単行のカナリア

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Syrup16gの曲レビュー「You Say 'No' 」


 Syrup16gの曲レビュー「You Say 'No' 」

 素朴なメロディーと率直な言葉が冴えている曲。ひとつの恋が散ったあと、もしくはひとつの人間関係が断たれたあとに、過去の名残りのなかで日常に回帰していく、そんなイメージの詞。

 永遠だって そう 終わりがあるって君は言う
 運命だって そう 変わってしまうと君は言う


 恋愛の俎上では「永遠の絆」や「運命の出会い」などの言葉が登場します。が、 それらは「そうだったらいいな」と一方通行の祈りみたいなもので、ときには「NO」と突きかえされてしまうこともあります。永遠や運命といった大げさな言葉と対比されて描かれる日常の風景は、静謐なアルペジオと悲しげなコーラスとともに曲に奥行きを与えているように感じます。

 死のうたって 当分無理そうだな 
 散らかった部屋片そうかな

 歌詞はくだけた口語表現になっていて、ときには「プリン」といったデザートまで飛びだして、まるでラフなスケッチで描かれたような日常。誰に言うまでもないひとり言のようなもので。そしてサビでは永遠は終わって運命も変わっていく、と言葉で二人の関係性が変わっていく様をなぞっています。

 明らかにダメっちゅう感じの 今日を何とか凌いだら
 雨上がったばかりの道路に 小さい花を見つけるよ

 
 「You Say 'No'」 のハイライトはおそらく中盤に歌われる上記の箇所。日常と内省の果てに「雨上がりの道路で小さい花を見つけるよ」と自分に言い聞かせるよう歌われます。
 このフレーズは、雨上がりだからこそ水をまとって光を反射する花を見つけやすくなる、との意味も含んでいると思っていて。それと同じように、全編寂しげな調子の曲だからこそ「小さい花を見つけるよ」といった少し前向きなフレーズが目立ちます。


 全編通して素朴な曲で、「死のう」と物騒な言葉が出てきたりラストでは声を張りあげる箇所もありますが、楽曲に漂っている雰囲気は穏やかなもの。「No」と言われた思い出を等身大で悲しんでいるって印象があり、等身大で悲しめるのは過去と向きあえているなによりの証拠。

 「You Say 'No' 」は「No」と言われた事実は明かすが、何に対して「No」と言われたかは分かりません。それ含めて「行間を読む」タイプの曲だと思っています。

 永遠や運命、そんなものある訳ないとは分かっていながら、気が変わってつい信じたくなって口にしてしまう。ときに浮かれてしまう感情は分かるような気もするし、「そんなものはない」と面を向かって言われたときの納得とやり切れなさも分かるようなが気がします。分かるような気がするだけで、本当はさっぱり分からないんですけど、気分だけでも分かった感じになるのは等身大の感情が込められているからでしょう。

 永遠がないこと、運命が変わること、それらは幸せの中では拒否したい事実であり、不幸の中では歓迎したい事実なんですよね。あと「You Say 'No' 」は終わったあとの話として読みとりましたが、別にそう歌われているわけではなく、私はそうイメージが浮かんだけの話。どう聞くかでサビの意味が変わってくる写し鏡のような側面もある曲です。