単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

パワーインフレ、チートキャラを乗り越えて、冨樫義博が目指しているその先のテーマ



パワーインフレの扱い方から見直すバトル漫画2 HUNTER×HUNTERはバトル漫画では無いと思う理由

 この記事がすっごく面白かったです。ハンターハンターがバトル漫画ではない、という内容の記事で、王道のバトル漫画であるドラゴンボールを比較して、主張の根拠をのべています。


 で、今回はハンターハンターがバトル漫画でないならば、じゃあ冨樫義博が描こうとしているものは?といったテーマを、リンク先をマネしてドラゴンボールと比較しながら書いていきます。いつもながら強引に結論まで突っ走しっていきます。

 ※単行本派の方はネタバレ注意!



 パワーインフレというと、キメラアント編でのメルエムとゴンが思い出されます。

 ゴンはおよそ28巻ほどの長きにわたって修行をし能力を鍛えてきて、その成長していく姿は丁寧に描写されていたのですが、あるときにサイヤ人のように一気にパワーアップしてしまいます。そのつぎに、メルエムという変身後魔人ブウのような最強のキャラクターが誕生し、ついにパワーインフレが起こりました。これまでは念能力の相性によって絶対の最強という存在はあり得ない、といったバランスだった筈ですが、さすがにメルエムには誰も敵わない、というほどにパワーインフレが起こりました。というか、意図的に「メルエムは最強」「どうあがいても絶望」といった描写であったと感じました。
 それから、ゴンは元に戻って、メルエムは退場します。


  また、パワーインフレだけでなくて、チートキャラクターまでもが登場しました。

 キルアの「妹」のアルカの「命令」という能力は、パワーインフレというレベルではなくて、すべての戦闘力、念能力が紙クズ同然になるほどのチートな能力です。個人的には、アルカの能力はキルア以外が使用すると代償があるという制約と、当のキルアでさえもおそらくは好き勝手な命令はできない恐れがあり、肝心のアルカそのものが非常に脆弱な存在であることから、そこまでのチートっぽさは感じられませんが、それでもチートであることには変わりありません。
 それから、アルカは退場します。


 正直なところ、パワーインフレというほどでもなく、チートキャラクターというほどでもないかもしれませんが、これから話を進めるために今回は強引にそう断定させてもらいます。

 
 この状況をドラゴンボールで例えるならば、スーパーサイヤ人4(GT)のキャラクターが登場して、神龍が味方になっているような状況です。クリア寸前というか、バトル漫画が行きつく最後のような状況だとおもいます。

 この状況をゲームで例えるならば、中盤までしっかりとしたバランスの成長システムであったのだが、イベントでチートレベルの敵キャラが登場して、イベントで主人公がレベル99にまで進化して、さらにイベントで味方キャラがチート級の攻略アイテムを手に入れた、というものでしょうか。結局はすべて元通りになりましたが、いったんはそうであったという事実だけでも、ゲームのバランスは大きく変容します。

 そこで、じゃあこれからどうすればいいの?ということが今回の記事の主旨です。
 言いかえるならば、これからどうやってまたゲーム(物語)を楽しめばいいの?と。
 

 その解答のキッカケとなるのが、ハンターハンターが突入した新章の展開です。
 
 それは、ゴンが父親とともに暗黒大陸を冒険するというもので、今までどおりの王道の冒険譚でした。


 これこそが冨樫義博の挑戦だと私は推測しました。パワーインフレが起きて、チートキャラクターが登場したあとで、今までどおりの王道の冒険譚のストーリーを描くというストレートさこそが、冨樫義博がアンチテーゼとして掲げているものではないと予想しました。つまりは、あえてどうもせずにこれまで通りに勝負をするということです。

 もちろん、パワーインフレ、チートキャラクターが登場した後なので、これまで通りという状況ではありません。いくら最強と呼ばれる敵が出てきてもメルエムのほうが強いでしょうし、いくら万能と呼ばれる敵が出てきてもアルカのほうが強いでしょう。ずっと作品を退屈にさせる制限が付きまといます。
 

 しかし、それでもやりようによってストーリーをいくらでも面白くできる、という挑戦。作品をつまらなくさせるイベントのあとで、またどれだけ作品を盛り上げることができるか、という挑戦。冨樫義博が目指しているのは、バトル漫画の終着点のその先というわけです!!!! 
 
 新しくストーリーに加わった、ジン、十二支ん、パリストン(+半獣人)、ビヨンドが率いる新勢力、そして、これまでに登場したキャラクターが加わって、ハンターハンターの集大成といえる最高のストーリーが始まると、いうわけですよ。これにはもう期待せずにはいられませんよね。


 というものです。以下は補足になります。

 
 そもそも、ハンターハンタードラゴンボールで決定的に違うのが、初めから最強の存在がいることです。リンク先の記事でありましたが、初っ端からヒソカ、ネテロ、ジン、幻影旅団といったラスボスが勢ぞろいしています。


  で、ヒソカ、幻影旅団、ネテロといった面子に共通する奔放な生き方にあるように、ある程度に強くなってしまうと自らで工夫しないと面白いことがなくなるようです。ハンターハンターは「遊びが優先される世界観」とありましたが、それは「遊ばないと退屈になってしまう世界観」であるともいえますね。

 なぜならドラゴンボールとは違うのが、外側から面白いこと(敵)がめったに登場しないからです。

 新展開も、あくまで自分から行動することで引き起こされた展開であって、暗黒大陸から訪問者があったからというわけではありません。別に行かなくてもいい、という選択肢があるのにもかかわらず、ハンターたちはあえて旅立ちます。


 そう考えると、キメラアント編は外側から面白いことが降ってきたという、ハンターハンターでは相当にレアなイベントだったのでしょう。そのイレギュラーさによって 「パワーインフレ」のような異常事態が起こってしまった、といえるかもしれません。というかむしろ、パワーインフレという状況を描くために、外側からの敵を用意したという可能性もあります。それに加えて、アルカを登場させて、ようやくその後の舞台が整ったので、いよいよ冨樫義博の本領が発揮されるときがきた、と。
 
 
 まあ特にラストは冗談半分の推測なんですが、そうだったらいいなということで書きました。