単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

特撮のライブにて大槻ケンヂの失敗に励まされた話


 結論からいうと、プロでも失敗するし、てんぱるし、だからといって立ち止まることはできない。期待に怯えてはいけない。たとえスポットライトが失態を照らして、カメラに目撃されて記録に残ったとしても、それでも少しでもいい方へ転がるように声を張り上げるしかない、という話です。


 
  特撮のライブは、今はもう閉店してしまった心斎橋クラブ・クアトロで行われました。そのライブハウスは、パルコというリア充の巣窟と思われるビルの8階に位置しております。その日のパルコは特撮の多様なファン層と入り混じってカオスな模様であったのを覚えています。


 というのも、特撮のライブに来る方々は老若男女、V系、オタク、ゴスロリ、パンクスなど本当に様々な方がいるんですよね。デカルチャー。そんな中で特にこれといった特徴のない私は、その客層に囲まれて心細い思いをしながら、ツイッターで暇を潰していました。それから、ちゃっかり近くいた方と話が盛り上がったりして、いよいよライブが始まる。



 ここからのライブレポはすでに書いたので割愛。今さらながらこういうの書くのは苦手だ。でも、つづける。
 


 ライブも中盤。動物園のような観客がしだいにまとまりつつあって、会場は特撮の貫禄のパフォーマンスとオーケンのMCによって盛り上がりは最高潮に。そのときの私は、目の前にいたトゲトゲしたアレを全身にまとった方のトゲトゲを恐れながら、モッシュモッシュで楽しんでいました。正直、トゲトゲのお兄さんはちょっとこわかったけど。


 そして、MCの途中、一度オーケンが舞台からはけて、アコースティックギターをもって登場。「これ大阪にきた記念にさきほど楽器屋で買ったんだけどね。」とギブソンの楽器を紹介しました。それから、NARASAKIに「それギブソンの偽物だよ」と騙されてしまったという楽屋話をして、お土産紹介とは相変わらずにゆったりとしてるなーと思っていたら、ここで「これでアザナエルを演奏する」とオーケンが宣言。まさかのサプライズに大きな感興があがりました。


 で、そこからがオーケンらしいというか和みました。何度も失敗するんですよね。オーケンがおそるおそる楽譜を見ながらコードを弾くのですが、NARASAKIに「それはちがう」とダメだしされたり、明らかにミスっていて自分で「ちょっと待って もう一回」とやり直したり。会場にはカメラが入っていて、観客もまさかの名曲の演奏に期待は高まるばかりといった状況。でも、やっぱり失敗してしまう。だからといって、気まずくなる空気を一切感じられないのがオーケンのライブの特徴でしょう。みんなわが子の晴れ舞台を見るかのように、オーケンの演奏を見守っていましたね。



 そして、ついにオーケンが「ごめん もう無理」と弾くのをやめてしまいました。「練習ではできていたのに」とオーケンが苦笑しながら言うと、会場ではブーイングというか「えー」という不満の嵐。メンバーからも「やれよー」と後押されましたが、オーケンの心は完全に折れてしまっていたようです。
 


 さすがにこの展開には会場もちょっとだけシーンと。なにせこの下りは結構な時間を取っていましたから。で、結局ダメだったわけです。その空気を察したオーケンは「次だ。次。もうあれはいいの。渾身のバラードで盛り上げるぞ!! 見とけよお前ら! 感動するぞ。」と失敗を払拭するように、自らを鼓舞するかのように会場をひたすら煽っていました。


 そこで、本当に素晴らしいステージを見せてくれるのがさすがのオーケン! 次のMCまでにはさき程の失敗がなかったことにされるほど圧倒的でした。というか、個人的にはベストアクト。あれだけの失態を晒した後でもすぐに心を入れ直して挽回する。そのプロ意識に励まされました。カメラも入っている中での何年か振りのライブ、もう取り戻すことはできない「失態」の類ですが、それでもライブはまだ続くからすぐに次に切り替えようとする気持ち。仮にオーケンはギターが下手くそだとしても、それで失敗をして諦めてしまったとしても、そこから素晴らしいパフォーマンスで挽回しようとする精神はまさにプロの鏡です。正直、アザナエルをすっごく聞きたかったのですが、でもこんな貴重な体験ができて嬉しかったです。



 おまけに。終盤のMCにて、ドラマーのアリマツさんに「オーケンめっちゃテンパってたでしょう。付き合い長いから分かるけどあの失敗をかなり引きずってるよね」と指摘されて、オーケンが苦笑しながら「なんで分かったの! やめてよ~」とゆるく返していたのが面白かったです。何十年やっている人間ですら大舞台でミスをする。慌てる。でも、頑張る。ちょっとしたミスですぐに気が引いてしまう私はそれに励まされたのでした。