単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

血の気が多いロックンロール  Psysalia Psysalis Psyche  「Matin Brun」


 ライブでのある出来事。バンドの演奏中に煽ったりするマナーが悪い客がいて、そのうざい態度に見かねたバンドメンバーがステージから降りてきて、客との乱闘騒ぎになったらしい。

 
 これはかっこいい! このバンドの魅力といったら獰猛でかつ遠慮のない様でして、今回の出来事で、楽曲からイメージされるバンド像と実際のメンバーの血の気の多さが重なりました。しかも、彼らはユニークな活動を精力的に行っていて、芸術家やアイドルとのコラボも成し遂げています。個人的に最も期待しているバンドです。


 ということで、ニューアルバムを記念してレビューを書きます。刺激的なロックを探している方にオススメ。


Matin Brun
Matin Brun


 それぞれ違う出身地のメンバーが東京で2005年に結成したPsysalia Psysalis Psyche(サイサリアサイサリスサイケ)。今回レビューする『Matin Brun』は彼らのファーストアルバムとなります。彼らは、最近気鋭のクリエイターとのコラボレートシングルを6作連続で制作するプロジェクトを展開し、いよいよセカンドアルバムを発売するなど精力的な活動がうかがえます。


 
 
Psysalia Psysalis Psycheの音楽性をひと言で形容するのは難しいです。初期の音楽性こそは、ガレージロックを基調したサウンド艶と棘を兼ね備えるボーカル、シャウトが飛びかうツインボーカル退廃的で批判的な詞世界といった説明になりますが、今回のファーストアルバムではシューゲイザーのアプローチを大胆に取り入れました。

 
   動画と共に紹介。
 
Butch&The Sundance Kid



 アルバムの一つの柱となる「Butch&The Sundance Kid 」は、初期衝動がひしひしと伝わってくる鮮烈なバンドアンサンブル。
暴れまわるノイジーなギターサウンドにのっかる排他的な歌詞と、吐き捨てるように歌をぶつけてくるボーカルから感じられる、狂気が滲みでる感性を詰め込んだ楽曲で、その鋭さには痛快さやスリルを感じます。初期のPsysalia Psysalis Psycheはこの楽曲を代表とする切れ味の鋭いサウンドが主軸でした。
 

Titan arum

 

 そして、アルバムのもう一つの核となる「
Titan arum」。これまでのガレージロックの枠からはみ出した彼らは、今度はシューゲイザー方面に舵を取りました。一口にシューゲイザーといっても様々な音像がありますが、彼らが選んだのは重層的なフィードバックノイズで空間を埋め尽くす音像です。また、幾重に重ねられたギターノイズは不協和音の響きを内包しており、幻想的というよりかは破壊的なサウンドスケープになっています。
 



  
アルバムの楽曲は、これまでに挙げた「Butch&The Sundance Kid 」とTitan arumを軸として、そのグラデーションの中で色彩豊かな楽曲が並びます。一部のサウンドはまんまシューゲイザーなのですが、歌詞の志向性は内省ではなく寧ろ外部に放出されるといった感じで、その点では音楽性の表情が変わっただけであってコンセプトは統一されているように感じました。



 ガレージロック、シューゲイザーと大きくジャンルを跨いだ
彼らのサウンドの根底にあるのが、これまで書いたたように攻撃的/排他的であることで、サウンドには大きな振れ幅があるが統一感は保たれています。その鋭利な切っ先は、他者だけではなく自らにも向けられており、アルバム作中では「夢の国」にさえ矛先が向けてられています。不快さ、苛立ち、不安、狂気、飲み込きれなかった感情を吐露するかのように叫び、奏でる。それゆえ、アルバムは安らぎとは無縁の作品になっており、アルバム全体として不穏な空気感と緊張感を孕んでいますサイケデリックでヒリヒリとした感触に私は惹かれました。
 
 アルバムはゆったりとしたシューゲイザー系統の楽曲と、疾走感のあるガレージロック系統の楽曲を巧みに配置することで、ジェットコースター的展開の刺激を味わえます。中盤に
インストゥルメンタルを挟み込んでバランスを調整していたり、初期衝動に溢れる楽曲をメインに据えつつ、、また巧みに構成を練られたアルバムでもあります。ラストの珠玉のバラードも素晴らしく、アルバムとしての完成度は高いです。



 そして、このアルバムは
Psysalia Psysalis Psyche過渡期に発売されたものでして、最新のシングルではさらなる刺激的なアプローチを取り込んでおり、急速な勢いで進化し続けている彼らの動向から目が離せません。どこまで突っ走ってくれるか大いに期待しています。



 このレビューはあるサイトに寄稿する予定で書いたのですが、そのサイトへのコメントは誹謗中傷が大半だったので、もう掲載するのをやめました。私自身はあまり被害を被っていませんでしたが、それでもそういったことがあることが許せなかったので。ということで、
Psysalia Psysalis Psycheのレビューでした。冒頭では乱闘と書きましたが、殴ったりはしていないそうです。噂なので詳細は知りませんが。ただあまりに態度が悪すぎる客にステージから降りて対峙するってのはカッコいいと思います。スルーするのが大人の対応ってのは、いつでも正しいわけではないので。