単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

Syrup16gの曲レビューその2「ハピネス」

ハピネス アルバム「coup d'Etat」収録

Syrup16gの楽曲の根底にあるのは「普通との葛藤」だと思っています。
その「普通」は、きっと無意識で生まれたもので、どうしようもできないもの。
そういう意味では自分との葛藤とも言えます。いや、どっちもあるんだろうな。
世間と自分の板挟みになってしまって、でも、板挟みになっているのは自分であり世間でもある。
またそれは自分に限ったことではなく、みんなもその気持ちを抱えているだろうと。


だけどたまに思うんだよ
これは永遠じゃないんだって
誰かの手にまた この命返すんだ
ねえ そんな普通を みんな耐えてるんだ
ねえ そんな苦痛を みんな耐えてるんだ


やけに響くシンバルの音をのぞけば、曲は至ってシンプルな作りとなっています。
アコースティックギターの旋律に、静謐な歌声がのっかって、
メロディーはセンチメンタルさがある切ないメロディーになっています。
切ないメロディーって言葉しか浮かばないですね。語彙力の致命的欠落。
これを聞くといつも電車の中から夕日を眺めるような気分になってしまいます。
ってこれは歌詞のイメージからそう思ってしまうのでしょうね。


ハピネスというタイトルなのにまったくハッピーさがない楽曲です。
むしろ、投げやりな気持ちでハピネスと歌っている印象があります。
これを聞いてハッピーを感じるのは私には到底不可能なことです。
それよりかは、ハッピーと自分でそう言ってしまいたくなる不幸さがあるような。
そんな中でも、メロの言葉遊びというか、歌詞のセンスは輝いていますね。
思わず日常で使ってしまう言葉の組み合わせです。

電車の窓をこする 夕陽なんかも 最重要文化財とか。


頭はハピネス いつもハピネス 
多分ね 一生 俺はハピネス
不幸もハピネスだろう


「死」の恐怖。もっと限定すると「喪失」への恐怖。
それには確かな実在などはなく、「そうなるかもしれない」という可能性の中でしか存在していないので、この感情を完全に退けるのは不可能なことで、ただ目をそらすことによって一時的に気を紛らわせることしかできません。
そんな苦痛を、幸せそうなあの人が、普通に見えるみんなが、実は耐えていた。
それを知って、自分だけでなかったと安心する。そういったささやかなハピネスは確かにあると思います。
  

アルバムの流れでこの曲を聞くと泣いてしまうことが多いです。
夕方に聞いたりすると風景とマッチしてどうしようもない気持ちになります。