THE BACK HORNの名曲といえば、この「美しい名前」を挙げる人は多いのではないでしょうか。
彼らの優しさに溢れた紛れもない名曲で、さらに、この曲の制作エピソードの切実さもあいまって、「名曲」と呼ぶに相応しいとおもいます。
全曲レビューその13は、「美しい名前」。アルバム「THE BAKC HORN」に収録。
先ほど書いた制作エピソードというのは、菅波栄純(gt)が 入院した知り合いの見舞いに行った時の話になります。
栄純さんが見舞いをするために病室に訪れたとき、入院した知り合いは意識がなく医療機器のチューブに繋げられていて、そこでその方の奥さんが夫の名前を一生懸命にを呼んでいたそうです。
その様子を目撃した栄純さんは名前を呼ぶってなんて素晴らしい行為なんだ、と思うようなり、そして名前というものはなんて美しいんだと気付かされたそうです。というエピソードです。
曲は至ってシンプル。イントロからメロでは、ベースが和音弾きで静かに音の粒を弾いていて。それを軸に展開していき、サビでは盛り上がりがあるものの、またメロでは絞られた音数になります。
僕はこの静かけさのあるサウンドから「静かな病室の廊下」をイメージしています。
ボーカルは思いを吐き出すように丁寧に歌い上げています。後悔や悲しみやそんな感情がぐるぐると伝わってくる感じで、なにより「美しい名前」は歌を聞かせる歌だと思いましたね。
聞く時を選ばずに心を揺り動かしてくる。静かな曲なのに、ある種のエネルギーさえ感じられます。
僕自身は「親しい人が入院した」などの経験はないのですが歌の切実さから情景がまじまじと浮かんで来ます。ドラマとかではよくあるんですが。
いくら後悔しても今さら出来ること言ったら「名前」を呼ぶくらい。 でもそれによって症状が治ったケースを耳にして思うのが、名前を呼ぶって本当に大切な行為だということ。
僕は正直自分の名前が好きじゃないのですが、それでも中には「いい名前だね」と言ってくれる人もいて。それはそれで嬉しかったりもします。
そもそも。名前は好きとか嫌いとかそんな話じゃなくてもっと本質的なものとか、そういう事を考えてしまいます。こんな風に「名前」を歌にするってバックホーンの繊細な感性ならではの曲だと思いますね。
さらに細かい点では、
このベースの和音弾きはコピーする際に「フレット数が足りない!」とよくなるそうです。
アレンジ面では、ベースの際立っている粒の音とギター・ドラムのサウンドの音の広がる感じの対比も妙。
このペースが心拍数メーカーの揺れるイメージがある。とたまに耳にしますね。
ライブで演奏される度に泣いてしまう人が多数現れるキラーソング。THE BACK HORNにあまり興味がない人でも「美しい名前」だけは好きって人がいます。