単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

笑っちまう程、何もない夏 ハヌマーン「Don't Summer」

 
 ハヌマーンの「Don't Summer」って曲について。私は夏が大嫌いなので腹いせにそういう曲について書きます。過去にこの曲の感想を書いたことがありますが(「君よ、夏をしないで ハヌマーン「Don't Summer」)、とても気にいっている曲なのでまた感想を書くことにします。今回は歌詞解釈を主にやっていきます。

ハヌマーンバズマザーズのPVを制作している鼻兄さんのMAD動画。
 

 「Don't Summer」というタイトル通りに、夏をしないでと訴えかける曲です。
 夏が近づくと巷では「キラキラ輝く、キミの夏」とか「ひと夏の思い出」とか、なんかいいことあるかもと期待させる歌や言葉が増えてきます。この曲は、そうした状況に中指を立てて夏をしないでと訴えかけるもので、それは「もう彼の都合で夢を見ないで」や「衝動に刺さる音楽を辞めて」とあるように、端的にいえば夏に浮かれないでって意味だとおもいます。
 
 「Don't Summer」の「気は確かさ 俺には只、笑っちまう程、何もないだけ」ってフレーズがこの曲のすべてを物語っています。夏になってオシャレなキャッチコピーや耳触りがいいギターロックに騙されて何か起こるかもしれないと期待してしまう。でも、驚くぐらいに何もない。夏だからって特別なことがあるわけがない。そういうおためごかしに突き動かされて抱いてしまった甘い期待は夏のクソ暑い気温で腐ってしまうだけ。「何もないがある」って言葉なんて漫画の中だけの話。夏だからって何かあるわけがない。気づいたらなんとなく夏になってたとしても、うそっぽく笑う赫い髪の少女なんていないんですよ

 それどころか夏の蒸し暑さは希死念慮を高めてしまうくらいのもんで。一番の歌詞は「水銀温度計 その上昇に連動して上がる あの人のリセット願望」と夏の気怠さに参ってしまって死にたくなってしまう。しかし、さらに夏が進行してしまうと「34℃、未だ上昇中  面倒に変わるあの人のリセット願望」と死ぬことすら面倒になってしまう。そんくらいに夏は凶暴なものなんです。何かあるとかそういう話ですらなかったりもします。

 「Don't Summer」は1番の歌詞が7月で、2番の歌詞が8月って感じで、時間経過がうまく表現されています。「読みかけたままで捨てる先月号 読み切りの彼が機械的に笑う」から、「団地の裏手に濡れた先々月号
読み切りの彼が色褪せて笑う」という具合に。少年ジャンプか快楽天か分からないんですが、なんかの雑誌が夏のなかでくたびれていっています。前述の暑くて死にたくなって暑すぎて死のすら面倒になっていく過程とともに、雑誌の変化がますますもって夏が深刻化していく様子を感じますね。いますでにめっちゃ暑いんですが、まだ暑くなるという絶望感、そういう感情の推移を感じさせます。

 ここで追記。すばらしいコメントがあったので引用させてもらいます。「「何もなかった」と振り返るのではなく「何も無えから」という最初からの諦めでしょうね。」」というものです。確かにこの曲に通底する諦観は「結果」ではなくて「導入」と感じさせてくれます。全編にわたって怒り狂っているのも諦めることを言い聞かせるためであって、希望と諦観の摩擦熱が暑いのもこの曲の魅力でしょうね。

 この曲はまったくもって夏に肯定的ではありません。私はそこが気にいっています。「夏は何かある系」の歌は多いんですけど、「夏だからって何もねえよクソったれ系」の歌はあまりないですし。それと、夏だからって浮かれさせようとする音楽に対して辞めろと声を上げていて、何かあるかもしれないという期待の裏返しで何もないことに気付いてしまうという悲しみすらあります。そこが特に好きなところです。夏が大の苦手な私はこの徹底的な夏への不快感に共感するのです。夏に対しては感傷も記憶も何もいらないからはやく過ぎ去ってくれって心から願っているくらいですから。「何かある」と喧伝する夏に、「何もない」と抵抗する、いってみれば反夏歌かもしれません。アルバムのラストがこれっていうのがさらに最高です。

 でも、NUMBER GIRLの透明少女は大のお気に入り。
 

さらに、そのフォロワーだったBASE BALL BEARの「ELECTRIC SUMMER」もお気に入り。
  
ライブドアブログは歌詞を掲載するのがOKらしいので掲載します。


水銀温度計 その上昇に連動して上がる
あの人のリセット願望
読みかけたままで捨てる先月号
読み切りの彼が機械的に笑う

Don`t summer 君よ夏をしないで
もう彼の都合で夢を見ないで
君よ夏をしないで 衝動に刺さる音楽を辞めて

34℃、未だ上昇中  面倒に変わる
あの人のリセット願望
団地の裏手に濡れた先々月号
読み切りの彼が色褪せて笑う

Don`t summer 君よ夏をしないで
もう彼の都合で夢を見ないで
君よ夏をしないで 衝動に刺さる音楽を辞めて
三つ編みのままで
(三つ編みのsummer daysって歌ってるけど)
音楽を止めて

気は確かさ 俺には只、笑っちまう程、何もないだけ