単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

またMEAT EATERSってバンドにハマっている

 MEAT EATERSの名作『so messed up』は、手に入れるのが非常に難しい。Amazonに在庫はなく(数年に一度だけマケプレで出品される)、過去にメルカリでも一切取引されていない。もうライブの物販で販売されているかもわからない。以前は公式HPで、『4tracks』というミニアルバムとライブ音源をフリーダウンロードできたが、ドメイン失効切れでHPそのものが存在していない。新しいHPは現在準備中で、二年前にニューアルバムが完成したという知らせがあったが、いまだリリースならず。過去に、『so messed up』はAmazonのマーケットプライスで二万五千円だったり二千円で売買されているのが、あまり流通してない何よりの証拠だろう。最高なのに。

so messed up | MEAT EATERS | J-POP | ミュージック

 

 最高なので、レビューを書く。『so messed up』は躁鬱的テンションで呟いたり叫んだりするボーカルと、ラフで鋭利なオルタナティブ高圧ロックサウンドが競い合うように、音の主導権を争う。だいたいボーカルが負け、ぼそぼそと呟いているか吐き捨てるように叫ぶのもあり、轟音に埋もれて何を歌っているかいまいち明瞭としない。ただ、なにやら、轟音の向こう側で物騒な言葉が飛び交っていることがうっすらと分かる。

 俺、その言葉がめちゃくちゃ好きなんだよな。たまに聞こえてくるのが、よりいい。

 「もう半分死にかけで/もう半分死んでる」「腐りかけの魂/あーほっとけ」「自分の脳みそに殺される」「何だってそんなにつまらなそうに」「頭が痛む/毎日ひどくなる」「耳の穴/脳みそとろけ出す/手遅れだ」「もう腹減りすぎだし/何も食いたくねえ」「独りで笑うだけ」「どうでもいいさ」「何もできねー」

 曲の枠をこえてアルバムから抜粋したパラフレーズ。これらが、轟音の彼岸から耳にまで到達する。諦観も絶望といった、堅苦しい形容詞はあまり似わない、脊髄に住んでそうな言葉たちの断片 やってられねえ。やるか。しんどい。やっぱ、やりたくねえ。死ぬか。死なない。生きているうちはあがこう。くらいのテンション。「どうせ全部間違ってんだ」から「どうでもいいさ」。目玉は滑りつづけていて、よく蠅にたかられている。ポジティブとかネガティブとか以前に、なにやら体調が悪いという言葉が思い浮かぶ。疲弊したとか、しんどいとか。そのわりには小気味よくギターをかき鳴らしている。その音と言葉のズレというか、ズレではないのだけどその組み合わせが、なんかしっくりくるのだ。

 歌詞とは裏腹に、そのバンドサウンドは、音の粒度が高く乾いた、みんな大好きなザラザラしてうるさいオルタナティブロックのそれ。たまに飛びだすギターのカッティングフレーズとかめっぽうカッコいい。リズム隊だけで展開する箇所も多く、ギターとリズム隊が渾然一体となったダイナミズムさと、かっこいいギターしか弾きたくない的こだわりを感じる。

 もうずっとアルバムを通して聞いているせいで、この曲がどうこうというのはあまりない。オープニングナンバーの『昆虫』は爆発しそうでしないもどかしさから、加速し、その勢いで途切れなく『空缶』になだれ込む展開はワクワクさせる。『昆虫』単体で聞いたらこれから来るぞってときにぶつ切りになるのが面白い。曲単体では『振れる針』が一番好き。最高の歪んだギターを鳴らすバンドなのだ。わりとバラエティに富んだバンドサウンドで、だいたい似たようなことを歌っている。それがいい『so messed up』。タイトルの意味は、おかしい、混乱、問題だらけ、ボコボコに殴られるというスラングらしい。もうこれ以上の形容はない、完璧なタイトル。

 

 どういうバンドか分かりやすく説明するときに、和製Dinosaur Jr.とよくいわれているらしい。よくいわれているらしい、という情報だけがあり、そういっている文章を目にしたことはない。新作のレコーディング風景が書かれたブログでは、本人はどっちかいうとSebadohの方が好きらしいとあるが、アルバムのライナーノートではDinosaur Jr.との衝撃的な出会いでドラムからギタリストとしての第一歩を歩んだとも語っている。どっちなのか。まあ、どちらも正しいのなんだろう。その収録風景があるブログは二千十九年で、一方ライナーノートは二千年頃に書かれていて、その間ゆうに二十年もあるから。

  MEAT EATERSをいつどのような経緯で知ったかはよく覚えていない。かろうじてTHE NOVEMBERSの周辺で目にしたことだけは覚えている。当時あったホームページで『4Tracks』という音源をフリーダウンロードし、Youtubeにあるライブ動画を観まくっていた。VELTPUNCHのライブに出るということで、物販で1stアルバム『So Messed Up』を千円くらいで購入した。メンバーはCDの値段を決めてなかったらしく(俺もそんなことあるのと驚いた)、「えっと、値段どうします?」と裏で相談していたを待っていた思い出。

 『So Messed Up』もそうだが、特に四曲入りの『4Tracks』は、またフリー配布もしくはサブスクリプションでいいので、広く聞けるようにならないかなと思う。というか『4Tracks』がほんとにすばらしくて、『首』がどうしようもなくすばらしくて、「どうしようもないなら/首でも吊れば」という過去一に物騒なフレーズが、なんかさらっと出てきてスッと頭の中をかるく通り過ぎていく。この、あまりに直截的で、口をするのに躊躇ってしまう言葉を、適当に、気だるげに歌いこなしてしまう自暴自棄感とバンドサウンドの力強さ。そういうのに俺は心から痺れたのだった。で、HPがドメイン切れでフリー配布そのものを取りやめたというわけでもなさそうという薄い根拠のもと、あくまでグレーという個人的判断で張ると、『4Tracks』はここでダウンロードできる。


www.youtube.com

 

 そういや、MEAT EATERSについて七年前も似たようなことを書いていた。焼き直し。その後にライブを観にいって、そこで『so messed up』を手に入れたのだった。

dnimmind.hatenablog.com