単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

バズマザーズのボーナストラック的な曲がおもしろい


 ハヌマーンバズマザーズの決定的な相違点、それはボーナストラック的なノリの曲の有無かもしれない、余裕があるというか、ムリにでも遊び心を取りこんでシリアスに陥らないようにするというか……、なんてことをまったくすばらしくなってきたバズマザーズの曲を聞いていて思いつきました。そこで、バズマザーズのボーナストラック的な曲、正確にいえばボーナストラックのようにノリがいい曲が気に入っているので、それらの感想を書いていきます。決してボーナストラックではありません。あくまでそんな感じの。


 ・「Disc Harassment」から「さよなら三角、またきて四角」。
 青春パンクみたいなパンクサウンドで、嫌なこと言われたから嫌なことを言いかえしてるって感じの、お得意のアイロニーソング。山田亮一は特定集団を諧謔を弄して描写するのが卓越していて、この曲では芸大生が標的にされています。楽曲の核をなす「あの女はアートだって言えば、裸にだってなる女さ」ってフレーズ、変な人呼ばわりされた当てつけの言葉っぽくて、そのあたりの妙に小物っぽく負け惜しみがある感じがたまりません。あ、しかもそれを言っちゃうのか?みたいな微妙な言葉の選択もいい。そんで、このみみっちい感じの曲をパワーコード調の青春パンクみたいなサウンドでみんなで歌いまわしているってのが面白いと思いました。


 ・ 「理屈 & ブルース」から「内田と打ち上げ抜け出さnight」
 開始10秒まではいい感じですけど、そこからは奇妙なリフと気味が悪いボーカルと気持ち悪い歌詞でなんか気持ち悪い! ぬめぬめとかぐちょぐちょとか猥褻な擬音語をかわいい感じで歌っているし、なのに、これがボーナストラックじゃないってまったくどういうことなんだ。この曲は、リズム感をなくしてドラムからマネージャーに転向した内田さんがボーカルを取った曲で、サビの「其の為の義務や誓約を果たす器量のない男ではあるが」というまともなフレーズがなければ絶望的に気持ち悪い曲になっていました。まあそんな曲なんですけど、リフレインする奇妙なリフと気味が悪いボーカルは癖になるというか、何度も聞けば案外そう悪いものではないというか、飛び道具的なリフの演奏はわりと面白いしそれがボーカルの気持ち悪さと合っているしあれ?これ中々いいんじゃない?と思うようになってきました。前述のサビと「誰かは、誰かの、地元の先輩」ってフレーズはなかなかにすばらしい。誰にだって地元にはその誰かの先輩、後輩がいるって嫌な気分になる事実、でも、そんなことおかいまなく打ち上げを抜け出して女体を猥雑したいという、やっぱり気持ち悪い曲。
 

 ・「ワイセツミー(正規)」から「バックステージ・ジャック・ガール」
 ロックバンドとして順調にビルドアップしているバズマザーズの、2分弱を前のめり気味の轟音ギターで埋めつくす正統派オルタナサウンド。ギターサウンドの魅力だけでお腹一杯になれるこの曲、やっぱりそのテーマが一際変わっていておもしろかったりします。対バンのボーカルっぽい挙動をする女、その女、店長と妙に顔見知りっぽい挙動をする。っていう、楽屋裏のある風景をそのまま切りとった内容になっています。素直に言っちゃうと、すっごくどうでもいいような大したことないテーマだけれど、それをハイジャックするテロリストに例えることがストーリー感あるし、「対バンのボーカルっぽい挙動」「特に何もしない新手のテロリスト」などの描写もノリノリでやっぱりおもしろいです。こんなの聞かされてほのぼのするしかないじゃないか。音いいし歌詞おもしろいし少し切ない感じもあるし。ボーナストラック的な曲としては満点の出来。この三曲の中で一番好きで、最近ずっと聞いています。非常に愉快。


 私は、山田亮一の作詞センスが大好きです。本人はインディーズで一番とインタビューで答えていましたが、気に入った曲があればすぐ歌詞をチェックする私もそれに同意します。私がどれだけインディーズ界を知っているのかって話ですが。ハヌマーン時代にはなかった(「妖怪先輩」はギリギリアウト)これらのボーナストラック的な曲、バズマザーズでは相当ハマってて気に入っています。私みたいな、「神様、俺たち悲しい歌が気が触れるほど好きです」村の住民でさえも、この路線のハマり具合なら歓迎できそうですね。特に「バックステージ・ジャック・ガール」でそう思えるようになりました。こういった諧謔を弄した曲をもっと聞きたい。あくまでボーナストラック的ではあっても、ボーナストラックではないってのも重要なんでしょうね。山田亮一はどうしたってすばらしい詞を綴るんだから心の趣くまま詞を綴って楽しませてくるんだろうって思っています。


 しかし、特定の集団や個人を茶化したりするユーモアってのは、どうやったってスノッブを引き寄せてしまいます。下手なユーモアはそれが鼻に付いて嫌になることもあるんですが(某バンドの某曲とか)、山田亮一はそこら辺のバランス感覚が非常に優れているので問題ありません。ハヌマーン時代の「猿の学生」、「fever believer feedback」でも視点を主体に近付けて主語を最小化することでスノッブを避けていました。して、勿論バズマザーズでもそのバランス感覚は健在のようです。なので、さっきと同じことを言いますが、山田亮一はすばらしい詞を綴るんだから心の趣くまま詞を綴って楽しませてくるんだろうって思っています。