単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

Syrup16gの曲レビューその24「希望」


 ナンバリングミスをしていたので修正&加筆してレビューを載せます。タイトルは絶望の間違いではないか、と思ってしまうくらいに、悲しみが漂っている曲です。

 Syrup16gの曲レビューその24「希望」


「希望」という分かりやすくてシンプルなタイトル。
なのに、歌から伝わってくる感情はむしろその逆で。
ここからどこか遠くへに逃避したいとか、
必死に希望にすがっているとか、
言葉の明るいイメージからはかけ離れています。
アコースティックギターでメロディーが優しく爪弾かれるものの、
淡々とした歌唱、ノイズのようなギター、不穏な効果音、
そして、重心が低いどっしりとしたリズム隊の効果によって、
どこか重々しく息苦しいムードを感じ取ってしまいます。
まちがっても「希望がある!」といった陽気な曲ではないのは確かです。、


私はそれがいかにもsyrup16gらしい、と思いました。
希望。
大抵の文脈ではポジティブな意味で語られる、まぶしい言葉です。
でも、それを渇望するようになったときの心情はどうなのか。
希望を血眼になってかき集めるようなとき、
一番それを望んでいるようなときは、
おそらく気持ち落ち込んでいて、それとはかけ離れている。
完全に絶望しきれずに、だからといって希望がないときにこそ、
希望というものに強くこだわってしまうのだと、私は思っています。
そういう意味ではタイトル通りの楽曲ってわけなんでが、
でも、ここまでダウナーだと皮肉のニュアンスを窺ってしまいますが。

人もなく 彷徨って
助けて 囁いて
幻の街の向こうは宇宙の果て



ここらへんが楽曲のハイライトになっていて。
やっぱり盛り上がることはないわけです。
むしろ、どんどん落ち込んでいったり、現実逃避になっていって。
私がこの曲の好きなところは、そんなやりきれなさですね。
絶望に振りきれられずにギリギリのところで希望を求める。
綱渡りのような宙ぶらりのような感情をずっと引きずっている。
それでも、やっぱり希望を持ちたいとも思っていて。
そこらへんをグルグルまわりつづけてくたびれる。
いつしか心が擦り減ってしまってぼろぼろになってしまう。
なんていうときにピッタリだとおもいます。
共感をもって落ち着くって意味ではこの希望はうってつけですね。
とことん落ち込んだときにでもすんなり聞けます。
というか、そういうときでないと少し苦しくなりますが。


希望あつめて
洗って たたんで
いつか身にまとうその時
迎えに来てくれ


歌詞にある、衣服を着るかのように希望を身に付けるという表現。
これはあえて俗っぽく表現しているとおもいました。
そう大したもんではないと。
借り物のようであるとか、
ファンションのようなものですらあるとか。
希望という感情をそれほど重視していません。


少し頭冷やして考えよう
簡単なこと 大切なこと



まあ「少し頭冷やして考える」ことが難しい、とわかった上での詩でしょうね。
でもまあ、そうするしかないってのもまた明確な事実でして。
そして、絶望に打ちひしがれているときに安易な希望を掲げても、
それを使い果たしてしまってたり、消費期限が過ぎたらまた戻ってしまう。
そうやってうかれてないで、少し頭を冷やして、簡単で大切なことを考えよう、と。
希望はそれほど大事ではない、そんなアンチテーゼもまた感じられます。

本当ににやりきれないって感じですよね。
抽象的な歌詞もあり解釈はかなり難しいのですが、
どういった感情を込めているかは一発で分かります。
希望というタイトルで絶望的ってのは最高ですね。