単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

「コンビニ店長が見た、地方と都市/田舎と都会」が面白くて格差が見えてくるのでオススメします


 たまにはこういうのも。

 むかしむかしあるところにMK2というブロガーがいました。彼はコンビニの店長をやっているブロガーで、卓越した文章力と慧眼と変態性で一部でひじょうに有名なかたでした。いまはもういません。今回紹介する「格差って、見たことあります? コンビニ店長が見た、地方と都市/田舎と都会」はそのMK2さんが書きおろした電子書籍です。
 
 すこし感想を書くまえに、MK2さんに関する私の話をします。私はMK2さんの文章にベタ惚れしていまして、あるとき彼に文章についてのアドバイスを求めたことがありました。いまは彼はブログもツイッターもなにもかも削除か停止していますが、以前はツイッターをやっていたのでそこで私が「私も文章がうまくなりたいです」というクソみたいな質問をしたのです。すると、MK2さんは10kbくらいのボリュームの文章で返信してくれました。それだけで私は喜んでバックアップを何度もとったくらいなんですが、その内容も充実していて、副詞の使いかたから始まりレビューの態度、はては注意すべき点などひじょうに参考になる内容でした。

 で、前置きが長くなりましたが、今回はそのすばらしいMK2さんが書かれた本を紹介していきます。書評とかではなくてただこの本はおもしろいよっていう紹介。

 この本はタイトルにあるように地方と都市の格差について書かれています。コンビニをオープンすると近所の年配がご挨拶にくるくらい超田舎に引っ越したことから始まる話です。そこでMK2さんはコンビニを経営していくわけですが、まあ様々ことが地方と都市では環境がまったく違ってくるわけです。その環境がどう違っているのか、なぜ違っているのか、その差異にスポットを当てて格差について語るのがテーマです。

 これ、いままで私は気づかなかったんですが、コンビニは同じチェーンでもその様相はけっこう違っています。まあ大体の品揃えは同じであることは多いんですが、例えばエロ本はコンビニによってあったりなかったりしますし、品揃えが同じでも発注の加減によってコンビニの様相はまるで変わってきます。コンビニってのは画一化されたシステムを基盤にして、現場の人間が売りあげを最大限に伸ばすためにいろいろなところで流動的に変化しているものらしいです。
 
 その変化のために必要なのが客の観察です。それはつまり、人々の生活を観察することでもあります。

 パート・アルバイトが主戦力で、ナマの「客」という人間の集合体の「日々の生活」を相手にしている。俺の仕事には為替相場は必要ありません。マクロ経済について理解している必要もありません。日々「人の生活」を血眼になって眺めて、その生活において必要とされるものを陳列しつづける。これだけです。
 俺の仕事はなんなのかと、問われれば、極論すれば「地域に住んでいる人たちの生活を血眼によって観察することそのもの」といえるでしょう

 で、まあこうした「趣味は人間観察です」の最終形態みたいな仕事をずっとやってきたコンビニ店長が地域と都市について語っていく、という本の内容になります。もうこの段階で面白そうとおもったかたはAmazonで266円なのでさくっと買いましょう。
 
 しかし、この本のおもしろさに関しては格差とか正直どうでもいいんですよ。いっちゃあなんですが、格差について学びたければもっとぶ厚くてタメになる本は他にあるとおもいます。いや、もちろんこの本もひじょうに参考になるし、田舎から都会に出てきたひとは多くのぼんやりとした気づきが言語化される快感を味わえるでしょうし、あまり知らないひとには生々しい格差があるってことに相当な衝撃を体験できるかもしれません。もう格差とか知っているよってひとにもコンビニを舞台に語られる格差に新しい気づきがあるかもしれません。でも、この本のおもしろさってのはそうした内容ではなくてですね、「めちゃくちゃ文章力があってめちゃくちゃ観察力に優れたひとが田舎でコンビニをオープンした起こった出来事」、そのドキュメントの部分がおもしろいのです。徹底的なまでに現場主義です。

 例を挙げると、コンビニを地方でオープンしたときの住民たちの反応が不思議な話とか、コンビニなのに近所づきあいが発生してめんどうくさいことになってる話とか。そういうのがいちいちおもしろいですよ。他にもこういうエピソードが何個かあって、コンビニの制服がかっこいいって理由でバイトに応募してくる高校生とか、とくにおもしろかったのが「都会に出たい」と地方を飛びだす賢い19歳の女の子とか。

 基本、なにかしらの具体的なエピソードがあって、それを解体していくことで「格差を見る」という内容です。その具体的なエピソードがおもしろいのです。それを私はとくにオススメしたいです。地方でコンビニを経営するってこんなことがあるのかって感じで。まあそういうことなんで私は格差がどうとか関係なくて、コンビニ店長の地方経営話としてこの本をオススメします。

 で、まあおもしろいおもしろいと書いてきたわけですが、この本で語られている格差は深刻なものです。解決策をいくら提示したところで当事者には届きえないと、現場に立ちつづけてきたからこその諦観が吐露されています。最後にMK2さんが「で、いまここで起こってることをどうすんだよ。」と苛立ちを表明するほどのものです。さらっと読めても内容は重いのです。

 この本は「格差がある」ことついて知ることができる本です。おもしれーって読んでいたら「格差がある」ことがこれ以上なく分かりやすく知ることができます。ただそのストーリーが面白いだけでなくてちゃんと格差がわかるって二段構えになっています。書評とかめったにしないのでなんか全然魅力を説明できていないんですが、とにかくおもしろいってことは強調しておきます。

 駄目だ、これほんとうに全然説明できてねえ。まあこういう電子書籍があるってだけでも書いておきます。

格差って、見たことあります? ~コンビニ店長が見た、地方と都市/田舎と都会~ (impress QuickBooks)格差って、見たことあります? ~コンビニ店長が見た、地方と都市/田舎と都会~ (impress QuickBooks)
MK2

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