LUNKHEAD の[vivo]のアルバムレビュー。
「くだらないこの世界、終わりそうな気配がしないから」
これまでのアルバムのなかに一曲か二曲あったような激しい曲が、アルバムのほぼすべてを占めているという凄まじいエネルギーが込められた傑作。
[vivo]の何が素晴らしいかといえば、中盤の誰も知らないとラストのゲノムをのぞけば、すべてが攻撃的で爆発的な曲で構成されていること。そして、それを熟練されたアレンジやサウンドの妙で聞かせて、けっして単調にはならずにアルバム単位で完成されていることです。まるでエネルギーの塊のようなアルバム。半端じゃない。
ロックバンドとしての矜持を感じさせる作品ですね。試みとしては実験的でありながらも、完成度の高さゆえに貫禄ある作品に仕上がっていて。そもそもただ激しいというわけではなく、「生」の意味が込められたタイトルに添うように伝えるべきメッセージに溢れている。生きることの苦痛や葛藤などの綺麗ではない一面としっかり向き合ったうえでの覚悟が伝わってくる。本当に凄まじい作品ですね。全身全霊って言葉がじつによく似合う。
今作ではポップさは控えめでオルタナティブ、ガレージを下地とした鋭利化されたバンドサウンドになっていて。ときには暴力的なまでのテンションの高さがありながらも、全体としては小気味よく聞かせてくれるように親切な構成。この作品の魅力は、暴発寸前のエネルギーを上手く飼い馴らしていることで、そういう意味では聞き手を意識しているからこその作品だと感じました。
これだけ攻めている楽曲ばかりならば聞き疲れそうだなと思ったけど、アルバムを通してさっくり聞けますからね。これは[vivo]の怒涛のナンバーを一筋の線にまとめる熟練されたアレンジがあってこそでしょう。アルバム全体の構成もよくて、中盤の「誰も知らない」は箸休め的な役割を果たしつつも流れを引き継ぐようにアレンジは重厚になっていますし、イントロそのものでしっかりと差別化をしているので流れを意識しやすいです。
それからなんといっても、ラストまでの激しい楽曲群がラスト「ゲノム」の壮大なバラードに繋がっていく感覚は感動もの。これまでの苦悩、葛藤を乗り越えたさきの景色が浮かび上がるように、「あなたを人を愛するために生まれた」「あなたは愛されるために生まれた」「僕はあなたに未来をもらった」などの祝福の言葉が響いてきますね。[vivo]が「ゲノム」から広がっていった作品ということを踏まえると、ドラマチックなアルバムなのでしょう。
是非、アルバムとして聞いて欲しい作品ですね。