単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

阿部共実の「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらい(略)」の7話もやはり面白い

 
 web上で連載している、阿部共実「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」の第7話が面白かった。その面白さがこの作家ならではと思ったのでその魅力について書きます。

 ↑リンク先。ネタバレあるので先に作品を読んでからのほうがいいかも。


 前作の「空が灰色だから」はハートフルからホラーまで何でもありの心がざわつく短編でしたが、今作の「死に日々」は不穏なタイトルとは真逆で心がほっとする短編がほとんどです。

 しかし、前作同様に自意識過剰をこじらしていたり神経質だったりするキャラクターがたくさんいたり、第2話の「ある暑い陽のお話」のように途中までラブコメをやっといてラストでハートブレイクさせる短編もあったりして、相変わらず最後の一ページまで油断ならない作品になっています。


 おれが阿部共実の魅力の一つと思う、最後の一ページまで油断することができないところが「死に日々」の第7話でもあって、気持ちよく裏切られました。身も蓋もないバッドエンドを迎えることも多々あるから、今作はその方向かなと思って、「これはせつないな」とか、「普通ならここで本当はそうじゃないとかなるんだけどこの人だからこのままか」と思ったんですが、その予想は外れてハッピーなエンドでした。文句を言いあうくらい仲がいい幼馴染がいて、ついはずみで文句を言いすぎてしまって嫌われるなんて展開もあったので、今回もそうだと思ってしまった。 

 
 要は、おれが深読み過ぎたせいで一周してよくある展開だったのにビックリしたって話なんですが、この作家の作品を読んでいるとそういうことがよく起こります。

 これがラブコメなどの前提があればおれはそんな邪推はしません。でも阿部共実ならこれでエンドもやりかねない、と思って身構えたらこのあり様ですよ。webという媒体上、続きがあるかどうかはパッと見では分かりませんし、あれページがまだ続くのか?と思ったら逆転ハッピーエンドになったってわけです。 あとみんなの感想をみてたらハラハラしていた人はそれなりにいました。


 (展開だけなら)よくあるラブコメでさえも一種のトラップになりうる、というのはおれは相当この作品を楽しめているんじゃないかと感じました。それと、バッドエンドかーとしんみりした後にハッピーエンドにひっくり返るときの気持ちは相当いいもんです。深読みしすぎて空回ったりそのままで肩透かしになったりするのも面白い。緊張感あります。


 そんなこんなで、おれは一般的なラブコメにも身構えてしまうほどこの方の作品にハマっているんだと感じた出来事でした。「死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々」もやはり面白いです。