単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

ハンターハンター 美しい「遺言」と新たな始まり


 前回の記事で「キメラアント編が最高の結末をみせてくれた」と書きましたが、どうやら今回が本当のラストのようでしたね。ハンターハンターを読んでいると、気温の寒さに反して目頭を中心にして体温は上がってぬくぬくします。

 
 

 まずは、新しいストーリーがきた!! これは嬉しい!! しかも、ヨークシンシティを舞台にした幻影旅団編を彷彿とさせる、わんやわんやのエンターテイメント色が濃そうな物語のようですね。

 今度のストーリーは、ネテロが生前に携わっていた、ハンター連盟会長のポストを奪い合う激闘なのでしょうか。群像劇を描かせたらまちがいなしである冨樫義博の本領がまた発揮されそうな予感です。



 そして、本題。本当のラストを迎えました。



 閉ざされていく視界で、二人は会話を通じてお互いの存在を確認する。幸せのさなかでもやはり不安はあるようで、それを拭い去るようにメルエムが言葉と軍儀で確認する様が、これまでの「絶対者である」彼の姿にはそぐわずに一抹の寂しさを感じつつ、でもそれによって彼もまた特別ではないと分かって感慨深かったです

 それと、枠線のなかで会話のリズムを表現する演出にも痺れました。「ありがとう」「こちらこそ」では枠を挟んでちょっと間があったようで、最後のメルエムの名前を呼ぶシーンは一際しっかりと言葉が交わされていたと感じました。

 心が通じ合う瞬間は、きっと言葉だけが内面に反射して、それ以外の音などは存在しなくなるんでしょうね。だからあれは暗闇ではなくて、むしろ希望とも呼べる輝きをもったシーンなのでしょう。コムギの視点でもあり精神的な視点でもある。本当に素晴らしかったです。



 今回のタイトルは、遺言。このタイトルにもまた感慨深い。メルエムという名前。それが遺された言葉であるのは確かです。それは母なるキメラアントの女王と、理解し合えなかったネテロと、愛しい存在であるコムギからの贈り物です。まるでメルエムが主役のような物語。しかし、それと同時にネテロ会長の遺言によってこれから新展開を迎える、というスタートの意味もあります。たった二文字のタイトルに込められている思いは深いです。

 
 その後の被害報告によって、あえて不条理さを書いたのもいいですよね。膨大な死者が出た。それは人間側でも、キメラアント側でもそうだということ。どっちがどうとかで語れるものではないということを。幽遊白書から冨樫義博がテーマにしているものです。善悪のグレーゾーン。少年ジャンプでこそ語るに相応しいテーマです。



 どれだけ絶賛しても伝えられない。ハンターハンター最高っす。こんな物語を読めるのは幸せの極みです。興奮のせいで感想も思いっきり偏ってしまいますね。これもう仕方ない。 
 


 ハンターハンターのキメラアント編で描かれた『不条理』という面白さもどうぞ。


 

 それと、コムギが名前を呼ぶシーンを見ていて、私の頭の中にはTHE BACK HORNの「美しい名前」が流れました。歌詞がとてもピッタリ合うので紹介します。名前を呼ぶって行為があれほど温かく感じたのは初めてでした。


  
 

世界は二人のために回り続けているよ
世界に二人ぼっちで 鼓動が聞こえるくらいに

世界は二人のために回り続けているよ
離れてしまわぬように 呼吸もできないくらいに

何度だって呼ぶよ 君のその名前を
だから目を覚ましておくれよ
今頃気付いたんだ 君のその名前が
とても美しいということ


 思い返すと、メルエムという名前は重要な役割を果たしていました。王という宿命から抜け出せたのも「名前」を手に入れたことが大きく影響していました。そして、メルエムが初めて名前を欲したときが、コムギに聞かれたときというのも懐かしい。その名前を呼ぶことで幕を閉じるってのは実に美しい終結でした。