名作シングルシリーズ第三回は、七尾旅人「OMOIDE OVER DRIVE」
マイベストノスタルジーアンプラグドシングル。
「OMOIDE OVER DRIVE」
1. おもひで!おもひで!
2. 八月
3. 戦闘機
4. メロ~走る戦慄,笑う旋律~
七尾旅人のデビューシングルの「OMOIDE OVER DRIVE」。
サウンドだけを軽くなぞれば、アコースティックギターと独特の歌声によるシンプルな弾き語りですが、勿論それだけではなくて、どこかサイケデリックだったり、狂気が込められていたりと一筋縄ではいかない四曲になります。
珠玉のメロディーに浸って癒されるだけではないってのが、「OMOIDE OVER DRIVE」の魅力。
このシングルはノスタルジーを感じさせるんですが、それは自然と思い出が溢れてくるというよりかは、勝手に思い出を掴み出される感じなんですよ。「OMOIDE OVER DRIVE」というタイトルは実に的確です。癒しというか痛みって感じで。弾き語りながらもある種の攻撃性すら感じさせます。
といってもまあ、こんだけ美しいメロディーには浸っているだけで心地いいんですけどね。七男旅人のメロディーメーカーとしての才能が存分に表れています。
曲そのものは切なくて美しい弾き語りなんです。
でも、今にも過ちを犯してしまいそうな危なさだったり、今にも壊れてしまいそうな儚さもあったりするのがいいんですよね。「もう僕はどこにも帰れないよね」「人を壊すことはこんなにも簡単なんだ」「僕なんかすらなんとか生き残り」と歌詞も中々シリアスに傾いています。言語感覚も絶好調。
この後、七尾旅人はシューゲイザーやエレクロニカやジャズまでも取り込んだ世紀の傑作「雨に撃たえば...!disc 2」をリリースしますが、その萌芽がすでに芽生え始めている「OMOIDE OVER DRIVE」はこの時期ならではの純粋さと儚さが詰まった名作だと思います。ローファーな音質も雰囲気に合っています。
全曲良曲なのですが、なかでも「八月」と「戦闘機」のメロディーは格別ですね。
ここまで美しくて剥きだしのメロディーはもうそれだけで聞く価値があると思いますね。歌も演奏もさほど巧いわけではないですけど、そんなのがどうでもよくなるくらい私にとって美しいメロディーなのです。
以前にAmazonレビューに「言葉に形容しがたい、輝やかしくなかった青春時代の懐かしい気持ちを思い出します。」と書きました。この言葉が私にとっての「OMOIDE OVER DRIVE」の全てかもしれません。ほんとぼんやりとした感想になりますが実際にぼんやりとした気分で聞き浸ってしまうので仕方ありません。
一番好きなのは「戦闘機」。ギターのストロークが力強くて弦がはち切れそうな鳴りかたをしているのが最高。