単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

THE NOVEMBERS 「dnim」


 THE NOVEMBERSのdnimをレビュー。 
  



 美しくもあり、不穏でもあり、乱暴でもあり、そういうのひっくるめて心地いいという感覚。心地よいでいうならば、オルタナ感の強いバッキバキのサウンドや、あんがいキャッチャーで綺麗なメロディもで、強靭なグルーブ感を演出するリズム隊だってそうだけど、やっぱり抜けのいいシャウトに込められた開放感が断トツで響いていくるかと。
 

 そのシャウトが悲鳴、慟哭ってぐらいの衝動が伝わってきます。
 そこに至るまでは不穏なサウンドが鳴りつづけていて、ときには同じ言葉をたんたんと繰りかえして、それから突きでるようにシャウトが飛んでくる。なにより感情の解放の仕方が面白いと感じました。堂々とカタルシスに導かれる強さを持っている曲だなと。あくまでに蓄積された鬱屈した感情を解放した、って感じでそれがまた良くて。

 
 さらに、それでも解放しきれない感情の残滓みたいで、ラストには感覚的なものだけが残される、といったつながりが感じられるのもまた面白くて、それがまさに「僕の頭を取りまく樹海」という詩のイメージにピッタリ。mindを逆さから読ませると思われるタイトルは、心の定位置からズレひっくり返されて暗やみのなかに落ちていく、といったイメージもありますね。あくまでイメージなんですが。

 
 それとも、周りの人々の心がよく分からないことばかりで、自分だけが心をひっくり返されたような感覚がある、というイメージもあったり。いずれせによ、不安定であるとか異質であるとか、そういう種類の違和感がもうどうしようもなくなった、という印象です。なので、抽象的な詩でありながら、その感情はどこにでも根ざしているとものだとおもいます。普遍的とはいわずとも、日常的なものだと。


 「そこから出ていくように入っていくように 帰れそうで帰れない」
 思考をしていても進んでいるのか戻っているのか分からなくて。心には指標がまったくないから定位置なんて分からずに、同じところを延々と巡ってしまうなんてことはよくあって、下手をすれば逆さになっていることだってある。「止まればつかまり 走れば落ちそうな」という詞にあるように、どうあがいても悪夢のような現実を過ごしていたら、心が逆さになってしまうことだっておかしいことではない。もうわけがわからなくなって、行きつく先が時計の音と心臓の音と、確かに聞こえてくるものだけを頼りにする、という極限状態に辿りついてしまう。と。


 わたしはこう解釈しましたが、色々と連想させられる詩になっているので、どういった状況をイメージするのも面白いですね。
 
 
 生々しくて美しい曲。個人的にはTHE NOVEMBERSの魅力がたっぷり詰まった曲だとおもいます。この曲が収録されているアルバム「paraphilia」が最近のマイブームになっているのでレビューを書きました。