単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

5年後の世界/特撮 新曲の全曲レビュー


 好きな作品についてはなんどでも語りたいと思います。
 特撮「5年後の世界」の新曲の全曲レビューになります。

5年後の世界


 一発目から特撮の魅力が詰まった曲。歌詞のテーマ、歌の力強さに初めて聞いたときには鳥肌が総立ちしました。ド頭から繰り出してくるなーと。特撮まじかっけーす。

 なんというかこの曲はメロがないんですよね。ひたすらオーケンが叫んでます。サウンドも終盤こそはシンセサイザーとピアノの旋律によって彩豊かになるものの、序盤はいたって骨格を図太くさせたシンプルなバンドアンサンブルになっています。
 以前にもメロがない楽曲はありましたが、それらの大抵はサビではぽっぷになります。でも、これはそんなキャッチャーさとは無縁です。あえて超絶技巧系のバンドが真正面から勝負を仕掛けきました。かっこいい。

 こうやってむき出しのバンドサウンドで感情を伝えることができる、というのが特撮の魅力であり、またオーケンの凄さだと俺は思いましたね。キャッチャーなのがカラフルだとしたら、彼らはモノクロで凄まじい世界観を見せつけれてくれまし。た

 いやーしかし、「5年後の世界を想像してたかい」と。曲のテーマは、時代背景と照らし合わせると示唆的であります。10年後の夏また会えることを信じようといった歌がさいきん話題になりましたが、こちらは嫌でも来るぜ お前は持ち場に戻るんだと5年後の世界の覚悟を問うものでした。

 これはオーケンの優しさなんでしょうね。どんなに絶望的な未来だとしても、もし未来をないがしろにしてしまったら結果的にはより不幸になってしまいますから、それよりかは想像するのが苦しくても覚悟して自分の生き方を貫けばいい、と。
 
 文句なしの名曲だと思います。特撮の名刺にしてもいい出来。かっこいい。かっこよすぎるぜ特撮。


霧が晴れた日



 これまた壮大な楽曲です。語りと歌からなる構成としてはケテルビーに近いものがありますが、こちらは遊び要素が皆無で一貫したメッセージ性を保って展開していきます。しだいに壮大に神妙になっていくスケールの大きさにはこれまたグッときます。
 特撮のバンドの表現力に圧倒されます。とくに楽曲終盤のメロディーは反則級の切なさがありますね。5年後の世界ではメロを殺していましたが、こちらはNARASAKIのメロディーセンスが発揮されてグッドメロディーになっています。

 霧がこもるような浮遊感のあるメロディーが全体を覆っていて、これはバラードといってもいい曲でしょうね。バンド感は封印されています。メロではオーケンの歌い方が特徴的です。

 まあ、このように素晴らしい曲で、歌詞に込められているメッセージもオーケンならではのテーマだと感じました。

 愛や恋や虚構への盲信などのそういった過剰すぎる思いは、霧が立ち込めるように周りを見えなくさせてしまいます。その真っ白な霧は、濃すぎてしまうと闇と同じように、現実を隠して大切なことを見えにくくしてしまう。
 この楽曲は、そういったことへの警鐘であり、またその霧を晴らすメロディーを奏でる曲でもあります。かなり分かりやすいメッセージで、それを壮大に歌い上げることで、いっそう身に沁みるように感じましたね。
 
 オーケンは優しいなあ。サウンドスケープにひたるだけでも心地よい曲ですね。


追想


 
 三柴理作曲のインスト。濃すぎるアルバムの緩衝剤の役割を果たしてくれるインタルード的インストになっています。
 特にこれといった語ることはありませんが、この楽曲のあとのヌイグルマーに繋がる展開は好きですね。アルバムという枠でみると見事に機能しています。

 綺麗なピアノの旋律です。


Dead or Alive


 ファンキーなグルーブ感を味わえる初期の特撮のような曲。

 三柴里作曲ということで、跳ね回るピアノが軸となった軽快なアンサンブルです。キャッチャーなサビが印象に残りますね。ひたすらピアノの音色が心地よく、轟音ギターやコーラスなどがピアノを引き立てるようにアレンジされています。
 それと、Cメロは文句なしでカッコいいですね。楽曲がAメロの繰り返しで終わるのでちょっとしたカタルシスも感じます。

 しかし、楽曲の軽やかさに比べると、タイトルは「生か死」といったように重々しい。
 詞世界は、荒廃した世界において生きることを鼓舞する歌詞になっているようです。楽曲の軽やかさがあるうえでこの振起される歌詞のちょっとしたアンバランスさがグッときます。これまたいい曲です。


ルーズ ザ ウェイ  ※再録でした

 
 ラスト飾るに相応しい名曲。はじめた聞いたときは感無量で言葉がでませんでした。ちょっと酷い言い方になりますが、まさか特撮というバンドが、ここまでストレートに感情を揺さぶってくる楽曲を作るとは思っていなくて。そのせいの不意打ちをくらって、実はちょっと泣いてしまいました。見事にやられましたね。
 
 シンプルな曲です。サウンドに関しては特筆することはありません。
 切ないメロディーの骨格があって、それを音数を絞ったシンプルなバンドアンサンブルによって固めています。テクニカルなことは何一つしていないです。あえて言えば、特撮という超技巧派のバンドがこういったシンプルな楽曲を奏でる、という事実によって切実さを感じます。「5年後の世界」でもシンプルという言葉を使いましたが、あれはシンプルにぶっとんでいたのであって、こちらは本当の意味でのシンプルです。

 ここまでシンプルでいい曲ということは、メロディーが素晴らしいということなのでしょうね。オーケンの優しく語りかけるボーカルとこのメロディーだけで勝負しています。
 
 いい方へころがれ。

 なかば祈りのような詞です。
 まずは自分を見失わないように、物事を天秤にかけることで欺瞞を見破って。それからはただ「いい方へころがれ」と祈るだけ。オーケンがルーズ ザ ウェイで描いた祈りは、自分のためにでもあり、これを聞いている私たちに向けてなのでしょう。

 あーいい曲だー。これでアルバムは終わるというのがまた余韻があって。じんわりと来ますね。あれだけ濃厚な楽曲群を締めくくるのがこういったシンプルで素晴らしい曲だというのが。

  

  もうね、褒めることしかできやしない。おススメ。