単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

読書

書目リストを買った

文筆家の木澤佐登志が制作した480円の書目リストを購入した。 こちらの。 note.com 「おすすめの本リスト」はリストだけでも読みきれない量がインターネットに転がっている一方で「すばらしい文章を書いている人のすばらしいおすすめ本リスト」となるとめっ…

妄想とは緊急避難的に持ち出された物語である 春日武彦『「いかがわしさ」の精神療法』を読む

「いかがわしさ」の精神療法 作者:春日 武彦 日本評論社 Amazon 精神科医の春日武彦による、臨床現場や地域医療で体験した「いかがわしい」話を主にまとめたエッセイ集を読んだ。 春日武彦といえば、人間の珍妙さや生々しさへの赤裸々な語りがおもしろい作家…

本の虫になっている

おれが飼っている本の虫は冬に目を覚ますようで、本の虫になっている。年末に期間限定で2か月99円のKindle Unlimitedに登録してからというもの、そこで読める気になっていた本やそこでは読めないが急に気になった本を隙間時間に読みつづけている。SNSを一切…

エペやスプラは「インスタントで明快な刺激から成る情報量の少ない娯楽」ではないような

俺はスプラトゥーン3サーモンラン全ステージ野良カンスト勢なのもあって新進気鋭の哲学者の本でゲーム(エーペックスとスプラトゥーン)について雑なことを書かれていて悲しかった。 『スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険』を読んでいて引っかかる箇所…

小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』を読んだ

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA) 作者:小川 一水 早川書房 Amazon 小川一水の小説はだいたい読んでいて、『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』は未読だったので読んだ。 人類が宇宙へ広がってから6000年。辺境の巨大ガス惑…

武田綾乃「愛さなくても別に」を読む

愛されなくても別に 作者:武田綾乃 講談社 Amazon 『愛さなくても別に』がよかったので感想を残しておきたい。 武田綾乃『愛さなくても別に』は、機能不全家族のもとで暮らす日夜コンビニバイトに励む女子大生が主人公の現代小説。タイトルに含まれている愛…

『自閉症と感覚過敏』を読んだ

自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか? 作者:熊谷高幸 新曜社 Amazon 自閉症は、症状の集まりとして診断されている障害であり、症状の範囲についても、さらには関連する障害についても、大きな広がりを見せるようになっていて、その多…

プラシーボ効果はすごい 『精神科医はくすりを出すときこう考える』を読んだ

精神科医はくすりを出すときこう考える 作者:仙波 純一 日本評論社 Amazon エッセイ本ではなく、科学と医学とくすりについての本である。さらに言えば、俗にいう「エビデンス」に依拠した本でもある。 『精神科医はくすりを出すときこう考える』の内容を簡単…

『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』を読む

脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線 作者:紺野大地,池谷裕二 講談社 Amazon 脳という分野に限定されるが、バイオハッキングやトランスヒューマンといった身体改造技術の話だ。攻殻機動隊への道筋だ。これがお…

『発達障害の内側から見た世界 名指すことと分かること』を読んだ

読書メモ 発達障害の内側から見た世界 名指すことと分かること (講談社選書メチエ) 作者:兼本 浩祐 講談社 Amazon ゆで卵とスプラとおっぱいが例えで出てくる、DCD特性が強くある発達障害当事者の精神科医が書いた本。広くいえば、発達障害と診断する、説明…

『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるのか』を読んだ

「助けて」が言えない---SOSを出さない人に支援者は何ができるか 日本評論社 Amazon 『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるのか』を読んだ。以前に感想を書いた『「死にたい」に現場で向き合う---自殺予防の最前線』と同じシリーズ。…

『アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える』感想とメモ

アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー) 作者:米田衆介 講談社 Amazon この本はphaさんやまくるめさんがTwitterで紹介していて読んでみた。文章こそ柔和だがその内容は辛辣。少し思い当たるくらいならいいが、…

『明日からできる大人のADHD診療』の感想とメモ

書店に置いてある発達障害に関する本を大別すれば、あるある系エッセイマンガ、ライフハック本、症例と理論的枠組みに軽く紹介する新書、学問的研究書などに分けられる。おれの発達障害的素質について考えさせられる出来事があって、いま一度見つめなおした…

初めて読むアナキズム『大杉栄伝 永遠のアナキズム』

大杉栄伝 永遠のアナキズム (角川ソフィア文庫) 作者:栗原 康 KADOKAWA Amazon おれはアナキズムについて書いていたブログをよく読んでいるが、アナキズムについて書かれた本は『大杉栄伝 永遠のアナキズム』が初めてになる。 冒頭で、百年前の米騒動の話が…

恋愛SLGのHゲーとは何ぞや 、『天使の囀り』を読んだ

天使の囀り (角川ホラー文庫) 作者:貴志 祐介 KADOKAWA Amazon ネタバレあります。貴志祐介の『黒い家』や『新世界より』しかり、シナリオ自体はわりと序盤で予想が付きやすい。どんでん返しはなく、むしろ取材や文献などによる膨大な情報量によってストーリ…

『生活の印象』を読んだ

生活の印象 作者:樋口恭介 Amazon 子供とYouTubeでアニメソングを漁ってきて気づいたのだが、アニメ『ロミオの青い空』のオープニングテーマ曲とバックホーンの「世界樹の下で」は、サビのメロディがほぼ同じだ。 『生活の印象』 聞いてみたら、たしかにほぼ…

土か煙か、自死か路上か、または医療保護入院か脱法ドミトリーか、刑務所か、食い物か

この先いったいどうなるのだろうかと考えていたとき、「自死か路上か刑務所か」という言葉を目にして深く納得したものだった。いずれ、まあ運が悪ければ数日後にでも、そのような末路を辿るのだろう。(上の言葉は関内関外日記でよく出てくるもので、そのブロ…

8.

Kindleを1.25倍使いこなすための1つの方法。メモとハイライト。 https://read.amazon.co.jp/notebook Kindleは、気になった箇所にハイライト(線)を引ける機能があり、上のリンクは、過去にハイライトした文章と本の一覧を表示することができる。これです。 …

3.

「死にたい」に現場で向き合う---自殺予防の最前線 日本評論社 Amazon 冒頭の一文から読んでよかったな、と思った。 最初に断言しておきたい。「『死ぬ死ぬ』と言う奴に限って死なない。」という通説は迷信以外の何もでもない。 ケスラーの大規模疫学調査に…

Kindle Unlimitedのおすすめ本とか漫画とか 2022年4月

Kindle Fire HD 10を買ったらKindle Unlimitedが2か月間ほど無料で利用できるようになった。2年ほど前にも2か月間99円キャンペーンをしているときに加入したのでこれで2度目になる。ネットに転がっているunlimitedのおすすめ作品記事をいくつか読んでみたが…

私小説と実体験の間 西村賢太『一私小説書きの独語』を読む

随筆集 一私小説書きの独語 (角川文庫) 作者:西村 賢太 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2016/11/25 メディア: 文庫 思えば、西村賢太の小説をけっこうな量を読んでいる。数年前は近所の図書館にあった著作を片っ端から借りて読みふけっていたこともある。…

すごい破壊と再生の物語 『雨の日のアイリス』を読む

雨の日のアイリス (電撃文庫) 作者:松山 剛 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2014/05/28 メディア: Kindle版 BOOK☆WALKERの読み放題で松山剛『雨の日のアイリス』を読んだ。とりあえず短編を手あたり次第に読んでいて、とくにこの本と「猫と地球儀」が気…

「快感回路」から読みとる薬物依存症のきびしさについて

依存症治療に熱心に取りくんでいる芸能人が逮捕されたニュースをみると、依存症がよくいわれる「やめつづける」ことは本当に難しい、と思う。 特に「快感回路」を読んでからというもの、動物由来に備わっている報酬回路の脆弱性や、依存が進行したときに脳に…

親と子の関係が良くない人間による親と子の関係が悪い作品語り

ツイッターで見かけた「親子の微妙な軋轢を的確に描写した男の漫画」が少ないという記事を読んで、唐突に親と子の軋轢・対立が出てくる作品について語りたくなった。 思えば、私は家庭問題をこじらせすぎて家庭問題が出てくる作品がいつからか好きになってい…

「コンビニ店長が見た、地方と都市/田舎と都会」が面白くて格差が見えてくるのでオススメします

たまにはこういうのも。 むかしむかしあるところにMK2というブロガーがいました。彼はコンビニの店長をやっているブロガーで、卓越した文章力と慧眼と変態性で一部でひじょうに有名なかたでした。いまはもういません。今回紹介する「格差って、見たことあり…

近況

近況。 先日、THE NOVEMBERSのライブに行ってきました。この日はファンの投票でセットリストが決定されるライブで、選曲の魅力はさることながら演奏曲順も秀逸でした。前半は静かな曲、後半は激しい曲に固めた全体の流れを大事につつ、局所局所で流れを壊す…

新たな結末が描かれた小説版  古谷実「ヒミズ」

どこまで素直に書けるか。 純愛青春残酷物語と呼ばれる「ヒミズ」。 それまでシニカルなお笑いを描いていた古谷実が、一転して、笑いを一切排除して人間の深部に焦点を当てたストーリーを描いた作品。僕にとってその原作のコミック版は人生を左右するほどに…

無力感は狂いの始まり/春日武彦、平山夢明

もうここ数年ずっと無力感があってそんなちょうどいい時期に出会えた「無力感は狂いのはじまり」を読んで色々と分かったつもりになったので書評を書きます。無力感は狂いの始まり 「狂い」の構造2 (扶桑社新書) 正気じゃない! 人間の深層に眠る狂気の種を…

最も効率がいいやり方は井戸に毒を入れること/名作SS 勇者「魔王倒したし帰るか」感想

勇者「魔王倒したし帰るか」はもとは2chに投稿されたSSで、現在はなろうサイトに完成版が掲載されている。 勇者「魔王倒したし帰るか」 https://ncode.syosetu.com/n3065fd/ ジャンルはダークファンタジー。 RPGの経験値上げのための雑魚狩りが「大量殺戮」…