単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

中憲人の『雑な生活』を読んだ

 

『雑な生活』は2023年のベストになりそう。年始からすばらしいマンガを読めて幸先がいい。

ストーリーというようなストーリーはなく、生活が雑なゆう子と生活が雑でない佐々木という真逆の成人女性ふたりが、宅飲みしたり食卓を囲んだりたまに深夜の公園で語り合ったりする様子が描かれる。

雑にいえば気の置けない友だちと物が置けない部屋の物語でそれ以上はないのだけど、雑な生活あるあるとしても共感/驚愕ばかりでおもしろく、ふたりの関係性が百合と連帯としてもすばらしかったのだ。

 

雑な生活さは、ゴミ屋敷と汚い部屋を行き来しているおれからしても、床にゴミやモノが落ちすぎていてそれらを踏まないよう過ごしていたら足に変なタコができたおれからしても、ゆう子の暮らしは雑な生活といえそう。

雑な生活にも多様性がある。ゴミという名付けは様々な不要になったのもの集積物であるように。

「雑な生活」には豊かさがあり、そして貧しい。

 

雑な生活として作中で登場するエピソードに例えばこんなのがあった。

・冬が好きでその理由が「自分の感情を冬の寒さが気づきにくくさせる」から

・部屋で財布や鍵をなくさないためによりなくしそうにないもの(服や鞄)にしまう

・部屋に座る場所がない

・生活の見合いを見誤ってキャベツ一玉を買っては腐らせる

・床の見え方が90や70という割合で表現されるし、基本的には床は見えないものとする

・風呂場の照明が切れても放置する

・家電製品に積もった埃の量が時間の単位になる

・雑な生活を送っているそんな自分に気分が沈む

結局はいい話で、雑な生活でも人と分かち合えばそれが受けれ入れない人から歯止めをかけられ、「それはおかしい」と改善を要求されて嫌々従って案外それで生活しやすくなって、雑すぎる生活にはならない。おれと違って雑すぎるわけではない。

部屋に招くような友だちがいれば干渉してもらえるおかげで人間の形を保っていられるのだ。

「ひとりで見る夢は悪夢でも、それを仲間と分かち合えばつながりになる」だ。

 

あと『雑な生活』は百合マンガだとおもう。

お互いがお互いの差異によって救われている。

雑な生活は干渉によって雑すぎることにはならない。ちゃんとした生活は雑な生活を目にして肩の力を抜くことができる。と。

あまりに理想的な関係性が描かれていた。

『雑な生活』はすばらしかった。

 

雑な生活バトルをするわけではないが、おれの雑な生活では電気コンロも電子レンジも浴槽の照明も部屋に備え付けのワンドア冷蔵庫の霜が増殖し冷凍庫になっているが、わりと生きていける。

そんでそんなになっていることにゆっくりと傷付いていしまうのだった。