単行のカナリア

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ハンターハンター No.341「災厄」感想/新世界編でのハンターと戦いの意味の変化(再掲載)


 以前に公開していた記事ですが、間違って削除してしまって、また再掲させてもらいます。

 すばらしいハンターハンターがついに連載を再開しました。再開一話目からしてもうめちゃくちゃすばらしかったです。だからといって、特にブログを更新するつもりはなかったんでしたが、コメントで楽しみにしていると言ってもらえたので、また以前のように感想と考察を書いていきます。
 

感想

  いよいよ新世界編が始まったばかりですが、もうこの時点でめちゃくちゃ面白い。ブリオンとかパプとか、さらっと新世界の災厄が登場しましたが、その一つ一つが凶悪すぎます。レベルEのバカ王子でさえも制作しようないような、どう展開しても劇的なストーリーになるのは間違いない、と予感させるに十分な敵でした。なんつーか、これはもうロマンですね。今後こいつらと対峙するのかって考えただけでも胸がワクワクしてきます。心理戦、肉弾戦ともに過去最高の盛りあがりを予感させてくれます。たった一話でこれって最高でしょう。

 そして、その導入も壮大なストーリーのイントロダクションに相応しく魅力的なものでした。新世界ではキメラアント編とは異なって国家規模の利害関係が絡んでいることがハッキリと明かされています。今度の冒険はキャラクターだけでなくその世界の人類にとっても未知の冒険なのです。まるで幽遊白書の後篇のようにかつてないスケールで展開していくことになるのでしょう。

 メルエムの登場による戦闘のインフレ、アルカの登場による能力のインフレの後で、この「まだここから」と期待させるストーリーは冨樫義博の凄さでしょう。 国家、組織を巻きこんでスケールが一気に広がっていく、その導入および演出もまたすばらしいですね。冒頭だけでああこれはすばらしい映画だなと確信するときに似た興奮があります。
 
 個人的に気にいったのが「平たく言うと?」 「誰も新世界へ行かせない」という台詞。その後の「厄災さ 開けてはならないフタがあく」 「比喩が何かで?」 「オレも若いころあからさまに笑ったよ ここにくるまではな…」って台詞もいい。こうしたウィットに富んだ会話と、その後の研究所の生々しい描写のおかげで、新世界という突如明かされた世界観のリアリティがさっそく立ち上がっていますね。読者からすればいきなり新世界が登場したわけなんですが、たった数話ですでに新世界の存在をすんなり受け入れられました。なのでもう期待しかしていません。正直なところ、アルカ編・ハンター会長選挙編よりもワクワクしています。30巻をこえてまったく新しい展開となって、それがとんでもなく面白そうとかたまりませんね。やっぱり冨樫義博は天才。

 あと、ビヨンド。公然の場で大言を吐きつつもしっかりと根回しもする、かつてないしたたかな強さを持ったキャラクターですね。舞台が違えば、小物扱いされるかもしれませんが、賢さが強さに転化するハンターハンターにおいては強敵になりそうです。以前に、「ビヨンドはネテロと同様に、リーダーたる素質を持ったキャラクターと見受けました。ただ、その素質は少しだけ違う点がある。それは、ネテロ会長は「オレに付いてこい」という信念で、ビヨンドは「オレが連れていく」という信念であること。」と書きました。で、冨樫義博はインタビューで「自分からリーダーとか委員長に立候補するやつが信用できない。そうしたやつが持っている何かが諸悪の根源だ(うる覚え)」と語っていました。ビヨンドはネテロとも団長ともメルエムとも違って、自分から委員長に立候補するやつです。きっと。そんなかれがどう扱われるかも非常に楽しみです。個人的には、野望と欲望とそれに見合う能力を兼ねそなえたキャラクターは好きです。
 

考察

 当たったり外れたりする考察。、ひとつは新世界における「ハンター」の意味の移り変わりで、もうひとつは新世界における「戦い」の意味の移り変わりです。

 私の考えでは新世界編で世界観がガラッと変化したように思えます。これまでは、すべてのストーリーにおいてなにかしらのゲーム的世界観がありました。会長がいう「相手がいる強さ」というのも、大きく分けるならばゲームです。相手がいて、ルールに則って、勝負をする。勝ち負けがある戦いというは、勝ち負けが設定されている戦いということで、それは殴り合いだとしてもゲームの様相を帯びます。メルエムとコムギの軍儀による交流はその最たるものです。それがハンターハンターにとっての戦いでした。例外もありますが、基本的にはルール無用のバトルロワイヤルではない、ということです。

 しかし、それがキメラアント編から少しずつ変わってきて、ついに新世界ではまったく変わってきそうなのです。ハントをするといっても、娯楽としてのハントではなくて、生存のためのハントというわけで、また、現在においての生存のためのハントは、利害関係に絡め取られたビジネスのハントでもあります。簡単にいえば、ネテロがまったく楽しめない種類のハントです。新世界ではそういったハントをするハンターたちが主役になってきそうで、それはこれまでのハンターとは意味がまるで変わってくるように思えます。
 
 なんて書くと、まあ少年ジャンプ的なキラメキがない感じになってしまいます。が、そこはやはりハンターがハンターである以上は、生存のためといえどキラメキが溢れたものになる気がします。未知を主食とする彼らにとっては、おそらくこうした災厄でさえも喜びになってしまう、そんな気がします。特にジンとかパリストンはいかなる災厄だって娯楽としてエンジョイしそうですから。というか、逆説的になんですが、指令でありビジネスでもあるハントでさえも娯楽化になってしまうのがハンター、といった描かれ方をするかもしれません。これから先、おそらくかなり凄惨な未来が待っているでしょうが、そのときにハンターたちが楽しんでいるのかってところには注目していきたいです。
 

 そして、つぎに新世界における戦いについて。
 今回のラストに紹介された、新世界からの災厄。これらの災厄はキメラアントのように確固たる敵っていう感じではないですね。寄生型ウイルスといいますか、対人類排除システムというか。なんというか、新世界をひとつの自然生命体としたときに、外から侵略してきた人間というウイルスに対する免疫系といいますか。そんな感じです。災厄はどれも対人間破壊兵器といっていいくらい、とりわけ人間にとっては凶悪な災厄のように思えます。冒頭にでてきた「新世界の門番は無礼な輩(植民)をもっとも嫌う」というのも、新世界が人間に敵対する環境機構になっていると考えると意味が通ります。

 もしそうだとすれば、災厄との戦いというのはこれまでとまったく変わってきますね。災厄に勝つということは未知の解明などのように、人類が新大陸を征服するときのように理解することに当たりそうです。新世界の環境を把握して適当することが勝利になるというわけで、つまりはある種の情報戦ってことになるでしょう。

 で、これはなんとなく気に入っている推測なんですけど、こうした未知の解明とか情報戦といえば思いだすのがアルカ編です。アルカ編では、イルミやヒソカを始めとする様々なキャラクターたちがアルカの能力を推測し、その推測に膨大なページが割かれていたのは記憶に新しい……いや大分古いけど記憶にあります。あの頃は小出しの情報をヒントに私たちも推測して、アルカの能力を理解することに尽力していました。あのストーリーはいかにアルカの能力を解明することができるかって推理ゲームでもあり情報戦でもありました。結局はキルア隠していたある能力によってすべてがひっくり返されましたが。

 新登場のガス生命体アイは、おそらくはアルカと同じ能力でしょう。そうすれば、彼らの脅威、彼らの恐ろしさはすでに殆どが分かっています。その情報を共有して対策を立てればもはや未知ではなく災厄でもなくなります。むしろ上手く利用すれば利点すらあります。という感じで、新世界の戦いは、災厄の攻略=災厄の解読、って感じなんでしょうかね。すでにガス生命体はほとんど攻略済みなのかもしれません。と思ったけどアルカの知識が共有されてねえ! そこらへんでキルアが登場するんでしょうかね。ただ兵器ブリオンに限っては真っ向勝負の殴りあいっぽいですけど。あれ、めっちゃ不気味ですね。


 ちまりは、アルカ編・ハンター会長選挙編は、新世界の序章だったという見方もできるんじゃないかなと思いました。ストーリー的には序章であることは間違いありませんが、世界観としても新世界への導入だったと言えるもしれません。そのときは、そこで求められる強さってのは、ネテロを始めとしたパリストンやジンに共通する知能や観察力、そして好奇心なのでしょう。それってすごく面白そうな冒険になりそうです。
  

 とまあ、こんな感じで以前のように、またハンターハンターの感想と考察をできるだけ書いていきます。「それはねえだろ」とか「それはあるかも」とか、そんな感じで楽しんでもらえれば幸いです。こうして書くからには深読みすぎてもう訳分かんないってくらい書きたいですね。それにしても新世界編はたった一話でいきなり面白すぎますね。しかも新世界でパリストンとジンが衝突する展開があるかもしれないと考えるとこんだけ待った甲斐があるってもんですよ。


余談。

 快楽と命の等価交換のパプですが、現実にそれと近しい研究があります。それはある実験でネズミが自ら快楽中枢を刺激できるようなレバーを設置したら、そのネズはミ餓死するまでずっとそのレバーを押し続けていたって研究です。これオールズ (JamesOlds)回顧(PDF注意)ですね。パプに寄生された猿のような生物が干からびているのをその研究を思いだしました。もしそういったタイプの災厄だったら、これもう超ヤバいですよね。快楽中枢を直接刺激するとなると麻薬の数千倍の依存性ありそうですし、意思なんかではどうにもならないし、一度でもそれらの快楽を経験してしまったら一生中毒性に悩まされるとかありそうですから。快楽中枢を利用して動物をリモコンにする研究もあるくらいで、パプは人間の行動を制御する最強のウイルス?生命体?ともいえそうです。殺意の伝染もアルカでお馴染みの欲望の共依存も人間を破壊するために超便利そうです。それらを耐えた人間にはブリオンで物理的に破壊するとか。新世界編ではこういう怖いのがいっぱいありそうで、すっごく怖いお化け屋敷になりそうで楽しみです。