コンパクトでディープな良盤 THE BACK HORN「パルス」
新機軸をみせてくれた前作の「THE BACK HORN」。それから一年後に届けられたのが、衝撃そのものをパッケージしたかのようなアルバム「パルス」。古今のバックホーンの魅力が見事に融合した良作です。お気に入りです。
パルス(初回限定盤)(DVD付)
このアルバムの特筆すべき点は、全ての曲が「THE BACK HORNならでは」と注釈が付く個性的な曲で、それらがバランスよく配置されていることです。洗練されたアレンジによるバラエティ豊かなラインナップは、「人間」やシングル勢のキラチューンもありつつ、構成の妙によって全体としては偏りをまるで感じさせません。それゆえに、全編を通して聞きたくなるのがこのパルスなのです。アルバムとしてガツンとで聞かせてくれる、ボリュームはあるのにコンパクト、そんな一枚。
人間プログラムは奇跡的にコンセプチュアルなアルバムになった印象ですが、今作のパルスはメンバーの成長によって、意図されて絶妙なバランスを誇るアルバムになったと思いますね。
その「パルス」のバランスの良さにはシングルが上手く機能しているようです。シングルとしては物足りないが力強いと感じていた「覚醒」は、序盤に配置されて、存在感をだしつつ前後のつなぎとしてして役割を果たしています。アニメの主題歌にもなった濃厚な世界観を持った「罠」は、終盤でアルバムの締めを重厚なものにしてくれている。それぞれがアルバムの文脈に置かれて見事に引き立っています。
そして、音楽性については、これまでの荒々しさを継承しつつ、さらに洗練されているようもあります。前作では消化不良であったいよいよ配合が熟して、一回り大きく成熟したサウンドは聞きごたえがあります。それを感じたのが、バックホーンの新境地であるミディアムテンポのバラードの「鏡」、一方の「人間」は従来の路線を突き詰めて爆発したような楽曲です。冒頭から凄まじいテンションで駆けぬける「世界を撃て」と、いきすぎた情熱が変態性を帯びる「白夜」、哀愁という言葉がぴたっとはまる「蛍」も、彼らの豊穣な音楽性が宿っています。
ラストは、珠玉のバラード「 生まれゆく光」。バラエティ豊かに聞かせてくれて、ラストは王道の切ないメロディーで締めくくる。始まりから、終わりまで、まるで隙がなく存分に楽しませてくれます。それと、メロディーの素晴らしさは相変わらず。
THE BACK HORNが「パルス」というタイトルで届けたかった音楽。楽曲単位よりもアルバムとしてまさに衝撃の音楽だと思いました。バンドの音楽性が変わっていくのは逃れられない宿命なのですが、こういった変化なら歓迎して受けいれられます。支持されている「良さ」をしっかりと継承して、そこから新しい魅力を提示していく。そうやって、丁寧に練り込まれて作られたのが今作なのでしょう。振り切っていますね。
個人的にはとても気に入っています。何度も書きましたが、パルスはアルバムとして素晴らしいと思いますね。正直、前作では自分の好みから遠ざかって不安になっていたのですが、今作を聞いてその心配はすっかりなくなりました。いいアルバムだ。