単行のカナリア

スプラトゥーン3のサーモンラン全ステージ野良カンスト勢です!

どうしても俺は『明日、私は誰かのカノジョ』の前川正之さんについて語りたい

ネタバレ注意。

単行本派だったのにどうやら明日カノがヤバいことになっていると伝え聞いてサイコミの連載を追いかけ、ついに最新話まで読んだ。ここでいう最新話は第197話で、本当にヤバいことになっていて歯を食いしばって読んでいた。

それで『明日、私は誰かのカノジョ』の前川正之さんについて語りたくなったので書く。

前のはこちら。

dnimmind.hatenablog.com

 

再度。第197話までのネタバレ注意。

第195話は雲行きが怪しかった。サイコミのコメント欄が騒然としていた。

一話からときどき登場しつづけていた良客の正之さんが、コロナ禍の影響を被ってこれまでのようにレンタルできなくなるかもしれないとデート時(サービス利用時)にいつもと違う様子を見せ、最後のコマで彼が「告白の仕方」をググる終わり方だった。

それでサイコミのコメント欄では「頭を冷やせ」「裏切るなよ」「落ち着いて」「それはあかん」と書かれようで、私も同じ気持ちだった。

一年前に正之さんについて書いた。そこで雪が予測した「後はいつも通りの流れ…三、四回目ぐらいで、ただデートをするだけじゃ満足できなくなって、本気で好きになったとか、お店を通さないで会いたいとか言ってくる」客に正之さんはならないし、正之さんはそんな人じゃないよ、と書いた。

『明日、私は誰かのカノジョ』1巻

 

結局、正之さんはそうなったし、そうはならなかった。

少なくとも三、四回目で告白はしてこなかった。いつも気遣ってくれて何も無理強いはしなかった。雪に「正之さんぐらいはこのままいいお客さんでいてほしいんだけどな」と思わせる信頼関係を築きあげた。ただそれは客とキャストの関係性の上だったけれど、客として正之さんは本当にいいお客さんだった。告白だってけじめをつける了承がお互いにあったし。

だから第196話で正之さんが雪に告白したとき、雪が告白をはぐらしたり、客として繋ぎとめようとせずに、雪の誠実な対応(雪にとっては本音を明かす)を引きだすほどに正之さんはいい人だったのだ。

かつて明日カノに登場したおじさんたちが、客という立場にあぐらをかいてアレやコレの醜悪さを見せつけてきたなかで、正之さんは最後の最後までいい人でありつづけたのだ。

正之さんは明日カノの、清涼剤であり、砂漠の中のオアシスであり、良客であり、太陽だった。

だったから、こう、綺麗な形で決着がついたのはよかったな、と。ただ悲しめることがよかった。

なにせ、それこそ雪が言う「幸福は麻薬なんだよ」のように、彼女代行サービスやホストのような金を介在にした人間関係サービスというのは依存すれば依存するほどに綺麗な終わり方や「ぬる」い抜け方が難しくなるし。

その点、正之さんは雪との写真を待ち受けにしたり、カノジョが彼女ではないことを思って夜に涙を流したり、飲み会の誘いを断って昼飯はビッグおにぎりで節約したりと、心底熱中していたのにもかかわらず、最の最後で「いい思い出」になったのはよかったでいいんじゃないかって思った。

第197話、雪が「人は一度でも満たされてしまったら同じものじゃ満足出来なくなる」と回想するシーンの正之さんと雪のツーショットがうるっときた。どの写真でも正之さんが頬をほんのり染めて楽しそうにしていて、素敵な時間を過ごしていたんだろうなと伝わってくる。そ

れにしても1話で同じセリフがでてきたときの横にイメージされた正之さんは声掛け事案に出てきそうなくらい怖い、怪しい。

全然そんな人じゃなかった。いい人だった。

 

で、サイコミのコメント欄に正之さんの容姿が優れていたらとあった。それはそう。

明日カノは、人間関係上で容姿の影響力について譲歩せずに容赦なく描く。分かりやすく書けば、ビジュがいいから金になるし。なにせ三章で1mm単位の美醜こと美容整形についてテーマに取り上げているくらい。また、容姿でいえば、雪が「本当の私」と表現するときに、化粧をせずに素顔だったら火傷痕があることも含意されていて、容姿はアイデンティティの奥深くまで影響してくる。もちろんそれだけではないけど、その要素は大きいのだ。

正之さん、その点では、こう、そういう顔じゃないよなあ、となる。

『明日、私は誰かのカノジョ』14巻

どちらかといえば、正之さんは顔の出来どうこう以前の話で、髪型や通話時のアングルや体形といった頓着のなさが問題そうでもあるが。とはいえ正之さんはデートするときのファッションは場に応じて変えているから(カフェデートではセットアップみたいなの着てるし)、そこまで無頓着ってわけでもなさそうとも思う。だから頓着がないっていうよりかは、彼女代行デート代を都合するために気を回せなかったのほうが適切かもしれない。

いずれにせよ正之さんはそうじゃなくて、雪にとって良客の立ち位置で固定されてしまったのには、その影響はきっと大きいのだろう。

でも良客だったから、私を含めて多くの人に好感を持たれて愛されて、幸せを願われるようにもなった。私にこんな訳分からない記事を書かれた。他にもサイコミのコメント欄には「正之、一緒にマリオ観よう」「正之、一緒にエヴァ語ろうや」「正之、一緒におにぎり握ってやるからな」の人たちもいる。そんくらいに正之さんはいい人、いいキャラクターだった。正之さん、一緒にスプラ3のサーモンランやろう! 私は野良ノーミスカンストできるくらいうまいからキャリーしてあげられるよ! 正之さんが好きなひぐらしはアニメも漫画も途中で挫折したけど私もエヴァなら語り合える!

 

正之さんの物語は綺麗なハッピーエンドではなかったけど、とびっきり綺麗だった。『明日、私は誰かのカノジョ』というタイトルを象徴するようなすばらしい物語だった。

もちろん私が決着ついた気になっているだけで、まだ作中で正之さんの物語がつづく可能性もある。少なそうだが。

そうだったらいいな。