも含めてギュンギュンと唸らさせていて、私にとってはあのギタープレイあってのクリープハイプですね。

 それと、「週刊誌」は実はずっと聞きたかったのでわりと嬉しかった。サビに入るときの「クゥーリスティ―ナ」と声を溜めるのが好きで、このライブでも期待通りに最高の溜めっぷりを聞くことができました。さらに、「あ」のヤケクソ感があるバンドアンサンブルはオルタナバンドとしての魅力が詰まってました。途中のしんみりとしたパートで緩急付けるあたりもさすがのもの。

  
 「NE-TAXI」はこんなにいい曲だったのかとあらためて魅力に気付きました。ディレイする空間的なギターサウンドの心地よさと哀愁溢れる歌詞とメロディーの切なさがグッと伝わってきましたね。あらためて好きになったといえば「オレンジ」も。オレンジ一色に包まれる照明のなかで、「あのオレンジの光の先へ」って聞くのは格別ですね。先に進もうという確かな意思が伝わってきました。


 それから「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」は、この曲のドラムが本当に好きで。特にスネアの音が気に入っていて、この日のライブはまさに私が好きなドラムの音でした。というか、クリープハイプのドラムは所々で強烈なフィルを混ぜてくるのが好きですね。並々でない存在感。しかし、「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」もドラムかっこいいなーと思って聞いていたら、「さよならー」とエコーをかけて激しく歌い上げるのに耳を奪われて一気に歌に引きこまれました。
 
 
 演出のクライマックスといえば、「さっきはごめんね、ありがとう」ですね。本当にいいライブだったなーこの曲もいいなーと終わる前から余韻に浸り始めていたときに、ラストのサビで金テープが打ち上げられて降り注いだ演出にはトドメをくらいました。ああいう演出、実は初めて見たのもあってかけっこう感動しました。

  
 さらにアンコールの、カオナシさんのバイオリンと弾き語りの「自分の事ばかりで情けなくなるよ」、「女の子」のラッシュでしんみりしてもうお腹一杯なところに、ダブルアンコールで登場、観客が「ありがとう」と嬉しそうに言ったことに対して尾崎さんが「嬉しくてちょっと泣きそうになった」と言ったりしたMCの後に、「イノチミジカシコイセヨオトメ」でラストの盛り上がりをみせて終了しました。この曲で駆けぬけて終わったのはじつに良かったと思います。最後までひたすら素晴らしかったえす。
 

感想

 
 やっぱり印象に残っているのは演出の素晴らしさですね。MCからのオープニング、照明、スクリーン、演奏への導入、ライブならではの楽曲構成、金テープなど演出がサービス精神に溢れていました。「オレンジ」ではオレンジの照明に限定していたりもしていました。こういう演出にこだわるのっていい取り組みだと思いますね。たださえ魅力的な曲を最高の形で届けようとするプロ意識をひしひしと感じました。

 それと、ドラムを筆頭にしたバンドアンサンブルのカッコよさたるや。ギターのチョーキングリフはマジで惚れ惚れしますから。声や歌詞の魅力は置いといて純粋にオルタナバンドとしても私は好きなんですよね。ライブになると演奏が残念なバンドも中にはいますが、クリープハイプはライブで真っ当にビルドアップした演奏を聞けます。


 余談ですが、四つ打ちになるときに手拍子が起こっていたのが面白かったです。手拍子もたまにタイミングとかで問題になることもありますけど、今回のように「四つ打ちのときは手拍子!」と決めていれば問題なさそうとか考えていました。また、四つ打ち=手拍子になるくらいにドラムがしっかりノリをコントールしているって話でもあります。ドラムがあんなに存在感があったとは知りませんでしたね。ちゃんと曲を聞き直さなければ。


 最初コインロッカーに金を払わずに荷物を置いているのがけっこうあって暗澹たる思いで会場に入って、始まる前までは以前のようにひどい目にあってしまわないか心配していましたが、一番後ろにいたからか終始ずっとステージに集中することができて、目いっぱいライブを楽しむことができました。まあそうなればライブが良くないわけがないんですよ。というか、一番後ろからみたらこれ以上ないってくらいに理想的な盛り上がり方をしていたような気がしますね。観客とのやり取りもほのぼのしました。特にダブルアンコールのときとかね。不満はなく、満足だけです。
 

 もうさっそく次も行きたいとか思ってしまっていますね。最高でした。

セットリスト

01.愛の標識 
02.ウワノソラ 
03.左耳 
04.手と手 
05.マルコ 
06.週刊誌 
07.リグレット 
08.NE-TAXI 
09.グレーマンのせいにする 
10.傷つける 
11.HE IS MINE
12.あ 
13.水槽 
15.ラブホテル 
16.かえるの唄
17.オレンジ 
18.おやすみ泣き声、さよなら歌姫 
19.憂、爛々
20.さっきはごめんね、ありがとう

en1
21.自分のことばかりで情けなくなるよ 
22.ラジオ(新曲) 
23.女の子 

en2
24.イノチミジカシコイセヨオトメ

  
 このセットリストは同ツアーの違う会場のですが、あやふやな記憶によると大阪も同じだったと思います。もし違っていた分かり次第訂正します。