Syrup16gの曲レビュー「向日葵」
淡々と紡がれていく詞とメロディーが描いているのは、かつて口にした他愛ない言葉。脱力気味のバンドサウンドが心地よくて、ラフだからこそのメロディーのすばらしさが映えるようになっています。
向日葵と同じ位背が伸びたら
あの太陽に手が届くんだなって そう信じていた
ストレートに聞けば、小さいころに太陽に手が届くと信じていたことや、細胞が一週間で生まれ変わるならば自分はなんでもなれるはず、と語っていた日々の回顧。
しかし、かつては「くだらない事」を思っていたとはいえ、そのこと自体が「くだらない事」ってわけでもなくて、あくまで「くだらない事をしゃべって」いただけ。当の自分はそれこそ一生懸命だったわけで、けっしてその日々を否定するわけではありません。
一生懸命 くだらない事
思ってたんでしょう
しゃべってたんでしょう
むしろその当時は、「くだらない事を思わなければやっていけなかった」のかもしれないし、「くだらない事を思うことを心の拠り所にしていた」のかもしれない、と理解を示しているように思います。
つまりは「くだらない事」と言葉上では当りが強いけれど、それはそれでOKみたいなニュアンスもあって、過去のくだらなかった自分への距離感が絶妙だと感じました。
必修単位大前提に生きるのは辛い
「だから何だ!」見知らぬオヤジにも怒られる……
「だから何だ!」と怒られるのはキツい。つらい。この手の現実感溢れるフレーズを言葉遊びの流れでぶち込むのがユニーク。それにしてもこのワードチョイスよ。何を口にしたら見知らぬオヤジに怒られるのか、状況がまったくもって分からない。しかしそのときに感情は切に伝わってくる。
何かしらのテーマで一貫すると思いきやあえて目を引く仕掛けがあり、それは淡々と進行しつつもテンポをチェンジさせるバンドサウンドにも同じことがいえます。「向日葵」は総じて聞きこむのが楽しい曲ですね。それとメロからサビのシームレスな展開が好きで、曲全体でたゆたうリズム感を感じられるのも気にいっています。
過去にくだらないことを言ったりしたので「向日葵」は身に詰まるものがあります。まだ当時の自分の言動を「くだらないなー」と受け入れることは難しいけれどいつかそういう日が来ればいいな。