夢は叶えるもの 人は信じ合うもの
愛はすばらしいもの
Syrup16gの曲レビューその28「もういいって」。
毒々しい言葉を吐きながら、ノンストップで駆け抜けていく。バンドアンサンブルのかっこよさは抜群で、小気味いいビートの応酬にくわえ、ノイズ指数が高めのギターサウンドに惚れ惚れ。ちょっとばかりキレ気味のボーカル、苛立ちを込めたかのように弾かれるギターも、すべてひっくるめて痛快。一回聞いただけでどんな曲か伝わってくるくらいにシンプルでインパクトがある曲ですね。
まあどんな曲かといえば、
もういいって。
というタイトルそのままの曲ですから。
綺麗事に唾を吐きかけるって感じで、偽悪的な態度にさえ感じられる。取りつく間もないほど冷めている感じ。
「もういいって」と言われる側の立場になってみると、これに返す言葉はありませんね。なにせ「もういいって」という言葉は、反論の余地を与えずに話し合いすら却下する、ただ「もういいよ」という拒絶の言葉ですから。
それを言ったらおしまい、ってくらいに強烈な一言なんです。否定でも、軽蔑でもなく、そういうのにうんざりしたってのは、もうどうしようもないですからね。「もういいって」というタイトルはsyrup16gらしくて素晴らしいとおもいます。
そして、もういいってというのはおそらく綺麗事だからってわけではないかと。
「夢は叶わないもの 人は裏切り合うもの 愛はクソッタレなもの」と一様に信じ込んで、それを頑なに主張しつづけたら、今度はそれが「もういいって」と切り捨てられることにもなってしまいかねない。「もういいって」と拒絶されているのは、あくまで綺麗事ヘの妄信であって、また複雑な個別例を「いかにも正しそうなきれいごと」で片付けようとする態度にこそあると解釈しました。
要は、夢は叶えないほうがいいときだって、人を信じないほうがいいときだって、愛がクソッタレなときだってあるわけで、そういうの排除した綺麗事のごり押しは「もういいって」ってわけです。といっても、まあただ綺麗事にうんざりしたってだけかもしれません。というか多分そうだと思いますが、ここはあえて深読みする方向で。
この曲は、サビ以外の歌詞も一言一言が強烈。
「どっかの街で爆発 どうせ俺には関係ないけど」、「時間通りに起きてやっているのは誰かの代わり 」なんて、わざわざ言わなくてもいいじゃないかって程のキツイ言葉で、そうしてキツイ分だけ痛快。一回でも口にしたら「もういいって」と拒絶されそうなフレーズです。
「もういいって」は強烈なテーマをこれまた強烈なロックチューンとして仕上げたのがナイス。ここまでやってくれるとスカッとしますね。ヤケクソ感が非常に高いですけど、曲の完成度はかなりのもの。おまけにエモーショナルに展開していきながらたたみかけるように炸裂するギターソロもかなりカッコいいです。たまに口ずさむこともあるお気に入りの一曲。
ちなみに、この曲は非リア充からリア充へ言葉の鉄拳、「リア充にぶつけたい曲」ランキングトップ10というよく分からないランキングの7位にランクインしています。「幸せな君達が街ですれ違う私たちは、こんな感情を抱いているかもしれませんよ。」(25歳 女性)というコメントがちょっとだけ面白かった。
最後に。レビューにはあまり関係ないのですが、私が「もういいって」とつくづく感じる言葉は「復讐は何も生まない」という言葉です。もういいって。
====
歌詞
つまんないけどパラダイス