単行のカナリア

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結成二十五周年を迎えるTHE BACK HORNをオススメする記事

人に全力でTHE BACK HORNをオススメする機会はなさそうだが(あまり人と関わらないので)、もしそうなったときのために備えて「結成二十五周年を迎えるTHE BACK HORNのおすすめ曲」を考えてみたい。 

曲であり、アルバムではない。『人間プログラム』か『ヘッドフォンチルドレン』、もしくは『情景泥棒』を「アルバムごと聞いてみて」とオススメしにくい時代なので曲単位でおすすめするならばどの曲がいいのかと考えてみた。

考えだしたらきりがなかった。

THE BACK HORNを少しは知っている、又は昔は聞いていた人向け


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幅広い層に支持されそうなのは『導火線』かな。ここ数年の曲でもっともキャッチャーでダンサンブルな仕上がりだし、ライブでは手拍子&コーラスという訴求力もある。歌詞は祭り、浴衣、線香花火という夏休み満喫セット。で、「愛なんてわからねえから愛の歌覚えた」「一生分笑ったっていつか言えるのかな」という名フレーズも飛びだす。あと1分35秒あたりのサビからメロへ回帰するパートがいい。


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「あーTHE BACK HORNね、昔はよく聞いていたなあ」向けには最新アルバム『アンドロギア』から『ウロボロス』をオススメしたい。イントロ/メロでは電子的管弦変拍子と囁いたり朗読したりする一風変わったボーカライゼーションで、サビでアニソン的疾走感があるTHE BACK HORN節を抑えている。「アカシックレコーダー更新っす」。 ここ数年のTHE BACK HORNはメロがユーモアに富んでいてサビではど真ん中のオルタナティブロックをやるという必勝パターンがあり、これもその曲の一つ。


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「あーTHE BACK HORNね、昔はよく聞いていたなあ」 向けには前々作の『カルペ・ディエム』から『金輪際』をオススメしたい。うねりまくるベースリフ、気色が変なギターソロ、そしてサビが「嫌だ嫌だ嫌だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ」「なんかキレイキレイキレイ 深い深い闇を泳ぐ魚」で、さらに「理不尽な八つ当たり喰らって表情筋崩壊しそうです。一回血反吐吐いてきていいですか?」だからオススメしかない。いつからかアルバムに一曲は含まれるようになった歌詞ぎっちり詰み込み系の曲には外れがない。

 


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「あーTHE BACK HORNね、ヘッドフォンチルドレンまではよく聞いていたなあ」向けには『悪人』。とりあえず4分あたりのギターノイズが挟まる大サビの部分まで聞いてみてほしい。

歌詞カードから圧があった。なにせ歌詞がこれ。

お集まり頂いた全人格総数70の皆様方ご意見いただきたい。「すべてを清算するなどいまさら無理無理無理無理無理無理」脳内裁判は有罪。満場一致で有罪。脳内裁判は有罪。満場一致で有罪。有罪。有罪。有罪。有罪。

ヒステリックなギターリフ、メランコリーなサビ、それからバッキバキのギターバッキングで開始される無理無理有罪有罪のCメロ、ノイズが走り、そして極めつけの大サビの「ごめんねって聞こえたかな、ありがとうって言えばよかった」からの締めのコーラス。

凄い。


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邦楽ロックを分類するときのジャンルに、BUMP OF CHICKENが一大ブームメントを起こした「物語調」があり、それでいえば『情景泥棒』と『情景泥棒~時空オデッセイ~』はハマってもらえるかもしれない。とはいえSF抒情詩なので人を選び出そうでもある。

『情景泥棒~時空オデッセイ~』の2分30秒から最後までつづくカオスを極めたバンドアンサンブルは人を選ぶとおもう。ただ選ばれたときの快感はとてつもないから積極的に選ばれにいってほしい。この、グチャグチャガチャガチャしているギターサウンドは多数のエフェクターを掛けて生みだされたらしい。こだわりのカオスがここに。

 

THE BACK HORNを知らない人向け


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生と死を主題にしつづけてきたTHE BACK HORNの生。2分あたりからの曲展開はいつ聞いていても心が揺さぶられる。彼らはライブで「生きてまた会おう」と言いつづけてきて、おそらくその回数は数百回もしくは千回くらいほどで、それを踏まえて「共に生きよう 関係するのさ 命かけて」という歌詞を噛みしめてほしい。


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生と死を主題にしつづけてきたTHE BACK HORNの死。死というか終末観というアポカリプスというか。THE BACK HORNはアニメの主題歌と親和性が高いが、『ミスターワールド』はノベルゲームやホラー小説とも親和性が高い。あとこの曲はシングルカットされていて、そのシングルに『未来ネズミ』という謎のボーラストラックがあったりする。

それにしても「排水溝に詰まった羽の折れた天使の死体に精液をぶちまかける」という歌詞を初めて耳にしたときは衝撃だった。ちなみに『儚き獣たち』で「白いベッドで羽根の折れた天使が眠ってる最悪だったね 生きていて良かったよ」とセルフオマージュがある。


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生と死と性を主題にしつづけてきたTHE BACK HORNの性。山田将司の艶やかで色気がありストレートに書いてしまえばエロいボーカルの魅力が存分に詰まっている。「くわえておくれびしょ濡れの曼珠沙華 汚物まで愛して欲しい」……エロい。

 


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夏の功罪の罪。「あくびのせいだよといったのに笑われた「うそつき」せみの声がえいえん鳴り止まない大人はやさしい顔すべてを奪っていく」とあいうえお作文になっている。それに合わせて歌詞もひらがな表記とこだわりがある。

 


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水島精二監督がCDショップで流れていたのを聞いて一目ぼれし、店員に訪ねてアルバムを購入し、『ガンダム00』の主題歌をオファーする契機となった曲。

 


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THE BACK HORNのめずらしいカバー曲の中から。憂いと儚さの美しい線が奏でられる山田将司のボーカルの魅力が詰まっている。THE YELLOW MONKEYの『球根』のカバーでも可。余談で、宇多田ヒカルとデュエットをした曲の収録現場で山田将司の声がでかすぎて音が割れてたいへんだったというエピソードがあるし、日本の曲で「抗うつ剤」が登場する曲は宇多田ヒカルTHE BACK HORNしか知らない。睡眠導入剤精神安定剤の曲はいっぱいあるが。

 


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THE BACK HORNと改名する以前は「魚雷」というバンド名だった。初期衝動のそれ。

 


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名曲。多くは語らないが、ヘッドフォンが外れて雑踏に向きあってしまう煩さを歌詞・サウンドで演出しているところが、もうなんというかすばらしい。「不意に人にぶつかって不意に音楽が途切れて自分が自分じゃなくなる気がして車道にうずくまる」のとこ。

 

みゆはん『人間関係満腹中枢』


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THE BACK HORN名義の曲ではないが菅波栄純が作詞作曲を担当した曲からひとつ。遊び心がサービスしすぎているせいでよくわからんヘンテコでしかない曲なのにサビがTHE BACK HORNのそれなのでおもしろいしカッコいい。

 


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おれは部屋の掃除をしろ。部屋の片付けをするときに気合を入れるときによく聞く。

 

きりがないのでさいごに。一番好きな曲は難しいので一番聞いたであろう曲を張っておしまい。


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THE BACK HORNには応援歌的な曲が多数ある。安直な応援歌ではない。「暗闇のなかでドアを叩きつづけろ」という歌詞にあるように、シビアな現実(暗闇、死、泥、傷、病などで表象される)を踏まえた上での応援歌である。ライブの別れの台詞として定番になっている「共に生きてまた会おう」はそれが難しいからそう言いつづける。

そのような応援歌の系譜のなかで、おれがもっとも元気づけられたのが『世界を撃て』で「顔を上げて世界を撃て」という言葉だった。いまだ夜は明けていないのに光を解き放って力ずくで朝にしてしまう、そのような曲。おれにとってTHE BACK HORNはそんなバンドだ。