単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

ハヌマーン「ポストワールド」の解説、又は新世界周辺の観光日記


 「虚空を怒鳴ってる老人と 聞こえないフリの観光客と 読んで字のごとく広告塔 貸し春屋の招き猫の声」

 ってのはハヌマーンの「ポストワールド」というサビのフレーズ。この曲は大阪府にある新世界およびその周辺地区をテーマにしている。新世界は、日本最大のドヤ街があるあいりん地区と、日本最大の遊郭がある飛田新地に隣接している。「ポストワールド」はタイトル通りにこの土地をテーマにしており、とんでもないレベルで写実的に描写しきっていると思う。

 とそんなことを書くのだが、おれは余所者でとくに新世界になじみがあるわけではない。それでも興味がある地域で何度か足を運んだことがあるし、インターネットでよく旅行体験記などを読み漁っているからそれなりには詳しいと思う。あの土地を知れば知るほど、ハヌマーンの「ポストワールド」はすばらしいと思うし、風景描写・故郷描写の曲としてすばらしいと思うのだ。

 ポストワールドの歌詞のリンクがこちら。
 この曲は2000枚限定のアルバムに収録されているので今から入手は難しいけど、その歌詞だけでもすばらしいので読んでもらいたい。本当はサウンドあってこそなんだけど、動画はないので歌詞だけを取りだして説明する。もし気になったらオークションで3万円出して買うのもいいと思う。その価値が充分にあるアルバムだから。
 

 して、「ポストワールド」の解説か、はたまた新世界の観光日記かよく分からない文章を書いてしまったので、ここからはそれを掲載します。おれがスマホで撮影した写真付きです。

 新しい世界は動物園と物乞いと串刺しの畜肉を悪い油で揚げる匂い
 新世界の名物といったらなんといっても串揚げで、おびたたしい数の串揚げ屋が建ちならぶ。そうした串揚げ屋が集合地から東に少し離れたところに天王寺動物園がある。そのせいで新世界には飲食店の油臭さと動物園の生臭さが混ざりあった独特な臭いが漂っている。さらに路上生活者が徘徊していることもあり、その匂いが加わったときには顔が歪むくらいに強烈になる。

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 エレクトリックブランに酔って 白昼夢でも見てる気分 地下のポルノ劇場は男色家と狂人の巣窟
 串揚げには、アルコール。と、真っ昼間からでも酒気帯びた人々が多いのが新世界。そのほとんどが観光客でなかにはコンビニかスーパー玉手で買ったか知らないが安酒で酔っぱらった老人の徘徊者たちも混じっている。どちらも酔っぱらってはいるが、観光客か徘徊者どうかの見分けが容易に付く。

 新世界の東通りにはポルノ劇場がある。賑わっている大通りから少し外れたここは、人通りが一気に少なくなって二つほどポルノ劇場がある。迷い込んだ観光客が「ここは違うね」みたいな顔をして戻っていくのはよくある光景。おれはよく知らないんだけど大型掲示板にはその地下のポルノ劇場は男色家の巣窟で発展できる場所として有名と書いてあった。

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 虚空を怒鳴ってる老人と 聞こえないふりの観光客と 読んで字の如く広告塔と 貸し春屋の招き猫の声 
 
 サビ。名フレーズだとおもう。余所者のおれが思う新世界の異様さとは、相容れない地元住民と観光客がごったがいしていることだ。新世界には高そうなカメラを首にぶら下げた観光客と、ビニール袋みたいな服をぶら下げた路上生活者がいる。虚空を怒鳴る老人が、本当にそこらへんにいる。通天閣をまっすぐ南にいくと、スーパーボールという賭博場があるが、ここには観光客がキャッキャしながら遊んでいる隣で、黙々と打ちつづける手慣れた地元住民が同居している。

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 読んで字のごとく広告塔は、新世界のシンボルである通天閣のことだ。一目見れば説明は不要だろう。
 そして、貸し春屋の招き猫の声とは、新世界の南に位置する飛田新地のことである。飛田新地では、和作りの小さい家屋に客を招く老婆と春を貸す若い女が座っている。理由は知らないが、どこの家にも招き猫が置いてるある。その通りを歩いていると、老婆に必ず声をかけられることになるって、その光景を一文で表現したのが「貸し春屋の招き猫の声」というわけ。さらに、飛田新地は他と違って数十分で事を済ますサービスので、春を売るというより春を貸すという表現の方がしっくりくる、とおれは解釈している。

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 「二回漬けるのはいかんよ」って 店主と思しき初老の女性が 調味料の衛生面を口角泡飛ばして宣う
 
 串カツ屋の看板に絶対にある文言がこの「二度漬けは禁止です」ってやつ。無法地帯のような新世界においても徹底されているのがこのルールである。例外はない、らしい。とにかく絶対なので衛生面を気にして二回漬けする観光客をために唾を飛ばしながら注意することもあるんだろうがそれは本末転倒じゃないのかってこともあるのかもしれない。
 
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 絡まる運命の上、愛したり狂ったりする
 正体を見せろ化け物 あいにく正義は留守中
 借り物の春を済ませば You say good bye I say good bye
 
 と、ここまで写実的に描写していたが、ラストでは抽象的になっていくのが面白いところ。飛田新地で事を済ましたあと新世界に五時のチャイムの赤とんぼが響きわたる。曲ではラストに赤とんぼのメロディーが数拍子だけ弾かれてこれが効果的でまた切なかったりする。


 以上、解説してるのか日記を書いてるのかよく分からない文章でした。
 新世界周辺を散歩していて個人的に驚いたのが、飛田新地を小学生たちが自転車で通りすぎていったことだ。彼等がやってきた方を見上げたら、高級タワーマンションが立ち並んでいた。その高級タワーマンション飛田新地は、距離にすれば100mもないのだが経済的かつ文化的な断絶は途方もなく深い。文字通りの格差が視覚的に表現されていて興味深かった。あと、あいりん地区に虚空を怒鳴る老人がたくさんいることは知っているけど、じっさいにそれを目撃するとなかなか強烈なものがあった。余談ですが、おれはあまり肉と油を胃が受け付けないんだけどせっかく新世界に来てみたことだしと名物の串揚げを食べてみたらやっぱりその夜に吐きました。
 

 以下、もう少し写真がつづきます。

 以下、写真。
 
 お馴染みの50円のジュース。

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 露天商にも生きる権利がある…。

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 三角公園近くの警察署。強固かつ頑丈。まるで隙がない。

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 パチンコ店っぽいスーパーのアレ。
 
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 この日はさいごにアルバムのジャケットにも起用されている天王寺動物園のキリンをみてから帰った。

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