単行のカナリア

感じて想する

THE BACK HORN名曲レビューその26「雨」


 雨降りのゴールデンウィーク
 こういった日は外出するのが億劫になって、自宅にこもりがちになります。そして、予定が先延ばしになって心にふっと隙ができると、いそがしさで忘れていた苦しみが飛びこんできて、気がつけば憂鬱な気持ちになって部屋の隅でじっとしていたり、なんてことがたまにあります。

 そんなときは何も考えずに音楽を聴いてすごす、というのがわたしのやり方で、そんなときによく聞くのがTHE BACK HORNの「人間プログラム」だったりします。


 という前置きで、THE BACK HORN全曲レビューその26「雨」。アルバム「人間プログラム」に収録。 



 「明日も雨降りで太陽は死にました」という詞は、なにかの比喩ではなくて、確かなひとつの世界と解釈しています。別に空想ということでもいいんですが、生々しく息づかいが感じられる世界が確かにあるって感じで。その世界の風景、その世界に住む人間、その人間の感情までを「雨」にからめたのがこの楽曲。そんなイメージで聞いています。

 
 そのイメージでは、退廃的な雰囲気で、終末を迎える寸前の世界。
 ようは「もう終わってしまう」という感情が取りまいている世界です。
 

 この曲は表現力がスゴイと思っていて、ゆらぐアルペジオや小切れのミュートが窓に打ちつける雨音をイメージさせたり、サビの盛り上がりが土砂降りの天気をイメージさせたり、終盤の転調が星が輝く冬の夜空をイメージさせたり、と心象風景にリンクしていくるんですよね。ラストのフェードアウトも水滴が垂れるように、徹底してイメージが掻きたてられますね。


 そもそも楽曲そのものにドラマ性があるので。

 雨しか降らなくなった崩壊寸前の世界、戒厳令がしかれて静まりかえった都市のなかに、廃墟になったアパートの一室に閉じこもって、意味もなく生き延びている人間。当然のようにゆっくりと気を病んで、ついに耐え切れなくなって、幸せであった過去が思い出される。というように。

 それゆえか、現実での体験だったり、小説で読んだ物語だったり、そういった記憶にきざまれた雨に関する情景が揺りうごされるのですかね。曲を聞くだけで、ここまでイメージが沸きあがるのってのはわたしにとっては中々ないので、なんとも不思議な魅力がある曲だと感じます。
 
 

 さらには、太陽が死んでいる世界では、「止まない雨はない」という言葉は空っぽになる。「いつか良いことある」という未来への希望が持てなくなってしまう。絶望が這いよって、閉塞感が徐々に自分を侵食していき、いつからか現実さえ不確かなものように捉えてしまう。

 
 こういった感情の変化は現実でもありえることで。
 なので、歌われている題材が現実的でなくても、けっこう生々しく響いてきます。共感はできないかもしれないけれど理解することはできますから。それに雨の日の憂鬱な気持ちってだけならよくあることで、雨の日に部屋で聞いたら見事にハマる曲ですね。それはもう何度もリピートしちゃうくらいに。


  

 「雨」という題材で、こういった幻想的で生々しい表現をするのかってあたりが、バックホーンの魅力のひとつだったり。この時期のバックホーンは、若さゆえなのか物語がある曲が多くて、その中で抜群の強度を持った曲だとおもっています。

 それと、人間プログラムというアルバムに置かれることで、単体で聞くときよりもハマってしまうような気がします。次の「空、星、海の夜」のつなぎとしても最高ですし、ずばりバックホーンの名曲でしょう!